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インタビュー第一回 vanila.iceさん

プロフィール
動画製作者。2008年1月9日に『ジョジョ第4部 46巻 朗読してみた』をニコニコ動画に初投稿。翌年1月4日には『【ジョジョ第3部】うろ覚えで振り返る 承太郎の奇妙な冒険』を投稿。以降、『ジョジョの奇妙な冒険』第3部を記憶を頼りに演じ、録音後に紙芝居の絵をつけた動画作品、通称うろジョジョシリーズの投稿者としてニコニコ動画で人気を博す。


――はじめましてのかたははじめまして。ごぶさたのかたはごぶさたしております。帰ってまいりましたインタビュー企画、今回は、うろジョジョを制作されているvanila.iceさんをお迎えしました。どうぞよろしくおねがいします。

vanila:お願いします。再開第一回という折に選んでいただいたこともさることながら、ジョジョ3部が話題になっている時期にご指名いただいてありがたいです。実はこれまでもインタビューを読ませてもらっていたのですが、ずっと東方関係のインタビューをされていたので、今回間違えて東方(ひがしかた)のほうに声をかけられたのでは、という心配が最後までありました(笑)。


――(笑)。どうぞよろしくおねがいします。vanilaさんがはじめに作られたのは、2008年の1月9日に投稿された『ジョジョ4部46巻 朗読してみたということで。

vanila:そんなのありましたね(笑)。


――この動画はどのようなきっかけで作られたのでしょうか。

vanila:アレをなんで読んじゃったのかはちょっと覚えてないですね……(笑)。多分その時の思いつきで動画にしてみたんだと思います。私は、普段からおちゃらけてるというか、人を笑わせるのが好きな性格なんです。特に紙芝居とか読み聞かせをするのが好きで……普通は紙芝居読む機会なんてそうないと思うんですけど(笑)、一身上の都合で、子供に読み聞かせをすることがけっこうありまして。


――ほう! そうなんですか。

vanila:そうなんです。人物になりきって読んだりとか、そういったことをやる機会が多くて。その前提があったので、なにかをやろうかなと思った時に、こういう巫山戯たモノを作ろうと思い至ったんだと思います。


――続いて二作目が『患部で止まってすぐ爆発~狂気の吉良吉影』ですが……これもそのような形で作られたということでよろしいのでしょうか?

vanila:このとき私の中で吉良吉影ブームが来てたんですよ(笑)。私の中で、定期的にキャラクタのブームが来ることがありまして。昔はヴァニラ・アイスブームだったこともあり、今だとスティーリー・ダンブームですね。このときは吉良吉影に妙にはまってて作り始めたんですが、だいぶ時間がかかったので、一作目から結構時間あいてしまってると思います。


――いや、一作目から一ヶ月と経たずに投稿されていますね

vanila:えっ!? そんな馬鹿な! ……あれ、じゃあ私嘘ついたかもしれないです。もしかすると、『患部で止まって~』の動画を作っている最中に、嫌になって(笑)、息抜きに4部の仗助対吉良のところを読んだのかもしれない。『患部で止まって~』は一生懸命4部の吉良を描いている動画なので、当然何度も4部を読み込むことになるんですよ。それで、途中で作るのが嫌になって、ぼーっと4部を眺めてるうちに「これ読もっか」ってなったのかもしれないです、アッハハハハ(笑)。なので順序的には『患部で止まって~』を作りつつの朗読動画だったんだと思います。


――なるほど。『患部で止まって~』を作らなければ、うろジョジョも生まれていなかったわけですね。

vanila:そうなりますね(笑)。今、だんだん思い出してきました。その頃『患部に止まって~』が大流行していて、いろんな派生動画が作られていたんですよね。音声が社長なのは、そのままの音源を使うのはつまらないなあというのがひとつと、うどんげの音源をそのまま使うのってどうなの?っていう自分の中でブレーキがかかりまして……(笑)。

――最初はキャラクターを演じるという動画ではなく、絵を描いてそれを素材にした動画を作りたかったんですね。

vanila:そうですね。元々はアニメーションを作りたかったんです。やっぱり動画を作る、となったときに、いきなし紙芝居を作ろうとはならないと思うんですよ。動画作ろう!と思うときは、何かを動かしたいという気持ちがあると思う。なので、朗読する動画は、ひとえに私の心の乱れが生んだ副産物ですね(笑)。


――その副産物が何年も続いてるわけですよね。2009年から始まってもう5年。

vanila:当初1年くらいで終わるつもりだったんですよね……。始めの頃は二週間に一回は投稿できてたと思います。


――マイリストを見ると、序盤は週一のペースで投稿されていて、3月まではそれが続いてますね。

vanila: unbelievable(信じられません)。週一ってどんだけ暇だったんですかね(笑)。最初は動画作業が新鮮なこともあって、モチベーションも異常に高かったんでしょう。もうほんとに寝る間を惜しんで作れちゃうくらい、やることなすこと初めての感覚で溢れてたんでしょうね。ガッツガッツでやるぞやるぞ俺はやるぞ!と。


――「ガッツのG」というわけですね(笑)。

vanila:今は怠惰怠惰、「怠惰のT」ですけれども……(笑)。「年一のN」くらいになってるかもしれない。


――でも、今年に入ってからはすでに3回投稿されていますよね。アニメと同じタイミングで終わるのかな、という予想をしている人も多いと思いますが、いかがでしょうか?

vanila:それちょこちょこ言われるんです。「意識して急いでる?」ってよく聴かれるんですけど、私としては諦めてますね、もう無理だなと(笑)。アニメには100追いぬかれますね、ヴァニラ・アイス編は1パートで終わるはずがないので、4,5パート使うとして、それを今のペースで投稿するとしますと……駄目なんじゃないかな……(笑)。ああ、でもアニメの進み具合によりますよね。アニメって1クール12話くらいなんですかね?


――いや、だいたいスタンド使い一人につき一話くらい使ってるので、2クールでも足りないんじゃないかと思います

vanila:あれ、ひょっとして私アニメよりも早く終われる?


――(笑)。

vanila:まさか2クール連続でやったりしないですよね。タロットカードが22枚+九栄神、あとクリームとかいう変なやつとDIOで32、承太郎達4人をひくと29……でもDIOとクリームは絶対1話以上かかりますから……。


――どう考えても2クールじゃちょっと収まりそうにないですよね。

vanila:それならこっちも終われる可能性ありますね。と言うか、終わらなかったらどんだけ長いんだということに(笑)。これでアニメより前に終れなかったら、「恥ずかしくてあの世に行けねーぜ!」ですよ(笑)。頑張りたいと思います。個人的には投稿ペースも上がってていい方向に進んでると思いますし……実はいまもう一つ余計なことやってるので、次回の更新はちょっと遅くなるかもしれないんですけど……楽しみにしてくださると!


