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設計戦略と購買戦略|トヨタ流開発ノウハウ 第4回

近年半導体を含め、多くの電子部材の難入が続いています。原因は半導体需要と供給のバランスが崩れていることにありますが、資本力のある会社による買い占め(必要以上の在庫を抱えてしまっている)も原因の1つでしょう。このような状況の中で今後どのように設計を進めていけばいいのでしょうか。

私は設計戦略と購買戦略の連動が最も重要ではないかと考えております。多くの製造業の設計組織と購買組織の連動は、ほぼ出来ていない状況にある思います。設計が選定した部材の情報を受けて、購買が販売計画から在庫の戦略を立案していくのが通常の組織間の情報連携です。これは設計から購買へのバトンタッチプロセスであり、主導はどちらかと言えば設計にあります。しかし、難入部品を考えると設計が機能やコストを重視し、選定した部品が入手できない可能性もあります。力関係で言えば、半導体のような基幹部品を製造販売しているメーカーが強くなっていっているのです。そのような力関係の変化は今後も続いていくでしょう。この力関係はスマイルカーブで表すことが出来ます。

このように組立産業ではなく、基幹部品など収益が今後は高くなっていくでしょう。基幹部品を購入し、製品をアセンブリするメーカーは基幹部品メーカーの力の方が強く、難入に対して、購入数を増加したとしても、または、購入価格を上げたとしても購入することがより難しくなっていくでしょう。このような状況が今後も続くことを考えると、設計で機能を重視した部品選定は出来なくなる可能性があります。機能を重視した、さまざまな部品の選定が難しくなっていきます。それでは設計と購買でそれぞれの部門がどのように考え、どのように連携していけばいいのでしょうか。

①設計戦略
設計部門は、基幹部品に対して標準で採用する部材を設定します。それには次のような考え方が必要です。

新しい部品を設定し、新しい製品を設計することは誰にでもできる。既存部品を組み合わせて新たな製品、付加価値の高い製品を設計することが設計者に求められる能力である

この考え方に基づき、標準で設定する部材は、幅広い製品に使用可能な状態にします。

製品カテゴリをいくつかに分類し、それぞれのカテゴリで標準の部材を設定していくのです。まさしく、標準化です。その標準化を進めていけば、1つの部材で多くの製品に活用することができます。ただし、注意が必要なのは、基幹部品メーカーが製造を中止してしまうと、多くの製品に使用しているため、製造できなくなってしまうこと。

そこで数年ごとのマイナーチェンジ計画を立案していきます。そのマイナーチェンジ計画に基づき、標準部品を数年毎に設定していくことにより、製造中止(EOL)の対処も可能になるでしょう。

受注生産の企業においては、このマイナーチェンジ計画が少なく、顧客から要求されたタイミングでしか設計の内容を変更しないことが多いでしょう。それでは、上記の設計戦略を実現できません。受注生産の企業であってもマイナーチェンジ計画を立案し、顧客に提案していく必要があります。

②購買戦略
購買戦略は、設計のマイナーチェンジ計画を元に標準部材を選定するための設計の情報を渡します。選定しようとしている標準部材がどのような難入状況なのか、もしくは製造開始から長い年月製造しているのか、入手性がどのような状況なのか、そのような情報を設計部門と連携します。それを元に設定された標準の部材の購入計画、在庫計画を検討していきます。この計画を立案するためには、営業部門との連携も図っていく必要があるでしょう。営業部門から提示される販売計画(顧客のフォーキャストも含めて計画していきます)から、必要数量を導き出し、また安全在庫数量を設定し、購入計画を立案していきます(購買の通常の業務でもあります)。

また、マイナーチェンジ計画時には在庫を使い切ってから、次の標準部材に切り替えていく必要があるため、切替タイミングを含めて購買や生産管理が決定していかなければなりません。このように購買戦略を立案するためには、営業部門、設計部門、生産管理部門などさまざまな部門と情報を共有しながら進めていく必要があるでしょう。

皆さん、いかがでしょうか。今の時代、設計部門と購買部門の連携は必要不可欠です。さらには幅広い製品に活用可能な標準を設定していくことも重要になっているため、今一度、各製品の部品表を比較し、共通化、標準化可能な部材がないかどうかを調査してみてください。その結果、基幹部品メーカーの製造状況に左右されない環境を構築することができるでしょう。

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