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「日本でプロチームを目指す」Raquaがアジアトップチーム1NEを脱退し新チームを結成した理由

eスポーツ元年と言われるほど、世間での認知が広まりつつあるゲームの世界。日本でも世界で活躍するプロチームがいくつか出てきている。だが、『ロケットリーグ』では、未だ世界への道は閉ざされたままだ。

そんな状況下で、日本から世界へ果敢に挑戦しようとする男がいた。Raqua (ラクア)-この名前は、好きな色から水を連想し、それを意味するラテン語”Aqua”を元に本名の頭文字をつけたものだそうだ- である。

Raquaはアジアのプロチームである1NEを脱退、今年1月9日に新チーム『Vorpal Swords』(ボーパルソード)結成を発表した。

メンバーはLogicool G Cupではチーム『Ciel Nova』として準優勝を飾ったMaru。そして元『Astro Style』でoreRevo杯などでも上位の常連となっているSor。いずれも若い選手だ。

『1NE:Glory Stone』(*1)というアジアトップチームも擁し、コーチまでついているという好待遇であった1NEを、彼はなぜ脱退したのだろうか?

*1  現在のメンバーはShaolon、Kanra、ReaLize、Lemonedo Lime。紛れもないアジア最強チームである。

ロケットリーグとの出会い

Raquaがロケットリーグと出会ったのは、PS4で公開されてからすぐのこと。PC版からは少し遅れてのスタートではあるが、今となっては最初期から始めた中の一人である。後にPCへ移行するが、両プラットフォームを合わせるとプレイ時間は推定5,000時間を超える。

はじめは親しい友人たちと楽しくプレイしていただけの彼だったが、徐々にこのゲームの奥深さに気付いていく。
今では信じられない話だが、彼はこのころ一度、挫折しかけたという。エアリアル(*1)が上手くできなかったからだ。誰しも最初に立ちはだかるのがこのエアリアルという壁だ。
「エアリアルは死ぬほど練習しました」彼ですらそうなのだから、今、そこで挫けているプレイヤーも練習すれば必ずできるようになるはずだ。その先に、このゲームの本質があると言っても過言ではない。

そのうち彼は、日本ロケットリーグ界のエヴァンジェリストとして知られる合気の配信で行われていたプライベートマッチ(*2)に参加するようになる。それは当時、名だたるプレイヤー達が参加していたハイレベルなものだった。
「結構戦えてたんですよね」そんな中で揉まれた彼は、徐々に自信を付けていった。

そのあたりからトップを意識しだした彼はチーム『AirRax』を結成する。Twitterで募集をかけ、集まったメンバーだった。その中には現在はFortniteで活躍するLexqssもいた。

*1  ブーストを使って飛び、空中にあるボールにタッチするというテクニック
*2  パスワードなどで参加するプレイヤーを限定したゲーム形式

初チーム結成から1NE加入まで

AirRaxはすぐに頭角を現し初期の上位チームの一つに数えられるようになる。初めて出た大会で、伝説的なチーム『JoY』(*1)に勝利するなど活躍するが、そこで常に立ちはだかったのは初期のトップチームの一つ、『Amuse』(*2 )であった。

「トラウマですよ」と語るほど、あと一歩及ばない時代が続くが、やがてAirRaxはメンバーの脱退、Raqua自身も多忙になるなどの事情が重なり解散することになる。

その後も、彼は他チームへ移籍や一時的なチームを組むなどし、大会への出場は継続していた。
その時期、頻繁に開かれていたアジアの大会に出場していた彼の活躍は、1NEのオーナーであるTasty(*3)の目に留まることになる。

2018年初頭、1NE加入の打診を受ける。残りのチームメンバーが日本人でなかったため、言語の壁を理由に一度は断ったという。
だが、これは大きなチャンスであると思い直し、加入を決めた。

当初はやはり言語の面で苦労したようだが、チーム活動をするうちに、彼はゲーム力だけでなく英語力も上げていった。また、第三者目線でアドバイスをくれるコーチ(Ryuu Tsubasa)という存在の大切さを知る。

当初は控えとして加入だったのが、いつの間にかレギュラーメンバーとして活躍することになるRaqua。だが、またしても立ちはだかる1NE:GSを始めとするトップチームの壁。上位には残るが優勝までは行かない…。
いつしか彼は伸び悩んでいる自分に気付いた。

*1 『Jukes on You』。Kurocha、Mirose、LeeRaysからなる初期の強豪チーム
*2 M4s4mune、rakiruti、Toyopからなるチーム。初期日本ロケリ界においてJoYと2大最強チームであった
*3 John ”TheTastyT” Sonnekus。1NEオーナーであり、アジアの大会を多数開催してきた、アジアのロケットリーグ界を牽引している人物。タイ人らしい

目指すは”国内”のプロ

そんな状況を打破するためRaquaは、チーム、そしてコーチから得た知識を持ち帰り、1から新しいチームを立ち上げるという決心をした。
1NEに不満があったというわけではない。これは自らの限界を突破すること、そして得てきた経験を伝えていくという新たな挑戦だった。

1NEを抜けるという時点で、CNを解散するMaruは目を付けていたそうだ。残り1人のメンバーは、1から関係性を築くというステップを省くため、ある程度知っている仲から選ぶということで2人で相談した結果、Maruとの関わりがあり実力者でもあったSorの名が候補として上がった。

そして結成された『Vorpal Swords』であるが、インタビュー中にチーム名の変更が発表された。新しいチーム名は『天弓Gaming』(てんきゅうげーみんぐ)という。

「国内のプロを目指します」

英語のチーム名を日本語に変えたのは、そういう理由だと語った。
日本人のチームでは1NEとJustice Esports(*1)がプロチームであるが、どちらも海外のチームだ。日本のチームとして、まずは国内制覇を目指すという。

海外の活動も視野に入れているのか?との問には即答で「もちろん」と力強く答えてくれた。いずれは”夢の舞台”へ。その目標はすでに彼らの中にあるようだ。

まだ次に参加する大会は決まっていないが、すでにチーム練習は始まっているそうだ。
コーチの大切さを学んだRaquaは、自らコーチ兼プレイヤーとなってチームを作っていくという。

「雰囲気が良いチームなので、そこを見て欲しいですね」と語る彼。チームでの配信もこれから増やしていくそうなので、そこで彼らの魅力を見ることができそうだ。

国内プレイヤーにグランドチャンピオン(*2)が多数誕生している昨今、皆にはもっとチームを組んで欲しいと彼は言う。ランクの頂点には達したが、そこで満足してほしくない。その更に上を目指して欲しい。「挑戦することを諦めないで欲しい」、世界に通用するチームを排出するため、もっと国内全体のレベルアップが必要、そうしなければ世界への道が開くことはない。そういう彼の思いが垣間見えた。

天弓…その意味は虹である。
彼らが日本から世界へ虹をかけることになるのか。今後の活躍から目が離せない。

*1 オーストラリアのゲーミングチーム。日本人選手のDore52X、Nunki、Mikan、Gucchiが加入している
*2 ロケットリーグのランクにおける最高位


補足

この記事は『ロケットーーク~これからのロケットリーグの話をしよう~/第3回ゲスト:Raquaさん』を元に書きました。
記事中の敬称は省略しています。その方がそれっぽいので。
配信アーカイブは以下。



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