カモォん、ポルポルく~ん

――vanilaさんは今現在アニメジョジョはご覧になれていないのですか?

vanila:いや、今のところは見るの別に大丈夫です。


――まだうろジョジョでやったところまで追いついていないですもんね。

vanila:ただ、ニコニコとかコメントのあるような場所で見るのはご法度にしています。だいぶ先のセリフとかが出たりしますからね、好きな人が集まってるので。そういうのを眼に入れてはいけないっていうのと……見たいながらにあまり見たくないなと思うのは、正しい歴史の承太郎達の一挙一動を見てしまうと、私がいま作っている作品のキャラクタたちが急に真面目になってしまう気がして(笑)。
今でこそキャラクタ像が私の中でぼんやりしちゃってるので、ふわふわっとしてますけど、カッコイイ承太郎とか、お調子者ながらに決めるトコ決めるジョセフとか、暗い過去を背負いつつも明るく振舞っているポルナレフとか、ちょっと影のある花京院君とか……そんな彼らの活躍を肉声つきで聴いてしまうと、今後の物語展開で急に彼らがキマりはじめるので(笑)。承太郎がほんとに「やれやれだぜ」ってなっちゃう。そういう心配ごとはありますが、それでも見たい所は見たいと思いますね。ラバーソウルやスティーリー・ダンのところは特に。


――今上げた面子のなかにアヴドゥルが入っていませんでしたが……。

vanila:ア、アヴドゥルもキャラがブレるかもしれない!(笑)。アヴドゥルのことは忘れがちですね私は。


――実際原作でも退場してる期間長いですもんね。

vanila:私の頭の中でいない期間がちょいちょいあります。


――いない期間といえば、花京院も途中退場しますけど、うろジョジョではその期間とても長かったですよね。72時間ラジオ(※1)を聴かせてもらったいたんですけど、vanilaさん、2010年時点ですら、花京院の声をリクエストされて「だいぶやってないから忘れちゃってるなー」って仰ってて(笑)。3年経ってようやく再登場になって、声戻すの大変だったんじゃないかと思ったんですが。

vanila:そうなりますよね(笑)。初めはトントン拍子に進んで、突然更新ペースが落ちたので花京院の出番はかなり久しぶりになりましたけど……でも、彼の声は割りとすんなり出ましたね。不思議と大丈夫ですね。アヴドゥルとは違う(笑)。花京院は自然と戻ってきてくれました。


――vanilaさんは各キャラクタの演じ分けが非常にお達者ですが、キャラクタと声の合わせとして一番気に入っているのは誰ですか?

vanila:ポルナレフが好きですね。声が一番出しやすいのと、あと彼ムードメーカーじゃないですか。だいぶふざけたことをしていいポジションなので、何かと柔軟というか自由度が高い。かなり動きまわってくれるので私としては好きですね。……ところで、今私と話してて、誰に一番近い感じに聞こえます?


――うーん、誰でしょうか、どちらかというと花京院……とか?

vanila:あらま。花京院は結構爽やかに頑張らないと出ない声なんですよ。でもポルナレフは「んわぁ~」とかやればスグ出ますから。「こんなふうにやれば、スグ出てくる声なんで」


――ポルポルだ! すげえ!

vanila:(笑)。彼の場合は力を抜いて喋ればすぐ出ます。げんきゅーさんも鼻で喋っていただければすぐ出ると思いますよ。口呼吸せずに鼻から声出す感じです。


――「チ、チクショー…笑いしかでねーや…」

vanila:おお、そんな感じです。彼はあんまり舌で喋ってないので噛むこともあまりないですね。


――3部のアニメでは小松史法さんが演じておられますが、あれは結構力強い声なんですよね。
vanila:そうですね!とてもカッコイイですよね。


――アニメのコメント見てると、うろジョジョのポルナレフに引っ張られてる人もそれなりにいて(笑)。

vanila:だいぶベクトルちがいますよね(笑)。私もなんでかこういうふわーっとした声をイメージしてたんですけど、やっぱりカッコイイ声のほうがハマるなって気がします。プレイステーションで出た格ゲーの『未来への遺産』、アレの声が昔から一番全キャラハマってるなあという気持ちなのですが、あのポルナレフも凛々しい声でしたし、かっこいい声に個人的に違和感はないですね。


――うろジョジョでのポルナレフの活躍ぶりは凄いですよね。原作でも活躍しますけど更にはっちゃけてると言うか……髪何回伸びてるんだ!ってかんじですよね。

vanila:その辺も描いてて自由なので。困ったら髪伸ばしとけばいいやみたいなところがあります(笑)。なんかちょっと頭身変になっちゃったら髪を伸ばして身長を調整したり。


――2012年に、約一年ぶりに動画を投稿された際、P4風のOP動画が挟まりましたが、あれもかなりポルナレフが優遇されてましたね。

vanila:最初、誰の声で歌うかという問題があったんです。初めにDIOの声でやってみたんですけど、全然歌えなかったんですよ(笑)。なんか語りになってしまうんです。歌詞が全然続かなくって……こんなんで3部ラスト大丈夫なのかと思ったりもしたんですけど(笑)。承太郎との、勢いゼロのおしゃべりバトルになっちゃうんじゃないかという不安が……まぁそれはさておいて、その後も色んなキャラで試してみた結果、結局ポルナレフでしか歌えなかったんです。で、先ほど一年ぶりの動画再開という表現をいただきましたが、このOPを作ってて一年かかりました(笑)。


――見ている方もなんとなく察してはいると思います(笑)。

vanila:言うと怒られそうなのであんまり言えなかったですけど、アレ作ってました(笑)。


――すごく凝ってらしてましたもんね。

vanila:ちゃんとぬるぬる動くモノを作ってみたいという気持ちがありまして……あれ以降、動画内でも絵が動くことが多くなりました。そういったことができたらいいなとは前から常々思っていたので、勉強も含めて一年かけていますね。


クオリティが低いことが、クオリティが高い

――うろジョジョの変遷みたいなことをお聞きします。最初の頃は長くても5分程度で、絵も割りと簡単なものが多かった。それが途中から10分を超えるのが当たり前になってきて、オリジナルのストーリーなどもかなり加わるようになっていきますよね。やはり製作にあたっての心境の変化などがあったのでしょうか。

vanila:そうなんですよねー。そうなんですよね(笑)。いややっぱり、作っていく中で、心境の変化というか、試行錯誤があったんですが……結局のところ、part1あたりが一番いいと思いますね。振り返ると。


