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【宝石つむり流】パパラチアサファイアの選び方

最近、パパラチアサファイアについてのご質問をいただくことが多いので、「一般的な価値」を軸に宝石つむり内の見解をまとめてみました。

宝石選びの参考にしていただけると幸いです。

まず、パパラチアサファイアとは?

一般的にパパラチアサファイアと呼ばれるのは、オレンジとピンクの中間の色のサファイアです。

「パパラチア」は、シンハラ語で「蓮の花」を意味します。シンハラ語は高品質なサファイアが産出するスリランカで使われている言葉です。

つまり、パパラチアサファイアは蓮の花のような美しい色のサファイアという意味になります。

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パパラチアサファイアが世界的に評価されているのは、この蓮の花の色のサファイアの産出がとても少なく、その美しい色は人気が高いからです。

パパラチアサファイアの処理について

サファイアの9割は加熱処理を施されているといわれます。ただし、最近は通常の加熱処理だけでなく、宝石としての価値を損なうような人工処理も多く行われています。
パパラチアサファイアの購入を検討する際には、人工処理についてしっかりと知っておくことが大切だと思います。

1.通常加熱、加熱処理

ほとんどのサファイアは人工的な加熱処理によって石が持つ美しさを引き出しているといわれています。人の手で加熱処理を行った痕跡が認められないものは、"非加熱”とされます。

加熱処理の有無について知りたい場合には専用の検査を行う必要がありますが、ほとんどの場合、検査費用が1万円以上必要となりますので、高額なルースでない限りは検査をしないことが多いです。

加熱・非加熱検査をしていない場合のソーティングや鑑別書への記載は「加熱」または「通常加熱」となります。それぞれの意味は下記の通りです。

♢通常加熱 ・・・ 「通常、サファイアという宝石は加熱処理がされています」という意味の記載であり、今回の鑑別では加熱処理を行った痕跡が見つからなかったということです。
さらに非加熱であることを確定するためには、詳細な検査をする必要があります。鑑別機関によっては「通常加熱」の7~8割が非加熱である可能性が高いといわれています。
とはいえ、可能性が高いだけで、非加熱が確定しているわけではありません。「通常加熱=非加熱」として販売されることもありますので、こだわりがある場合には鑑別の記載についてしっかりと確認したほうがよいでしょう。

加熱 ・・・ サファイア本来の美しさを引き出すための加熱処理が行われています。ただし、この人工処理によって価値が大きく下がることはありません。

ほぼ同じ品質で加熱と非加熱のサファイアがあったとすれば、希少価値が高く、人気もある非加熱サファイアの方が価値も上です。ただ、非加熱であれば必ず加熱されたサファイアよりも価値が高いというわけではなく、「美しさ」によって価値は変わります。

2.拡散加熱処理(ベリリウム拡散処理)

一時期、普通の加熱処理と同等に評価をする鑑別機関があったことで、話題となっていた処理です。パパラチアサファイアの場合はベリリウムを加熱処理の時に添加します。

この処理を行うと、元の色に関わらず鮮やかなパパラチアカラーのサファイアを生み出すことができます。

ベリリウム拡散処理は表面を覆うだけのコーティングではなく、内側まで入り込む処理となります。そのため、少し削れた程度で色がはがれてしまうようなことはないので、耐久性は十分にあると考えられます。

ただし、その鮮やかな色はサファイアが持つ本来の色ではなく、人工的に着色されたものであることを知っておく必要があります。また、ベリリウム拡散処理を行ったサファイアにはパパラチアサファイアとしての価値はないというのが一般的な見解だと思います。

【鑑別機関別】パパラチアサファイアの評価や価値

パパラチアサファイアは付属する鑑別書やソーティングを発行した鑑別機関によっても、価値が変わる宝石です。
それぞれの鑑別の特徴や価値について知っておきましょう。

日本でよく見かけるソーティング・鑑別書について、パパラチアサファイアとしての評価や価値が高いと思われる順にご紹介していきます。

1.GIA

日本で一番価値の高いとされるのは、GIA鑑別書がついたパパラチアサファイアだと思います。GIAは鑑別料金が高額なので、この鑑別書がついたパパラチアサファイアも一般的には高額になります。

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ちなみに、GIAの鑑別は厳しく、なかなかパパラチア判定が出ないという声も聞きます。

GIA鑑別書のついたパパラチアサファイアには、茶色~オレンジ~オレンジピンクが多いので、どちらかというとオレンジが強めのものをパパラチアサファイアとして認めている傾向にあると思います。

鑑別の基準が厳しいことから、GIA鑑別書が付いたものに関しては「安心して購入できるパパラチアサファイア」という評価になるのではないでしょうか。

2. 中央宝石研究所(中宝)

日本で一番代表的な鑑別機関です。いわゆるA鑑と呼ばれる信頼できる鑑別機関とされています。
中宝もGIAと同じでサファイアの鑑別書の価格が高いので、鑑別書が付くことでパパラチアサファイアの金額も高くなります。

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GIA同様、色の判定基準が厳しいため、パパラチア判定は出にくいと聞きます。こちらも茶色~オレンジ~オレンジピンクまでの色をパパラチアサファイアとしている印象があります。鑑別機関のなかで一番オレンジが強めという印象もあります。

