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ニセアカシアの生命力とアレロパシー〜五百淵公園&野鳥の森の「ちいさな自然散歩」②(福島県郡山市)

10月15日(日)、郡山市の五百淵公園と野鳥の森でおこなわれた「ちいさな自然散歩」のレポート②です。

※トップ画像は9月に撮影した野鳥の森のニセアカシアです。
それにしても今回の写真は、雨天という悪条件を含めても、イマイチ過ぎる…郡山市まで行く機会があればリベンジしたいくらいですm(_ _)m

前回は繁茂していた野草が勢いを失い、オニグルミやドングリなどが実をつけ、一つのサイクルの終わりの気配を感じたこと、野鳥の森の日照を遮っていたニセアカシアを伐採したことにより、地中のシードバンク機能が働き、森を構成する植物に変化が見られたことなどについてご紹介しました。

今回は、前回紹介しきれなかったお花やアレロパシー(他感作用)についてご紹介します。

その①はコチラ↓

森を彩る素朴な花たち②

こちらのレンガ色のかわいらしい花は、ベニバナボロギク。

雨天ということもあり、残念な仕上がりにm(_ _)m

「葉っぱの匂いを嗅いでみてください。何かに似ていませんか?」
そう言って案内人さんが渡してくれた小さな葉っぱからは、鍋の食材でおなじみの独特の匂いがしました。

「春菊に似ていますよね。春菊代わりに食べる人もいたそうですよ」と案内人さんがうなづきます。後から調べたところによると、第二次世界大戦中、食料不足に陥った日本では食用に使われることが多かったそう。

よく似ている花にダンドボロギクがあります。案内人さんも「ベニバナボロギク? ダンドボロギクかな?」としげしげと花を観察していました。花が下向きにつくのがベニバナボロギク。上を向いていて、黄色に近い花を付けるのがダンドボロギクのようです。

粒状の素朴な花が密集するハナタデ。近くに群生地もありました。こちらもよく似たイヌタデという花があり、皆さん「どっちだろう?」と花や葉っぱを観察されていました。

イヌタデに似た花を紹介するサイトを発見! 

野菊に似た小さな白い花はヨメナ。古来から日本にある植物の一つで、野菊といわれる植物の一種です。わたしには、ヨメナとノコンギクの区別がつきません(;^_^ 

写真がダメダメでごめんなさいm(_ _)m

小さな白い花を付けるアメリカイヌホオズキ。可憐ですが、根にも実にも毒があるらしい(;^_^

案内人さんのお一人が「あら、きれいに食べたのね」と笑っていらしたのが、下のセンダングサ。どうやら葉脈だけを残して、きれーいに葉っぱを食べたヤツがいたようです。

下の写真では少し分かりにくいかもしれませんが、左右に伸びた茎のような部分が葉脈です。葉脈だけ残したのは、固かったから? おいしくなかったから? それにしても丁寧なお仕事です (;^_^

下の写真の奥に写るきれいな赤い実はヒヨドリジョウコ。後日調べたところによると、ヒヨドリが好んで食べることから、その名がついたそう。とても美しい実ですが、毒性があり、人が食べると命にかかわるようです。なんだか今回はそんな花が多いような気がします。植物にとって毒は、自分の身を守るとともに、種を守り、未来へ残すための手段なのだとは思いますが。

手前の房状の花の名前は聞き忘れましたm(_ _)m

下の紫色の花は、ナギナタコウジュ。花が一方だけにつき、長い花穂が反り返る姿が薙刀(なぎなた)に見えること、独特の香りが中国のコウジュという薬草に似ていることから「ナギナタコウジュ」と名づけられたそう。
「シソ科特有の芳香がある」と記述しているサイト様多数。しかし、実がみのる頃には、「シソの腐った臭い」となり、触ると「手を洗ってもなかなか落ちない」とか……毒はなさそうですが、要注意です。

撮影できず残念ですが、ヤマガラの餌となるエゴノキの実も見られたようです。野鳥の森の日当たりが改善されたこともあり、案内人さんからは「来年は増えるといいのですが」と成長を期待する声が聞かれました。

下はエゴノキの実を貯食(動物が餌を貯蔵する行動)するヤマガラとエゴノキの関係性についてしるされたサイト様。エゴノキの実をついばむヤマガラの可憐な写真がたくさん掲載されています。

北米と日本、跋扈するモンスター植物たち

近年空き家や空き地、森でよく見られるようになったのが、北米原産の特定外来生物アレチウリ。
森林や空き地にはびこるにっくき外来生物ですが、原産地である北米では、日本古来のクズが勢力を拡大しており、「モンスター」と呼ばれているとかいないとか。クズがあちらでご迷惑をおかけしていることを考えると、結局「お互いさま」なのかもしれません(;^_^

下はアレチウリ(黄緑色)とクズ(濃い緑色)のコラボレーション。野山を埋め尽くす恐怖の組み合わせ。
たぶん空き家なのだと思いますが、最近は住宅地でも全体がクズに覆われた樹木(ときには住宅や電線も)をよく見かけるようになりました。今後問題になりそうな感じがします。わたしも無人となったお隣さんの庭から来たアレチウリを切っちゃいました(;^_^

雨を受けてツヤツヤに光るアレチウリの葉っぱ。日当たりがよいためか、葉っぱも大きくて、イキイキしています。

アレロパシーを持つセイダカアワダチソウとニセアカシア

下はおなじみのセイダカアワダチソウ。こちらも北米原産の外来植物。国立環境研究所のデータによると「日本の侵略的外来種ワースト100・外来生物法で要注意外来生物」に指定されているようです。