――本当にうろ覚えで行っちゃうほうがいいと。

vanila:絵もそんなに力いれずに、ザクザクってくらいのがいいのかなーっていうのが、part43くらいまで来て今思っていることですね。常に悩みながら1パート1パート作ってきてるところはあります。
 一番初めの頃はほんとに何も考えないで「牢屋に捕まっちまったぜ」とかふざけてたんですけど、あの時は「ジョジョを知ってる人が笑ってくれればいいな」というコンセプトの動画だったんです。というのも、とっかかりとして最初に作った4部の朗読動画。アレ実は私クソマジメに作ってるんですよ。読み聞かせが好きだったという話を先ほどさせてもらいましたが、演技しっかりやって、それで楽しんでもらえばいいなっていう、別に笑いを取りに行くモノじゃなかったんです。早人の声とか聴くと「お前何言ってんだ」って思われるかもしれないですけど(笑)、あれは超真面目にやってて。そうやってクソマジメに投稿したモノの反響が、なんというんですか、主に笑われていると(笑)。私の予想だにしない展開が起きた。ジョジョ好きな人が「こんなんじゃねーよw」って笑ってくれているのを見て「こういうのも面白いな」って思ったんです。
 それでまぁ、4部朗読は読みながら録ってたのでテンポがゆっくりでしたけど、今度は読まずに記憶頼りにやってみようと思いついたんです。ちょうどその頃、コミックスを何度も読み返していたので、4部はちょっと自信ないけど、最も読んだであろう3部ならほとんどストーリー間違えることなく行けるだろうと踏んだんです。そんな経緯で作ったのがpart1で……花京院の必殺技が出てこないってところから始まったんですけど(笑)。なので、最初の頃はホントにジョジョファンの人を意識してやっていたんです。
 ところが、続けるうちに、ありがたいことにランキングの端っこに乗っけてもらったり、口コミで広めていただいたりして、だんだんジョジョを知らない人からも見てもらえるようになったんです。「ジョジョ知らなけど面白いやー」って言ってもらえることが増えてきた。


――うろジョジョから原作を読んだという声もけっこう聞きますもんね。

vanila:ほんとそれはありがたいんですけど(笑)、そうすると、それまでやってきた適当なスタンスを振り返って「これでいいのか」って思うようになってきちゃったんですよ。
 「これじゃ伝わらないな」「少し丁寧にやらなきゃ」って力を入れて作ったこともあり、「やっぱり昔のほうが良かったんじゃ」と思ってまた適当にやってみたり……を繰り返して、ここまでのらりくらりとやって来てる感じ。でも、適当にやったら、ジョジョ未読の方に「急にわけわかんなくなった」って言われちゃったり、それを受けて丁寧にやってみたら、今度は既読の方に「もっと適当で良い」と言われちゃったりもして。「その間はどこだ!?」っていうのが永遠の課題でした。
 で、今は「最もクオリティを低くすることが、この作品にとってはクオリティが高いことなんだ」と、思うようになりました。


――まるで禅問答のような境地ですね……。

vanila:その答えを『寝起き5部』が私に語りかけてくれたんです(笑)。あれは、ホントに私が寝起きで録った、自分でも何言ってるのかわかんないような展開のモノで、「気持ち丁寧にやろう!」という意識を全く無くした動画だったんです。結果ですね、アレに絵をあてているとき自分でも笑えたんですよ(笑)。「何だこのブチャラティは」と(笑)。自分が作った作品ではなく、人が作ったモノを聴いているようで、面白い裏切られ方があった。
 それで、やっぱりこういうのが正解だったのかな、と確信に似たモノを得たときに録った3部が、DIOの館到着あたり。ちょうど花京院が帰ってきたところですけど、あの辺から若干昔の空気に戻ったようなところがあると思います。


――コメントでも指摘されてますよね、最初のうろジョジョの雰囲気を感じるって。

vanila:今は、引き続き見てくださってる未読の方にわかりにくくならない程度に、いかにpart1~3くらいの空気に戻せるかっていうところが課題です。


――しかも、それをうろ覚えでやらなきゃいけないんですもんね。脚本を用意できない

vanila:そうなんです。だから例えば、寝起きでやるか、酒をあおってあおってベロンベロンになった状態でやるか(笑)、走りまくってドーパミンどくどくの状態でやるか(笑)。何か身体的異常を起こした状態でやらないと、丁寧にやろうという気持ちが出てきちゃうので、そこをどう潰すかってところですよね。
 よく言われることで、「先に全部録音すれば? そうすればアニメも見れるし、vanilaさんが今セーブしていることって全部大丈夫じゃん。ヴァニラ戦やDIO戦も先に録っちゃえば?」というのがあるんですけど……まだ自分の中で、どう録るのが最良か?という答えを見出せていないので、そういうわけにはいかないんです。テレンス戦は、ちょうど私のテンションがもうアゲアゲなとき、細かいことどうでもいいや人類皆友達みたいなテンションの日があって(笑)、そのときに録ったのでなんだかふんわりとした感じで出来たんですけど、そういう日を狙うとなると、なかなか次を録るという瞬間が難しいんですよね。寝起きならいくらでもやれるんですけど(笑)。


――寝起きの3部もちょっと見てみたい気はしますけどね(笑)

vanila:でもですよ、あれだけ適当にやった寝起き5部がそれなりの仕上がりになった理由のひとつに、声が全部一緒というのがあると思うんです。


――よく聴くと全部素のvanilaさんの声ですよね(笑)。

vanila:みんな誰がだれでもいいんですよあんなの(笑)。その時出た声でセリフを言っているだけなので。誰が誰かを意識をしていないっていう所が、あれだけ自由になった原因なんじゃないかと思います。3部はもうキャラクタが固まってしまっているので「声を使い分けなきゃいけない」という所でひとつ考える時間がはいって、テンポが悪くなってしまうんですよね。今喋っているのはコイツで次に喋る声はコイツって考えが入るから、どうしてもワンクッション入ってしまう。なので究極はホントに、声を使い分けないというところなんですけど、今更そういうわけにもいかないし……(笑)。


――能の世界みたいですね。あらゆる枝葉をそぎ落としていくことで究極に近づいていく。

vanila:誰にも言えなくて自分で悶々してて、今日初めて人にお話しました。私の心の叫びでございます(笑)。


――5年間もそのような葛藤をされていたんですね。

vanila:なので「昔の空気に戻ったね」っていうコメントは的を射ていますよね。私が悩んで悩んでなんとかしたいなって思っていたのを見ぬかれている気がします。


――5年もの間延々と試行錯誤されているということで、最終回までの過程がまた楽しみなところでありますが。

vanila:今回のお話で私の心は救われたので、ここで終わっても全く悔いはないです。


――いやいやいやいや(笑)

vanila:「げんきゅーの部屋」ですよ、私の罪を受け入れてくださった。


――『誓って言う! ぼくはカーテンの方が神父が入る部屋と言うことをこの時知らなかった!』 個人的には、ストーリーをしっかり作ってらっしゃった頃にブログでやっておられた、サイドストーリーの読み物も好きだったんですが、ああいう創作物をまた再開する気持ちはないんでしょうか。

vanila:そうですねえ……機会があったら書きたいとは思いますが、今のところは予定にないですね。


――『スターダストハイスクールスチューデンツ』(※2)が好きだったんです。悪道世界会長可愛い!