中宝ではベリリウム拡散処理の検査は別料金となっていますが、検査が必要となるのは、拡散処理の可能性があるサファイアのみ。鑑別書に「ベリリウム拡散処理についての検査は行っておりません」といった記載がある場合には、ベリリウム拡散処理が行われている可能性が高く、検査はされていないということになります。

中宝の鑑別書がついたパパラチアサファイアも評価が高く、「安心できるパパラチアサファイア」という判断になります。

3.DGL(ダイアモンドグレーディングラボラトリー)

比較的手に入りやすい価格帯のパパラチアサファイアに付属することが多いのが、DGLの鑑別書となります。DGLも中宝と同じAGL加盟店ですが、鑑別機関としての評価はB鑑となります。GIAや中宝でパパラチア判定が出なかったサファイアを持ち込む最後の砦的な存在という話も聞いたことがあります。

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DGLはGIAや中宝とは違い、ピンク寄りのルースをパパラチアサファイアとして評価している印象があります。

ベリリウム拡散処理については可能性がある場合にはパパラチアサファイアの鑑別書を出さないということでしたので、鑑別書が出ている場合には拡散処理は行われていないという判断になります。

GIAや中宝と比較すると、一般的にはDGL鑑別書付きのパパラチアサファイアは評価が低いことが多いです。そのため、手に取りやすい価格であることが多いでしょう。

4.日独宝石研究所(日独)

パパラチアサファイアについては、鑑別書のみの取り扱いの鑑別機関も多いですが、日独宝石研究所ではソーティングにも記載されます。

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日独はA鑑と呼ばれる山梨にあるAGL加盟の鑑別機関です。さまざまな研究結果を世界に向けて発信し、データ収集のために鑑別を行っていると聞いています。

レアストーンなどの鑑別にも強く、一つひとつの鑑別にしっかりとこだわりを持って、細かい疑問点に対しても丁寧に説明してくださるので、宝石つむりが最も信頼している鑑別機関です。

こちらのソーティングが付属するパパラチアサファイアには、オレンジ~オレンジピンクまでの色を多く見かけます。GIAや中宝と比較すると、ややピンク寄りのものをパパラチアサファイアとして判定している印象があります。蓮の花の色には一番近い色にも感じられます。

ただし、日独のパパラチア判定については、残念ながらそれほど評価は高くありません。とはいえ、A鑑と呼ばれる鑑別機関ですので、ベリリウム拡散処理がされているものには、パパラチアサファイアとは記載しません。

GIAや中宝に改めて鑑別を依頼した場合に、同じようにパパラチア判定が出る保証はありませんが、処理についての鑑別は信頼できると思います。

5.日本宝石科学協会(日宝協、NPK)

AGL加盟店ではなく、御徒町にあるC鑑と呼ばれる鑑別機関になります。簡易的な鑑別については安価にすぐに対応してくれるので、目的に合えばありがたい鑑別機関です。

こちらでもパパラチアサファイアのソーティングや鑑別書を発行していますが、ベリリウム拡散処理についての検査はしていません。万が一、ベリリウム拡散処理が行われていたとしても「パパラチアサファイア」と記載されるので注意が必要です。

また、パパラチアサファイアとして許容する色の幅も広いので、他の鑑別機関ではパパラチア判定が出ないケースも多いと思います。そのため、日宝協のソーティングがついたパパラチアサファイアの価値についてはあまり期待できないと考えます。

6.鑑別書やソーティングのついていないもの

鑑別機関によって色幅が決っており、許容範囲に該当した場合にはじめてパパラチアサファイアとして認定されます。どんなにパパラチアサファイアっぽい色だったとしても、鑑別機関では認められないことも少なくありません。

つまり、鑑別が付いていない場合は、パパラチアサファイアとはいえないと思った方が良いでしょう。そのため、価値を気にしてパパラチアサファイアを探している場合には、鑑別機関による鑑別が付いているものを選ぶことを強くお勧めします。

パパラチアサファイアを選ぶには?

上記の内容について知ったうえで、とっておきのパパラチアサファイアを選ぶにはどのように考えたらよいのでしょうか。

大前提として、パパラチアサファイアはその希少性の評価が高いという一面もあります。そのため、山積みのパパラチアサファイアのなかから、ひとつ選ぶということは難しいでしょう。

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目の前にある限られたパパラチアサファイアのなかから、とっておきのひとつを選ぶには、優先順位をつけることが大切かと思います。

・鑑別した鑑別機関

・色

・加熱、非加熱

・価格

宝石を選ぶ際には一般的な価値にこだわるか、自分の好みに極振りするのかといった選択肢があります。自分がどんな色を求めているのか、どういった価値観を重視するのか、どの点を大切にしたいのか、ポイントをしっかりと見定めて、狙いを定めるのが一番後悔しない選び方だと思います。

パパラチアという名前を冠して売られているサファイアは、それほど安価なものではありません。
だからこそ、一般的な価値について知ったうえで、ご自身の判断で後悔のないようお買い物をしていただきたいというのが私たちの願いです。

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