案内人さんによると、セイダカアワダチソウには、他の植物の成長をさまたげる物質を出す「他感作用(アレロパシー)」があるそう。
アレロパシー物質は根と地下茎から分泌され、周囲の植物の種子の発芽や成長をジャマする一方、自分自身は地下茎などからどんどん芽を出して繁殖していきます。

後述しますが、野鳥の森をはじめ全国各地の河川敷で繁茂しすぎが問題になっているニセアカシアも同じく他感作用を持つ植物。セイダカアワダチソウもニセアカシアも、成長スピードの速さや生命力だけでなく、他の植物の成長を妨げるという働きを持ち、それがあの恐ろしいまでの勢力拡大につながっているようです。

いい評判を聞かないセイダカアワダチソウですが、最近は草木染の材料として使われることもあるそう。検索してみたら、多摩川にお住まいと思われる方のサイトを発見。淡い黄緑のような色に染まるようです。結構きれいかも…(;^_^

セイダカアワダチソウ同様、「他感作用(アレロパシー)」を持ち、根と地下茎から他の植物の成長を抑制する物質を出しながら、我が者顔で成長していくニセアカシア。野鳥の森では今年6月、案内人さんたちが郡山市に呼びかけ、森の日当たりを改善するため、繁茂しすぎたニセアカシアを伐採しました。

しかし、ニセアカシアはわずか1ヵ月あまりで、切り株や地中に残った根っこから芽を出し、スクスクと成長。今回の「ちいさな自然散歩」では、人の背丈ほどにも成長した姿が見られました。

切り株から芽を出したニセアカシア。4ヵ月あまりで、こんな状態に…

野鳥の森には、伐採したニセアカシアの幹が丸太のまま残されています。
「ニセアカシアは伐採した後、すぐに伐らないと幹が固くなり、チェーンソーでも切れなくなってしまうんです」と案内人さん。
チェーンソーでも伐れないとは…! ニセアカシアの生命力の凄さを感じます。

「ちいさな自然散歩」の案内人を務める日本野鳥の会郡山支部では、現在、森に残ったニセアカシアの切り株にカワラタケを植菌して、内部から根や地下茎を腐らせ、成長を抑制する実験をしているそう。

下の写真のまんなかより斜め下にニセアカシアの切り株が見えるでしょうか。これがカワラタケを植菌したニセアカシアの切り株です。葉っぱに覆われているため、わかりにくいかもしれませんが、この切り株の周囲のニセアカシアの高さは膝丈ほど。
「同じく4ヵ月前に伐採したニセアカシアが、人の身長ほどにも伸びていることを考えると、植菌した切り株の周囲は成長スピードが緩やかですよね」と案内人さんも、一定の手応えを感じているようでした。この実験がうまくいくことを願います。

森林保全、里山保全に関わる人からは嫌われ者のニセアカシアですが、ハチミツの原料としては人気があるそう。案内人さんによると「養蜂家からはニセアカシアを植えてほしい」という要望が多いのだとか。

少々余談になりますが、セイダカアワダチソウやニセアカシアが持つ「アレロパシー」について調べていたら、他の植物の成長を阻害する働きを雑草対策に使おうという動きがあるという記述を発見。その代表格が田んぼの雑草対策として用いられているレンゲです。レンゲのアレロパシーを活用し、ほかの雑草がはびこるのを抑制するのだそう。確かに田植え前の田んぼでは、レンゲがよく見られるような気がします。
そして、※コンパニオンプランツもアレロパシーの一つであることをはじめて知りました。植物の世界も奥が深い。というか、どうして、そんな働きがあるのでしょうか。そこに何か意味があるような気がしてなりません。本当に自然には不思議がいっぱいです。

※コンパニオンプランツ=相性の良い野菜やハーブなどを一緒に植えることで、病気や害虫を抑制したり、成長促進、収穫量増加などの効果が期待できる植物

秋の野鳥の森を彩るキノコたち

収穫時期ということもあり、野鳥の森にはキノコ類が顔を出していました。その中から撮影できたシロオニタケをご紹介します。

下の白いキノコはシロオニタケ。とても美しいキノコですが、残念ながら毒キノコ。案内人さんによれば、数年前にも大発生したそう。今年もたくさん顔を出していました。だけど、「食べるなキケン!」です。

しかし、ビジュアルは本当に美しい…。

そのほかサルノコシカケの仲間も見られました。

雨の中、おこなわれた10月の「小さな自然散歩」はこれにて終了。

「野鳥の森の表情は月ごとに変わる」と案内人さんと言います。次の「小さな自然散歩」は12月。初秋の五百淵と野鳥の森は、わたしたちにどんな表情を見せてくれるのでしょうか。楽しみに待ちたいと思っています。

ちなみに11月には野鳥講座と巣箱づくりがおこなわれるそうです。

この日出会った野鳥たち
カルガモ
カイツブリ
シジュウカラ
ヤマガラ
コゲラ
カケス
ハシブトガラス
ハシボソガラス
ヒヨドリ
キジバト
スズメ
メジロ


いただいたサポートの半額は、跋扈するニセアカシアの伐採をはじめ里山保全に取り組む日本野鳥の会郡山支部に寄付いたします。残りの半額は、生態系に関する活動をされている方の取材費(おもに交通費)に使わせていただきますので、サポートよろしくお願いいたしますm(_ _)m