vanila:ありがたいですね(笑)。あれはまた腰を据えて書いてみたいですね。スタンド名をもじった名前をつけるのが楽しかったです。他にも色々考えてるので、また何かあれば続けたいなあと思っています。


黄色いやつとの初遭遇

――特にお好きな漫画はありますか?

vanila:ジョ、ジョジョですね。


――ちょっと間がありましたが(笑)。

vanila:(笑)。ジョジョも勿論好きですけど……色んなジャンルが好きなんです。私実はグロいのとか怖いのが苦手で、描写的なグロさや精神的なグロさが駄目なんですけど、好きな漫画が『GANTZ』(※3)ですとか、『ドロヘドロ』(※4)ですとか、『彼岸島』(※5)ですとか『ジョジョ』ですとか、気がついてみると全部そういうのばかりになってるんですよね(笑)。あと、今でこそ私はvanila.iceという名前を名乗らせてもらっているんですが、連載当時は本当に恐ろしかったんですよ。


――原作のヴァニラ・アイスのくだりが、ですか?

vanila:そうです。彼の能力ですとか展開ですとか……かなり「えェーッ」て感じじゃないですか。登場から頭おかしくて、最後まで頭おかしくて、OVAではさくら友蔵(※6)ですし色々おかしいんですけど(笑)。でも振り返ってみると彼が一番好きなキャラなんですよね。吊り橋効果的なものなのか、心の底から恐怖したモノを好きになるタチなんです。怖いものが印象的になるんですよね。最近だとホラーが苦手なのに、話題になったフリーゲームの『ib』(※7)をプレイして……。


――今でもtwitterで『ib』の小話とか書かれてますよね。

vanila:(笑)、そうですね。あのゲームでも、中盤から出てくる裏の顔を持ったとあるキャラクター。あのコがやっぱり一番好きなんです。プレイしてる当初はホントに怖くてたまらなかったんですけど……そういう怖いものグロいものが好きになりますね。


――うろジョジョを見ていると、ホントにいろんな漫画を読まれているんだなって伝わってきます。……個人的に、動画にゲスト出演した別漫画キャラで一番ツボだったのは、第一部編のディオの間にいた、吸血鬼軍団の金魚鉢男です(笑)。

vanila:おおーーッ嬉しいですね(笑)。


――吸血鬼と言われてアレが出てくるとは……。

vanila:阿部洋一さん(※8)の漫画ですよね。『まこら』(※9)とかも読まれてるんですか?


――『まこら』は旧版の2巻までは読んでますね。『バニラスパイダー』(※10)が好きだったんです。

vanila:『バニラスパイダー』!いいですよね、vanilaだからというわけではありませんが(笑)。僕は少し大きめの判型の漫画をよく買うんですが、本棚の形が悪くなるのを覚悟でその棚にいれるくらい好きです。一番取り出しやすいところに。


――3巻で終わったのが本当に惜しい漫画で……。

vanila:ホントそうですよね。


――一応ヒーローもので敵を倒す漫画ですけど……「自分の丈に見合った正義」というのを最後までやりきった漫画でしたよね。

vanila:そこがいいんですよね。ヒーローじみてなくて、主人公の心の成長が身近に見える漫画で……主人公を応援したくなる漫画でしたよね。


――話し筋はストレートなんですけど、世界観はやっぱり阿部さんのシュールさがそこかしこにある作品でしたよね。やけに大きなモブの女子とか

vanila:教室に普通にいるんですよね。しかもだんだん大きくなっていくという(笑)。はじめはちょっと大きいな、くらいだったのにその辺の樹とか変わんないくらいになっていく。


――なんなんでしょう、物語と関係ない所で気になるモノがいっぱいあるんですよね(笑)。

vanila:私は物語的にはできることならハッピーエンド至上主義なので、そういった意味でも『バニラスパイダー』は良い終わり方だったなと思います。


――いい落とし所でしたよね

vanila:駆け足ながらもいいまとめかたをしてくれたと思います。……いやあ、こんな風に漫画の話をするのはいいものですね!


――もっと色々お話したいところですが、ここはこらえて(笑)、ジョジョとの出会いはどのような感じだったんでしょうか?

vanila:これはファンの方からすると邪道と思われるやもしれないんですが……先ほども言ったように、私はグロテスクなものが苦手な性格でして。ジョジョを読むには大きな障害があったんです。私がジャンプを読んでいた当時もジョジョは連載していたんですけど、そのときは読むことはありませんでした。
 そんなある日床屋に行った折、だいぶ待ち時間が長い時があって。ずらーっと並んでる本からひとつ選んで時間を潰そうと思ったんです。置いてあったのは大体ジャンプだったんですが、なんとそこにジョジョのコミックも置かれてたんですね。で、怖いもの見たさで27巻を手にとったんです。「DIOの世界」というサブタイトルの、DIOがポーズ決めてる黄色と黒のコントラストの表紙。あれを見て「すっげーカッコイイ!なんだこの人!?」と衝撃を受けまして。まだその頃はDIOのことすら知らなかったんですけど(笑)。そして、ちょっと過激な描写に片目つむりつつその巻を読み進んでいって……とんでもなく邪道ですけどね、3部のラストバトルから読み始めるって(笑)。でもキャラクタがわからないながらに激しいバトルが続いていって、いろんな展開があり。それを読むうちに、「これは初めから読みたい!」という意欲が高まってきて、3部の初めから終わりまで買って読み始めたんです。
 で、3部の初めって2部の終わりがちょこっと載ってるじゃないですか。「なんか凄いのが写ってるぞ」と気になってそっちも読み始めて、とうとう自分の中である意味禁忌だった1部に。1部ってゾンビだったり吸血鬼だったりで、一番描写がキツイところなんですよね。だから3部は読めても1部は行けるかどうかって思ってたんですけど、読んだらもう面白くって、もうそこからはトントン拍子でした。もっとだもっとくれ!もっともっと!って(笑)。2部なんかドハマりしましたね。シーザーが神砂嵐を喰らって、ボロボロになりながらワムウを弱々しく殴るシーンがあるじゃないですか。あそこでジョセフより一足早く「シイイイイザアアアア」ってなってましたから(笑)。それほど、どっぷりハマりました。
 という訳で入り口はなんとも邪道なことにジョジョ3部。しかも27巻からです。なんでもっと早く読まなかったんだと今でも思います。……この感想、私と同じように残酷描写で躊躇してた人は、読み終わったとき口をそろえて言うんですよね(笑)。


――そうですよね。僕は数年前に1部から7部まで一気に読みしたんですが、確かにそう思いました(笑)。以前から読みたいとは思っていたんですけども。うろジョジョの名前も、以前からニコニコ動画ランキングで常連になってるシリーズとして認識してて、それを見たい気持ちもあって。

vanila:ということは、ジョジョを読むきっかけとして一枚噛ませてもらえた感じですか?


