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令和5年製図試験「図書館」から見つける記述の勉強方法

こんにちは、源です。今日は本試験の記述問題から、試験元が受験生に対して求めていることを探りました。今後の記述勉強方法を考える参考にしていただければと思います。

この記事は令和5年の本試験問題を見ながら読んでいただくことを想定しています。

手元に試験問題がない場合には、建築技術教育普及センターのサイトからダウンロードできます。


また、試験元から課題公表時に示された留意事項は、記述を解答する際のヒントとなっていますので、併せて読んでおいてください。

◯敷地の周辺環境に配慮して計画する。
◯バリアフリー、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減、セキュリティ等に配慮して計画する。
◯各要求室を適切にゾーニングし、明快な動線計画とする。
◯建築物全体が、構造耐力上、安全であるとともに、経済性に配慮して計画する。
◯構造種別に応じて架構形式及びスパン割りを適切に計画するとともに、適切な断面寸法の部材を計画する。
◯空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降機設備等を適切に計画する。

【建築物の計画に当たっての留意事項(R5.7/21)】


それでは、始めていきましょう。

1.一般開架スペース

①蔵書確保、書架等のユニバーサルデザイン

まずは、蔵書の確保についてです。5万冊程度の蔵書を求められています。限られたスペースの中では効率良く収納しなくてはなりません。

この問題に答えるためには、実際の図書館での収納状況を把握しておく必要があります。

課題テーマが発表されてからは、テーマに関する機能、主要な寸法などは把握しておく必要があります。建築計画の書籍実例見学で身につけておきましょう。

また、ユニバーサルデザインについては、定義を把握していなければ正確に解答できません。

バリアフリー、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減、セキュリティ等に配慮して計画する。

【建築物の計画に当たっての留意事項(一部抜粋)】

事前に公表された留意事項を参考に、図書館という施設の性格から、ユニバーサルデザインについても押えておく必要がありました。

今後の記述対策としては、テーマに付随する学科試験で問われるような知識は、当然に持っていなければならないと考え、発表後には再確認しておきましょう。


②敷地及び周辺条件

この設問は過去の本試験でよく問われてきたものです。敷地や周辺状況についてであり、また、自然採光についても触れていることから、平面的なことと、断面的なことの両面からの解答を求められています。

敷地の周辺環境に配慮して計画する。

【建築物の計画に当たっての留意事項(一部抜粋)】

事前発表の留意事項にもあるように、公園、駅、公共駐車場、店舗付き集合住宅、道路条件などを周辺環境を踏まえて、どのようなことを考えたのかを伝える必要があります。

エスキス段階で考えていたことを、試験元が求めていることを把握しながら、しっかりと伝えられるようにしましょう。

①、②共にイラストなどで補足してもよいとされています。「してもよい」ですので、必須ではありません。少しでも自分の考えを伝えるためには、素早く相手に伝わりやすいイラストを書けるようにしましょう。


2.機能構成、配置・動線計画

①各スペースにおける多世代交流

例年、問われることが多い、配置・動線計画に関する問題です。世代間交流が活発となるよう考えたことを伝えましょう。

配置・動線計画は慣れが必要な設問なので、どのような観点で答えるべきかを整理して把握しておきましょう。

各要求室を適切にゾーニングし、明快な動線計画とする。

【建築物の計画に当たっての留意事項(一部抜粋)】

事前発表の留意事項で求められるように、明快なものを計画するように心がけましょう。


②運営管理

近年の製図試験では、自由度の高い設計条件となってきています。施設の運用管理に必要な室は、細かく要求されず、適切に設けることとされました。

この問題には、図書館に求められる機能構成がしっかりわかっていなければなりません。留意事項にもあるように、機能を理解したうえで、運営管理に必要な室を適切に計画することが求められています。

