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【ビジネスマン必見!】最新の生成AI活用について学ぶシリーズ #1 Deloitte AI Institute所長森正弥が解説する「日本における生成AIの4つの活用パターン、事例と最新トレンド」


 

趣旨

生成AI(ジェネレーティブAI、Generative AI)に関する話題は日々世間を賑わせています。生成AIがビジネスにもたらしうる可能性や危険性が多く取り沙汰される中で、我々デロイトトーマツコンサルティングでも生成AIの活用方法やリスクなどに関しクライアントからご相談をいただく機会が急速に増加している状況です。

 

「日本から、よりよい明日を創るために、進むべき未踏の道を指し示しともに駆け抜ける存在であり続けたい」という想いを胸に、デロイトトーマツコンサルティングでは2023年6月、所属する全コンサルタント約5,000人が生成AIの専門知識・活用ノウハウを獲得し、顧客に提供するための体制整備を加速する旨も発表しています。

 

このインタビューシリーズでは、デロイトトーマツコンサルティングに所属する各業界・領域の専門家が、各業界・領域における最新のAI活用事例と生成AIに関するデロイトならではのソリューション提供について解説していきます。

第一回は、Deloitte AI Institute 所長の森正弥が、生成AIに関しどのような相談がクライアントから寄せられているのか、生成AI活用におけるよくある誤解とは、クライアントの生成AIの影響が大きいとされるのはどの業界なのかなど日本における生成AIの活用事例と最新トレンドについて広く解説していきます。

 

解説者紹介
森 正弥
デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員
Deloitte AI Institute 所長
外資系コンサルティング会社、グローバルインターネット企業を経て現職。ECや金融における先端技術を活用した新規事業創出、大規模組織マネジメントに従事。世界各国の研究開発を指揮していた経験からDX立案・遂行、ビッグデータ、AI、IoT、5Gのビジネス活用に強みを持つ。CDO直下の1200人規模のDX組織構築・推進の実績を有する。東北大学 特任教授。東京大学 協創プラットフォーム開発 顧問。日本ディープラーニング協会 顧問。過去に、情報処理学会アドバイザリーボード、経済産業省技術開発プロジェクト評価委員、CIO育成委員会委員等を歴任。著書に『ウェブ大変化 パワーシフトの始まり』(近代セールス社)、『両極化時代のデジタル経営』(共著:ダイヤモンド社)、『パワー・オブ・トラスト 未来を拓く企業の条件』(共著:ダイヤモンド社)がある。

 

 

増加する生成AI活用ニーズ


-企業からの生成AIに関するご相談は4タイプ、幅広い業界のクライアントから相談が相次ぐ

――生成AIに関するクライアントからのご相談は急速に増えているかと思いますが、具体的にどのようなものなのでしょうか

生成AIの活用に対するクライアント企業からのご相談は非常に増加しています。クライアントのご相談内容(生成AI活用タイプ)は、以下の4タイプに分類されます。

1.     全社導入(社内利用)
ChatGPTなどのAIツールを全社に導入し、社員の生産性向上を図りたい

 2.     業務システム刷新(社内利用)
生成AIを使用した社内の業務システム刷新や、社内の各種システムのインターフェースとして生成AIの自然言語能力を組み込みたい

 3.     顧客対応進化
生成AIを社内活用だけでなく、音声認識や音声合成を組み合わせたAIアバターを作成し顧客とのコミュニケーション(顧客接点)にも活用したい

 4.     独自LLM*開発*LLM:大規模言語モデル
自社独自の大規模言語モデルを構築し、特定の業務領域で活用したい。特に製造業でのR&D高度化や製薬企業からの創薬AIの導入等での相談が増えている状況

 

――どのタイプのご相談が特に増加していますか

 

当初は①全社導入や全社での活用に関する相談が多かったですが、現在では②社内業務システム刷新やインターフェースへの生成AIの活用、③顧客対応に関する相談、さらには④自社独自の大規模言語モデル構築に対する相談も増えてきています。クライアントの生成AIに対する理解が深まるにつれ、活用ニーズの幅が広くなってきていると感じています。

 

――どの業界のクライアントからのご相談が特に多いですか

 

当初は金融機関を中心としたクライアントからのご相談が多かったのですが、現在は製造業や製薬企業など、幅広い業界からご相談いただいております。製薬業界では、④自社独自の大規模言語モデルを構築した上での創薬開発に関する相談が特に増加しており、その他の業界でも生成AIへの関心が高まっています。

 

クイックに効果が出せる生成AI活用方法は?、具体的な顧客事例は?

 

――クライアントからの生成AIに関するご相談4タイプのうち、DTCのソリューション提供によりクイックに効果が出されているものは、どのようなものですか?