――そうですね、やはり動画を見る前に元ネタは押さえとかないといけないよなと思っていたので。結果うろジョジョを見るのもだいぶ時間がかかってしまったんですけれども。

vanila:いやーそれはありがたいですね。ジョジョは若い世代になればなるほど、読むのに気合がいりますよね。巻数も多いですし。


――初期は絵柄とかノリとかも昔の漫画ですしね……。

vanila:今の絵柄とかに慣れてる人からすると、1部を読もうとする気合がいりますよね。


――僕は4部の世界観の狭さが好きで。吉良は己の生活の安寧、仗助は育った街を守るという、すっごく小さな、でも自分たちにとって大事なことを抱えて戦うという、あの構図にしびれちゃうんですけど、vanilaさんはどの部が特にお好きなんでしょうか?

vanila:動画を始めた当初は2部でしたね。動画の端々に2部のネタを入れたりもしていますし、シーザーもちょろっと出しちゃうくらい好きだったんですけど(笑)。しかし年月が経つと……こういうのはあまりよろしくないかもしれないんですけど、好きな部というのは巡り巡るものでして……今一番好きなのは1部ですかね。


――それはやはり、うろジョジョで1部を作ったことが影響しているんですか?

vanila:そうですね。記憶を頼りに、声に出して読むと強く頭に残りますのと、その後漫画を凝視しながら絵を描くので、深く読み込むことになるんです。その結果、私のやった展開と違ったりすると、大変身勝手なんですけど、コミックにツッコミながら読んだりするんですよ(笑)。「なんだよコレ!」「ディオはなんてことをするんだ!」って(笑)。その作業を楽しんでるうちに好きになっちゃう。1部で時に好きなのは、ジョナサンのラグビーシーンなんですけど、動画でやれたときの感動は半端無かったです。「身長195cmジョナサン・ジョースター! 雄叫びをあげてゴールに突進するゥ!」って奴(笑)。


――後の部から振り返ると面白いですよね。ジョナサンとディオが仲良くラグビーやってた時代があるって。

vanila:面白すぎますよね。宿敵と握手しながら「やあディオ素晴らしかったよ君のトライは」「君のパスあってのトライさ」ってやってるの(笑)。変な体勢でボールキャッチして、相手のディフェンスを、ポルナレフがシェリーのこと語ってるときくらいの角度で避けて(笑)。ウワオーン!って。何やってんだと(笑)。


――この間アニメの3部を見てて改めて面白いなって思ったのが、「恐怖を克服することが生きることだと思う」ってシーンのところで、自分から承太郎達を潰しにいこうとするとエンヤ婆に「あなたはそんなことをしてはならんお方じゃ!」って言われる。それがなんか「あなたは頭のいい子なんだからあんな子たちと遊んじゃいけません」ってお母さんに叱られてる子供みたいで(笑)。そしてDIO素直に言うこと聴いてますからね。

vanila:そう考えると可愛い所ありますよね(笑)。


――ジョジョは敵にもそういう人間味とか、主人公性があるのがいいなぁと思います。例えば、5部は最終決戦もいいんですけど、僕はその一歩手前のディアボロがチャリオッツ・レクイエムを攻略するとこも好きなんです。「光は己の精神の背後だーッ!」って言って何かを破壊する。ラスボスなのに、まるで主人公が何かを打ち破ったような盛り上がり。

vanila:お前がやるんだ、って感じしますよね(笑)。この人なにか今乗り越えちゃったぞ、っていう。ただ悪いとかじゃなくて、みんなそういう面があるんですよね。


vanila.ice、ダンを語るッ!

――先ほど定期的にキャラクタのブームが来ると言われていましたが、現在はラバーソールとスティーリー・ダンがお気に入りですよね。

vanila:ラバーソールは昔から好きだったんです。PSの格ゲーで声をあてていた方が本当にラバーソールにハマってまして。ウザい感じのキャラ演技が最高で大好きだったんですけど……ダンが好きになったのは結構後になってからでしたね。


――それはやはり、うろジョジョに登場してから、ということですか?

vanila:そうですね……いや、声をあてた時もそこまでではなかった。動画を見てもらえれば分かる通り、スティーリー・ダン戦はストーリーもよく覚えていなくて、ホントに印象が薄かったんです。
 で、絵を描いたあとでようやくスティーリー・ダン戦をちゃんと読める環境になったんですが、読み返してみて「俺全然覚えてなかったなー」と思うと同時に「なにコイツ!? こんなことやってたっけ!!?」って驚いて(笑)、ダンの行動ひとつひとつにツッコミを入れていってたらいつの間にか好きになってましたね。「お前承太郎に失礼しすぎだろ!」っていう(笑)。
 「なかなかしっかりした橋じゃあないか、ホレホレ」って背中をぐりぐり踏んだり、調子こくだけこいた後での土下座(笑)。あげくの自分で再起不能(リタイア)宣言。3部で再起不能宣言したのは二人いて、もう一人はカメオなんですけど、あいつはまだ潔いんですよ。「ごめんなさいィ」とは言うし。アブドゥルが「許さん」って言って燃やして終わり、チャンチャンなんですけど、ダンは「見てください、今ので腕と足が折れました! もう再起不能です!動けません!」って泣きながら(笑)。いかに自分が駄目かアピールして、もう姿見せませんからって靴ぺろぺろ舐める。それまでの調子こきっぷりとあわせて、ホントにこいつは屑だなと(笑)。
 で、承太郎も一回見逃してくれるんですよね。そこから今度は子供を人質にとって、「ぐははははははーーっ バカめェェェ~~~~~っ」ですよ(笑)。折れた足を引きずりながら、ずりずりナイフもって近づいてくる(笑)。「後ろからブスリといくぜ」ですよ。でもノリくんのせいで動けなくなって、ほっぺたに持ってたナイフ刺されて「ギニャーッ」で(笑)、でまたごめんなさいが始まって、「DIOからもらった金を半分やるよ」って言い出して、ほんとどうしようもない奴だなってボコボコにされる。


――何ページもオラオラ食らってしかるべきですよね(笑)。

vanila:あのしょーもなさにドはまりしました。3部のキャラは特に小物が好きなんです。最後に「ごめんなさい」があったり、手のひら返しがあるとなおいい(笑)。そういうキャラで私の中の究極はラバーソールで、「やめちくれー」って言うんですよね彼は、この期に及んでちょっと場を和ませようとする(笑)。顎の骨が折れちまった、降参だよーっつって。でも、そういう場面でスティーリー・ダンのほうはガチで謝りにいってて、そういうとこが好きになりましたね。