各要求室を適切にゾーニングし、明快な動線計画とする。

【建築物の計画に当たっての留意事項(一部抜粋)】


1問目と同じように、建築計画の書籍や実例見学によって、管理部門の内容を理解しておく必要があります。


3.一般開架スペースの空調

高い頻度で問われる空調設備の問題です。

一般開架スペースは、高天井部分がある大きなスペースなので、その特徴に見合った空調設備が計画されているかを問われます。

様々な特徴に見合った空調設備に関して、機器構成配管やダクトスペース換気設備の必要性省エネ性などの特徴を整理して理解しておきましょう。

空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降機設備等を適切に計画する。

【建築物の計画に当たっての留意事項(一部抜粋)】

留意事項で示される設備に関しては、早い時期に理解しておくと、本試験前に焦ることなく試験勉強ができます。


4.屋上の設備計画

イラスト主体の設問です。この問題は全てを記入することとして、漏れなくこと得なければなりません。

ポイントとしては、北側斜線制限に抵触する可能性があるため、塔屋や設備の面積が屋上面積に対して占める割合を明確にします。

近年、重要度が増している法律知識を詳細に把握しておかなければなりません。

はと小屋に関しては、初見である人が多いと思われますが、設備配管取り出し口として説明がありますので、PSやDSを計画した上部に設けると類推できると思います。

空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降機設備等を適切に計画する。

【建築物の計画に当たっての留意事項(一部抜粋)】


一級建築士で求められる設備知識は、あくまで基礎知識なので、深堀することなく基礎をしっかり固めることが重要です。


5.省エネルギー計画

新しい事項として、再生可能エネルギーの導入によるエネルギーの自立度を高める方策について問われています。

まず、再生可能エネルギーの定義がわかっていないと混乱する問題ですが、ヒントとして「太陽光パネル、LED照明、Low -Eガラスに関する記述は除く。」とありますので、類推することはできるはずです。

バリアフリー、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減、セキュリティ等に配慮して計画する。

【建築物の計画に当たっての留意事項(一部抜粋)】

事前の留意事項に省エネルギー関係が謳われていることから、周辺知識も入れておくべきと思われます。


まずは、「除く」とされたもの以外の省エネ方策の引き出しを増やしておきましょう。


6.二酸化炭素排出量削減計画

二酸化炭素排出量削減は留意事項として初めて加えられました。

バリアフリー、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減、セキュリティ等に配慮して計画する。

【建築物の計画に当たっての留意事項(一部抜粋)】


今回の設問としては、建築物の材料や施工方法等での二酸化炭素排出量の削減方法を問われました。

広く建築に関する知識を取り入れていることではじめて対応可能となるので、時間に余裕のある時期には周辺知識も入れるように心がけましょう。

課題発表時には、課題テーマ(令和5年であれば「図書館」)が気になってしまいますが、留意事項に出てきたキーワードは、学科試験で勉強した知識を復習する時間を持ちましょう。必ず役立つ時が来るでしょう。


7.閉架書庫構造計画

①一般開架スペースとの違い、構造的特徴

閉架書庫と開架書庫では、設計条件で求められることが大きく異なります。

閉架書庫 ー 150㎡以上、蔵書数9万冊程度
一般開架 ー 600㎡以上、蔵書数5万冊程度

あとは、狭いスペースに多くの蔵書を収める必要がある閉架書庫に対して、留意事項で求められている架構やスパン割りを考慮しながら解答することとなります。

構造種別に応じて架構形式及びスパン割りを適切に計画するとともに、適切な断面寸法の部材を計画する。

【建築物の計画に当たっての留意事項(一部抜粋)】

例年の典型的な構造形式を問うものとは異なり、一歩踏み込んだ構造知識を問われています。
しかしながら、あくまで基礎知識で対応可能な問題なので、典型的な例文を暗記するのではなく、中身を理解しながら記述の勉強をしていれば対応可能です。


②考慮したこと

先の設問で答えた計画の理由を説明する部分です。

留意事項で求められる安全性経済性に配慮していることを答えます。

建築物全体が、構造耐力上、安全であるとともに、経済性に配慮して計画する。

【建築物の計画に当たっての留意事項(一部抜粋)】


まとめ

記述は早めの対策を進めましょう
例文の暗記だけではなく、中身の理解も必要です
留意事項で発表されたキーワードは、周辺知識も含めて復習しておきましょう


記述の勉強方法を悩んだ場合には、こちらをご検討ください。


テキストの中身はこちらの記事をご覧ください。


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