 

全社導入に関するご相談は、DTCのソリューション提供によりクイックに効果が出ています。DTCは生成AIの基盤導入から始まり、クライアントと共に業務プロセスの変革を支援し、リスクを管理しながらも生産性を向上させるためのユースケースの作成支援や業務プロセス改革支援、さらに技術的なスキルアップを目的とする社員向けワークショップを提供しています。これにより、企業はより効率的な業務運営が可能となり、素早く成果を上げることが期待されます。

 

――生成AIを活用した具体的なクライアント事例を教えてください。

様々な事例がありますが、生成AIを➁社内業務システムのインターフェースとして活用した事例をご紹介します。社内にERPなど基幹システムをお持ちの場合、基幹システムから特定のデータを取得するためには専門的なクエリ*や問い合わせが必要であり、その操作を担当できる社員は限られていることが一般的です。

しかし、生成AIを基幹システムのインターフェースとして活用することで、社員は自然な言葉でシステムに問い合わせを行うことが可能になります。生成AIはその問い合わせを理解し、ERPシステムや他のデータベースと連携して必要な情報を迅速に取得します。さらに、取得した情報をわかりやすい形で提供するために加工し、必要なレポートや分析を自動生成します。詳細イメージは図2をご覧ください。

このような活用事例は、業務システムやドキュメント、社内のナレッジといった多種多様な情報を統合するキーとしても使われています。こうした取り組みが最近増加しており、効率的な業務プロセス改革や情報共有の促進に大きな成果をもたらしています。
*クエリ:データベースに対する命令文

図2 社内業務システムにおける生成AI未導入時と生成AI活用時のイメージ

 

生成AIの企業活用でデータ学習はかならずしも必要ない?!生成AI活用におけるポイントとは


――生成AIを活用するにあたり、ポイントとなっていることは何ですか

生成AIは大量の言語データや各種データを学習し、その基盤となるナレッジを獲得しています。しかし、クライアント自身のデータやドキュメントを生成AIに結びつける際には、追加学習がかならずしも必要になるわけではありません。もちろん、ファインチューニングや追加学習が必要なケースもありますが、必ずしも全ての場合で必要というわけではありません。

例えば、追加学習はさせず生成AIへの命令を工夫する(プロンプトエンジニアリング)だけで、十分な結果を得ることが可能です。また、生成AIを特定の業務システムのインターフェイスとして活用する場合も、自然な言葉での問い合わせを生成AIが適切な命令文に変換し、業務システムに問い合わせ、業務システムから得られた情報を生成AIが再び自然な言葉に加工するだけなので、生成AIに独自のデータを追加学習させる必要はありません。

追加学習が必要ないということは、大切なデータが不用意に生成AIに獲得されることがないということです。生成AIは追加学習が必須であるという誤解が解けることで、生成AIの活用方法に対する視野が大きく広がります。クライアントは、新たな活用方法や基幹システムのアップグレードについて、より多くのアイデアを得ることができるでしょう。
*プロンプトエンジニアリング:言語モデルを効率的に使用するためのプロンプトを開発し、最適化すること。

 

――生成AI関連サービスにおいて、デロイトだからこそ提供できることは何ですか?

デロイトは、AIテック企業の一つであるNVIDIA社とDeloitte USとの間でグローバルアライアンスを締結しており、NVIDIA社の豊富なAI技術を活用したソリューションを提供することができます。NVIDIA社とのアライアンスは、冒頭ご紹介したクライアントの生成AIに関するご相談タイプ③顧客対応進化で特に活用が期待できます。例えば、NVIDIA社が持つNeMo™という独自の生成AIフレームワークのみならず、音声認識技術、音声合成技術やOmniverseといった技術を組み合わせることで、AIアバターを活用した顧客対応が可能です。

既に金融機関における店頭での顧客接点管理や自動車業界の代理店における顧客対応に関し、デロイトならではのAIアバターを活用したソリューションが提供されており、顧客とのコミュニケーションの充実や効率的なサービス提供が実現されています。

 

生成AIの影響が大きい業界は?


――生成AIの影響が大きい業界はどこですか?

生成AIは、業界を問わず、部署や業務にも適用できる汎用性を持っていますが、製造業と製薬業での生成AIの影響が特に大きいと言えます。製造業においては、マテリアルズインフォマティクス*の領域での生成AI活用が見られます。製品設計や材料選定などのプロセスを最適化し、効率的な生産を実現しています。

製薬業界では、AIを使った創薬が進展しており、FDAによって承認された臨床ステージの薬剤も増加していますLLMを活用したAI創薬のデザインが業界のスタンダードとして確立しつつあります。これらの業界では、生成AIの導入により、新たなビジネスチャンスや競争力の向上が期待されています。

 

*マテリアルズインフォマティクス:機械学習などの情報科学を用いて、様々な材料開発の効率を高める取り組み

 

――生成AIの影響が大きいとされる業界の一つである製薬業界において、企業や組織は生成AIの今後の活用にあたりどのような戦略や準備が必要と考えますか?

グローバルにおいては先進的な製薬会社は自社独自のLLMを開発するために、大規模な投資をして自前でITインフラを構築した上でサイエンティストを集め、AI創薬を進めています。IT投資戦略がビジネスのコアになっている状況です。大型のIT投資戦略の検討、人材確保・育成やIT基盤構築に向けたビジネスパートナーとの連携へが重要になります。

 

森正弥からのメッセージ


――生成AIの導入・活用・規制などで悩まれているクライアントにメッセージをお願いします。

生成AIの活用可能性は幅広く、生成AIを社内で活用することにより部署問わず全社員の生産性向上に役立つことができます。生成AIの活用可能性は社内での生産性向上に留まらず、業界そのものをアップデートし、バリューチェーンやエコシステムを変革する可能性があります。

そのため、業界はどう変わるのか、変えていくのか、顧客にどのように新しい価値を提供していくのかといった社外利用も含めた全方位的な視点で生成AIの活用可能性を検討していくことが重要です。

 


インタビュー動画もありますので、ご興味のある方、ぜひこちらのURLからご覧ください。


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