――ダンはDIOの部下達の中でも場当たり的というか、「お前あんまり考えてないだろ!」って感じがしますよね

vanila:自分の気持ちに素直ですよね彼は。数々の失礼も余裕ぶっこいちゃった慢心が生んだ行動なんでしょうけど。彼と承太郎のバトルは「二人で散歩してたらいつのまにかスタンドがピンチになっててボコボコにされました」っていういわゆるお散歩バトルになってますけど、あれがアニメになる日が今から楽しみです。まるまる一話、承太郎と奴がお散歩するのかと思うと(笑)。


――最後のオラオラを小野さんが叫びきれるかも注目どころです。

vanila:でも承太郎が戦った相手って、ラバーソールとかダンとか、残念なことにそういうウザい奴ら、失礼してくる奴らが多いんですけど、それは仕方ないと思うんですよ。承太郎がクールで落ち着きがあって、自分からあんまり行かない優しいとこのある性格だから、激しく闘うには彼を怒らせなきゃいけない。だから承太郎の怒りを煽る敵をDIOがぶつけてきてると思うんです(笑)。


――なるほど(笑)。適材適所なのかもしれないですね。

vanila:承太郎に楽しく戦闘してもらうために、DIOが選んだ選りすぐりの芸人があの二人だったんだと思います(笑)。承太郎くんはホント心優しい性格なので、ともするとンドゥール戦のような無言の戦いばっかりになっちゃうと思うんですよ。


――確かに真面目な敵となると、あまり激しくはならないですよね。

vanila:正々堂々ながらに承太郎の表情があまり変わらないまま決着しちゃうんですよね。
 それに対してラバーソールやダンはかなり失礼してくるので、怒る承太郎、ムッとする承太郎が拝めますし、それから解放されると挑発的な笑顔をしたり、「おいおいどーしたんだてめー」みたいな、逆にやりかえすイキイキした承太郎が見れるし。なにより、手加減なしのオラオラも見れますし、そういう所で彼らはいい仕事をしたんだと思います(笑)。承太郎のつけてる時計がTAG HEUERだと判明したのもダンの功績ですから。承太郎のつけてるあらゆる金目のものを盗ろうとしたときに。


――セコいですよねダンは。どこが鋼入りなんでしょう。

vanila:髪の毛に鋼入ってるんじゃないですかね(笑)。ハリネズミみたいなあの髪型、あれが鋼入りなんだと思います。


――それが通名になってるんですね(笑)。

vanila:でもとことん私はダンが大好きなのに、彼はフィギュア化しないんですよね。超像可動もそうだし、面白いとこにスポットをあててくれてるはずのスタチューレジェンドシリーズでも出ない。ペッシは今度出るのに! そこが何でかなって考えた時に……髪の毛の問題が結構あると思うんですよ!


――髪型が造形しにくいってことですか(笑)。

vanila:(力説しながら)髪の毛が作りにくいから! 折れちゃうし危ない! 大量生産できない!(笑) あれが問題なんじゃないかと思ってます! だからラバーソールはいけると思うんですけど、ダンは下手すると髪でフィギュアにしにくいんじゃないかと思ってます。


――アヴドゥルもけっこうつくりにくい髪してる気がするんですけども。

vanila:彼はまだ束になってるじゃないですか、パスタの束みたいな。ダンの場合はパスタ一本一本って感じなので、作りにくいんじゃないかなぁ。


――なるほど、そういう理由が……あるんですかねえ……?

vanila:超像可動で出た暁には、腕と足の関節パーツが逆に曲がるというギミックをつけてほしいですね。骨折再現可能!みたいな(笑)。


――ダンの場合はスタンドを出さなくていいから楽ですよね、どうせ見えないから。ダン一体で済む。

vanila:(笑)。セリフパーツだけつけてほしいですね、「↓このへんにいるよ」っていう。


――でもラバーズは、後々のことを考えていくと相当恐ろしいスタンドだなとは思います。

vanila:恐ろしいスタンドではあるんですよね。でも私、未だにラバーズの能力がよくわかってないんですよ。痛みを倍加させるのはわかるんです、神経をいじるんですよね。でも吹っ飛ぶのはなんでなんですかね?


――なんでなんでしょうねアレ。

vanila:承太郎にふっとばされた時にジョセフも吹っ飛ぶ、アレが全然わからなくて。


――中に入ったラバーズが何かしてるんだとすれば、ラバーズが足の筋肉までえっちらおっちら行って、アキレス腱なんかをびよーんといじって、足をびよーんと動かしてるんじゃないですかね?

vanila:(笑)。えっちらおっちらって表現がなんか可愛いですね(笑)。


――ラバーズにとっては大冒険ですから。

vanila:感覚を思い出す、The Bookというスタンドがありましたが、アレに近いとこがあるのかもしれないですね。その感覚でふっとばされちゃう。


――射程距離が100キロ以上っていうのも凄いですよね。後にも先にもそんな遠隔操作型ないですよね。

vanila:さすが恋人の名を冠したスタンドですよね。遠距離恋愛もお手の物という。離れていても続く恋人関係「切れない縁」という点で射程が長いんじゃないでしょうか。だから全国の遠距離恋愛をしているカップルの皆さんは、ラバーズのカードをお互いに交換してですね、懐に忍ばせておけば100キロ離れていても続くというおまじないをしてほしいですね。


――ちょっと脳みそは抉られちゃうかもしれないですけどね(笑)。


デーボがもたらした奇跡

――そういえばもうすぐ呪いのデーボ戦がアニメでありますが、「おのれポルナレフ」のコメントがつくかどうか楽しみです。

vanila:「おのれポルナレフ」と言えば、アレは嬉しいことが二回もありましてですね。
 一つ目は、週刊アスキーという雑誌があるんですけれども、アレに昔ニコニコ動画特集が組まれたことがありまして。その時の表紙が、様々な動画の画像を組み合わせたモザイクアートだったんですが、その一枚がデーボの顔でした(笑)。twitterのフォロワーさんに教えてもらいまして、「え、なんだ俺の動画がそんなに詳しく特集されてるのか!?」と本屋さんに飛んで行ったら一部分だけというね(笑)。でも嬉しかったです。
 もう一つは、群馬を題材にした漫画に取り上げられたことがありまして。


――『お前はまだグンマを知らない』(※11)でしょうか?

vanila:それですそれです。それにネタで使われたことがありました。ホームセンターの回で、トチギだとかサイタマに地元の良いところが持っていかれるというお話なんですけど、それに呪いのデーボが使われてました(笑)。クマのスタンドまで出てくるんですよ。


――13話のエピソードですね……わほんとだデーボだ!(笑)。

vanila:このすさまじい迫力、特に3ページ目のイッちゃってる顔が凄いですよね。プロの方が描くとこんな酷いことになるんだなと(笑)。2ページ目くらいがかなり私の描いたモノに近い感じ。


――他に取り上げられたと言えば、二部が放送中の頃に、神風動画さんのtwitterアカウントがvanilaさんと絡んだことがありましたよね。

vanila:あれはホントにびっくりしました。ちょうど私がラバーソールとダンでOPのパロディ絵を描いたときだったんですけど。本来ジョセフとシーザーがダンスするシーンを二人に差し替えた絵をあげたら、「こんなOP作ってねーよ」とツイートしてくださって(笑)。たまげましたねアレは。


――制作側の人たちもうろジョジョ、見られてるんですかね?

vanila:どうでしょうね……たまたま目に入っただけと信じたい……(笑)。神風さんと言えば、3部のOPもすごい出来ですよね。漫画が動き出したぞ!って感じで。皆さんよく言いますけど、承太郎がスタープラチナがドン!って出てくるときの、あそことか非常に鳥肌たっちゃいますね。


――普通に熱いだけじゃなくて色んな小ネタも仕込んであるんですよね。最初海の中、次に海上から月が映って~と、1部と2部のOPラストを連想させるシーンから始まっていたり。

vanila:へー! そうなんですか! へえへへへっへえ!20へえ(笑)! 他にはどんなのがあります?


