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書籍出版のお知らせと内容のご紹介 (第1章:序章)

先週よりツイッターなどで告知をしているのですが、この度DU Booksさんから『インディラップ・アーカイヴ もうひとつのヒップホップ史:1991-2020』という書籍を出版することになりました。これまで雑誌などへの寄稿記事や自主出版などを中心としてきましたが、初めて自身名義の書き下ろし単行本となります。今年一年集中して書いた一冊になりますので、是非ともおめ通しいただけますと幸いです。発売日は11月27日(金)です。

内容など

本書は現在DU Booksさんの公式ページで試し読みができるのですが、簡単に内容のご紹介をいたします。この『インディラップ・アーカイヴ』はタイトルの通り、「インディラップ」作品に特化したディスクガイドがメインとなっています。1991年から2020年の間に発表された計500作品をリヴューしており、「インディラップ」という「もうひとつのヒップホップ史」を振り返る形となっています。

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本書は91年からスタートしているのですが、これは上掲の導入文でも触れている通り、ラップがメインストリーム市場で成功を確立したのがこの91年以降となっているためです。この91年のSoundscanの導入後、ラップは全米音楽市場で大きく羽ばたいてゆくこととなり、同時に少しずつ、のちに「インディラップ」と呼ばれるようになるジャンルの原型が形成されてゆくようになります。この時代のインディのラップはシングル作品が中心なので、本書の「インディ」に特化した「アルバム作品」をリヴューをする上で、選盤はかなり難儀したのですが、よくあるディスクガイドと内容が被っても面白くないと思ったので、クラシックとされるような作品や、結構当時MTVやラジオなどメインストリームメディアで人気を博した作品は、今回あまり掲載していません。

特に悩んだのが、Boot Camp系とかのNYのローカルレーベルの作品だったり(インディだけどみんな知っているもの)、PriorityやRap-A-Lotなどの地方の巨大インディレーベル系の作品でした。正直今振り返ると「あー、あの辺は載せといたほうがよかったかな」なんて思ったりもするのですが、まあ、あの辺は別の本でも追えると思ったので、本章はそれこそ販売元のディスクユニオンさんでセール対象になるような、黎明期のインディラップ像っぽいアルバム作品を中心にご紹介しています。なので、この91〜96の章は、あくまで本の導入的に読んでいただければと思っています。この時代はぶっちゃけると、普通にヒップホップクラシックとされる作品を聴いたほうがいいです(DUさんの営業妨害っぽくなっちゃいますが)。まあそれでも、上掲のFreestyle Fellowshipの1枚目みたいに歴史的にも内容的にも重要な作品もあったりするわけで、そこがまた難しいわけですが。。。

なんで今日に至るまでFreestyle Fellowshipが重要視されているかというと、当時はNWAやなんやで西海岸はギャングスタのイメージ一色になっていたわけです。それはもちろん80年代末のクラックコケインや重火器がストリートを覆い尽くし、急速な治安悪化や犯罪の増加が起こったからですよね。そこでGood LIfeに代表される地域コミュニティの人たちが、「このままだとまずい。地域の若者に希望を与えよう」と思い立って、自分たちで独自に行ったのが、「汚い言葉を言い合わないオープンマイク」というイヴェントだったんです。そしてそのオープンマイクが気づいたら一大ムーヴメントとなって、逆にメインストリームの方にも影響を与えてしまうまでになった、なんて経緯が彼らの作品から振り返ることができます。「インディラップ・アーカイヴ」というタイトルの本で、これを取り上げないわけにはいかないですよね。よって本書の最初の章はFreestyle Fellowshipから始めているのです。メインストリームのオルタナティヴとしてのヒップホップにご興味のある方は、ぜひ彼らの関連作から「もうひとつのヒップホップ史」を振り返ってみてください。次は第2章「最盛期」のご案内の予定です。(次回へ続く)

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