――タロットカードが螺旋階段状に連なっているシーンも、1部の階段を登っていくジョナサンっぽい~みたいな話もありますし、あとは最後のオラオララッシュのところも色々仕込んであるみたいですね。

vanila:承太郎が液晶TVに八つ当たりするとこですよね。バンバンバリバリバリーン!って。


――そうですね(笑)。アレに一瞬DIOが映ってるんですよ。

vanila:あ、そうなんですか。「なんかTV殴ってるな~」くらいに思ってました。画面から飛び出す迫力!みたいなこと伝えたいのかなと思って(笑)。


――たぶんDIOの『世界』にスタープラチナが入門してきた、っていうシーンを意識した演出なんだと思います。

vanila:あ、深い!(笑) ごめんなさい、「え、なんかTV殴ってる!……承太郎どうしたの……でも私はわかってるんだからね!」っていうホリィさんみたいな心境で見てました(笑)。「ほんとは優しい子なんだから、今TV殴ってるけど」って(笑)。


噛まずにはいられない!

――先ほど少し触れましたが、失礼ながら「うろジョジョ」においてセリフの噛みって凄く多いですよね。やはりギャグとして意識して残されているという所もあるのでしょうか?

vanila:そう言いたいですけども(笑)。インタビューしていただいてる間でもわかると思いますが、私自身単純に滑舌がよくないので、未だに直っていないんですよね(笑)。声の切り替えをしないといけないので、舌が追いついていないと言うか。 承太郎が一番噛みやすいのも、何か因果関係があると思うんですよね。


――動画中でも「噛み率No.1」って仰ってるくらいですもんね。

vanila:私の元の声質がこんな感じでちょっと高めなので、低いほうに切り替えて「なんとかだぜ!」って言う時、口の中の慌ただしさが半端無いんです(笑) あぐりゅぎや、ほりゅるびゃぁ!みたいな(笑)。全部承太郎のせいになってしまうという。


――承太郎が言えなくて、ポルナレフがフォローする場面もたびたびありますもんね。

vanila:ありますねー。


――うろジョジョではセリフを噛んでしまったことで笑いを誘うシーンがたびたびあると思うんですけど、一部クライマックスのディオは凄かったですよね。あれはホントに噛んだんですか?

vanila:いや……なんだったんでしょうあれ(笑)。アレは音に絵をあてていく段階で自分でも「あぁ!?」って思った(笑)。


――収録している段階では自覚はなかった?

vanila:特にツッコミ入らなかったですね、周りから。


――周りから、と言うと。

vanila:周りのキャラクタからですね。噛んでしまうと、他のキャラに「お前噛み率高いな」とか言わせてごまかしてるんですけど、ディオ噛んだところはダイアーさんがそんなの無視してずんずん進んだので、私の中では流れてましたね。で、絵を描く段階になって聴いたら「おっ?おっ?」ってなって(笑)。「コイツ、『酒! 飲まずにはいられない!』か!?」って(笑)。あれはなんか変でしたね。


――個人的に、あの回は1部編でも特に好きです(笑)。

vanila:でも、あの噛みは字幕つけてくれた人のおかげで面白くなった面が大きいと思います。「眠っちゃらぃスィアモフィァロスパーラロロヴィァ」って(笑)。あの字幕のおかげで、私が絵をつけてる段階では「あぁ!?」ってしか思わなかったセリフが形になったんだと思います。ますます何言ってんだって感じになりましたね。


――ダイアーさんの動きも楽しかったですね。「もうふわっと浮いた!」

vanila:あのへんは自分で作ってても楽しかったです。頭の中でダイアーさんを動かして、自分でリアクションして。


――ストレイツォの手のひら返しの早さも面白かったです。

vanila:ストレイツォも大好きなんですよ。原作での彼の切り替えの早さ大好きです。ダイアーのことを自信満々に語ったかと思えば「ダイアー!」って絶叫して、その後はすまし顔に戻ってるという。お前はなんだ情緒不安定か!と(笑)。トンペティはトンペティで「雑魚ゾンビが多くてきりがないわい」でずーっと雑魚処理してるという。ジョナサンの周りが頼りがいがなさすぎる(笑)。


――トンペティも用が済んだらすぐにいなくなっちゃってますもんね。

vanila:そうなんですよね、ディオ戦が終わるとすぐいなくなってて。トンペティとストレイツォの前に出ない「いのちをだいじに」の戦い方好きですよ(笑)。ダイアーだけ「ガンガンいこうぜ」で。


――ダイアーも同じパーティに入れてあげてください!

vanila:そういうポジショニングも含めて1部大好きですね。


そして時代は流れる 世代は交代する うろジョジョは…!

――うろジョジョ3部はまだ未完結なわけですが、うろジョジョが終わった後、こういうものを作りたいという予定はあったりするのでしょうか?

vanila:えーとですね、ないです! 私はうろジョジョを完結させたら、完全に動画界からは引退しようと思っています。シリーズをここまでやったからには、きちんと責任をもって「チャンチャン」と終わらせたいです。とにかくコレを妥協せずにやりきるのがすべてだと思っています。


――それは寂しくなりますね。

vanila:twitterなどは続けていこうと思っていますので、そちらに絡んでいただけると嬉しいです。作品が終わった後も。


――絵のほうなどは今後も描かれていかれるのでしょうか?

vanila:そうですね。それと先ほど話題にしていただいたブログの書き物などを、趣味の範囲でほそぼそと楽しんでいきたいと思っています。……で、これは野心というか野望というか私の秘めたるところだったんですが……もし仮に、「今後はもうやらない!」というこの宣言を聞いてですね、どなたかが「俺、他の部でうろジョジョやってみよっかな~」と思いつく人がいたらですね、是非やってほしいなと思っています。それを視聴者として楽しませていただきたい(笑)。私はもう毛頭やるつもりがないので、どなたかがやってくださると嬉しいなあと思います。


――うろジョジョの受け継がれる意志というわけですね。

vanila:そうですね(笑)。うろスター家の血統といったところでしょうか(笑)。しょーもない血族に名乗りをあげる人が出てこないものかと日々期待しております。どなたか勝手に別の部を始めちゃってくれないかなと。私と並行しててでも。


――やはりvanila.iceさんのうろジョジョが偉大すぎて躊躇なさる人が多いのかも……。

vanila:いやいやいや(笑)。きわどさは自分でもよくわかってますけどね。ジョジョが好きな方って、ほんとに根っこから大好きで、おふざけを許さない方とかもいらっしゃるので、私も毎話毎話チビりながら投稿しています(笑)。「ヤバイんじゃないのか、コイツこんなことになってるぞ」って。ほんとに、part1を投稿するときは勝負でした。コレは4部の朗読動画のときみたいに笑ってもらえるか、滅茶苦茶に叩かれるかのどっちかだなと。で、運良く皆さんの心の広さに救われて、なんとか笑ってもらえて。先日ぽっと出で出した5部のボツ動画があったんですけど、あれもリゾットが滅茶苦茶なことになってるので世間に出していいものかと悩みました(笑)。「俺の質問に答えないと殺すぞ」とか言い出すので。


――リゾットも人気キャラですもんね(笑)。

vanila:大人気キャラですからね。だから始めるときは勇気がいるかもしれませんが、それでもやってみようと思う人がいたら嬉しいですね。嬉しいというか……嬉しいというか嬉しいですね!(笑)


――それでは、最後にこれから作品を作ろうと思っている方に対して一言お願いします。

vanila:そうですね……………………なんとかなるってことですかね(笑)。なんとかなりますよ! 
 特に、ニコニコ動画に投稿されるような方に対する話になるんですけど、長く何かを続けていると、やっちまうタイミングっていうものが、必ずあると思います。そのとき、自分の心に痛いコメントは、目を逸らさないで見たほうがいいです。自分がショックを受けて心に刺さるモノって、概ね正しいことを言ってると思うんです。そこから目を逸らさない。向きあえば、自分の中でモヤモヤしているモノの形が見えてくると思います。
 やっぱり、耳に痛い意見というのは大事で、その時は「好きにさせろよ!」って思ったりもするんですけど、後で振り返ると「ああ、そのとおりだよな」と思っている自分がいたりするんですよね。ついつい自分に嬉しい言葉を見たくなってしまいますけど、チクリとくるような意見があるなら、そっちも一緒に見てきちんと吟味すれば、より良いものが作れるんじゃないかなと……「まぁ真面目な話をしちまってるよなぁ~あぁ恥ずかしい! チクショーなんでこんな話をしてるんだぁ!?」(ポル声で)


――(笑)。

vanila:逃げナレフですよ逃げナレフ(笑)。いたたまれなくなって逃げるという。……でも、これは非常にそう思いますね。試行錯誤を繰り返して、いつか納得できるものが、たくさん作った中で一つでもできれば。そしてそれを「やたっ!」って、一個一個喜べばいいんじゃないでしょうか。

(2014.5.24収録)

vanila.iceさんの動画マイリスト http://www.nicovideo.jp/mylist/10456124
ブログ http://ameblo.jp/vanila-do-tiku-show/
twitter https://twitter.com/Vanila_Ice_Ice


(1)72時間ラジオ
実況プレイヤー集団TEAM:SAYCANが行った企画。実況プレイヤー、歌い手、踊り手、絵師などジャンルを問わず、様々なニコニコ投稿者を招いて対談を行った。vanila.iceさんは2009年、2010年に行われたラジオに二度出演

(2)スターダストハイスクールスチューデンツ
vanila.iceさんによるジョジョ二次創作。成長するにつれ男女どちらの性になるか決まる、特異な体質の一族に生まれた星野プラチ菜と、そんな彼(彼女)と微妙な関係でありつづける鋼野チャリオッツを中心に、一風変わったスタンド生徒たちの学園生活を描くラブコメディ

(3)GANTZ
漫画作品。作者は奥浩哉。世界各地に現れる謎の黒い球体ガンツが仕掛ける、死人と星人の闘いを描いたSFバトル漫画。2010年には前後編で実写映画化が行われた。

(4)ドロヘドロ
漫画作品。作者は林田球。魔法使い達と、魔法の使えない人間達が隣り合って存在している世界で、魔法によってトカゲ頭にされてしまった記憶喪失の男カイマンが、自らのルーツを探し求める物語。パンクやデスメタルなどからインスピレーションを受けた独特の世界観が強烈な作品。あと餃子が食べたくなる

(5)彼岸島
漫画作品。作者は松本光司。一年中彼岸花の咲き乱れる島・彼岸島に迷い込んだ主人公たちが、凶暴な力を持つ吸血鬼達や島を徘徊する怪物たちと戦いを繰り広げるホラーサバイバル漫画。いわゆる「シリアスなギャグ」描写が多く、ネット上ではネタ的な意味でも人気がある

(6)OVAはさくら友蔵
ジョジョ3部のOVAにおいて、ヴァニラ・アイスのCVを担当したのは故青野武氏。ちびまる子ちゃんのさくら友蔵役といったおじいさんから、ウルトラマンのメフィラス星人役などの悪人に至るまで、様々な役柄で存在感を発揮してきた名優である

(7)ib
フリーゲーム。製作者はkouri氏。両親と一緒に美術館にやってきた少女ibが、芸術家ゲルテナの作品に触れるうちに、狂気と幻想が入り乱れる不思議な世界に迷い込んでしまうホラーアドベンチャー。ストーリー構成やゲームシステム、ビジュアルなど非常に練りこまれた作りになっており、玉石混交のフリーゲーム界隈の中でも人気の高い作品

(8)阿部洋一
漫画家。『少女奇談まこら』でデビュー。ベタを多用した木版画のような絵柄と、独特の不条理な世界観が特徴的な作家。最新作は『橙は、半透明に二度寝する』

(9)少女奇談まこら
原作は平野俊貴、植竹須美男。作画は阿部洋一。右目に人の目、左目にあやかしの目を宿した少女まこら。そんな彼女が、消えてしまった母と、妖怪を統べる存在であるという父・妖怪皇を追い求め、三匹の妖怪と旅に出ることになるホラーアクション漫画。3度の掲載誌休刊を経験しており、阿部氏のデビュー作でありながら未だに完結していない

(10)バニラスパイダー
別冊少年マガジン連載。ひそかに人間を補食し、本人となり代わって街に溶け込む謎の生命体エレベター。彼らの脅威から想い人を守るために闘う、人一倍影の薄い気弱な少年・雨留ツツジの物語。

(11)お前はまだグンマを知らない
くらげスピリッツで連載されている漫画。作者は井田ヒロト。日本に残る最後の秘境グンマの、誰も知らない真実をダイナミックなタッチで描くコメディ作品。ちなみに作者は群馬在住

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