いま、「建てる」とは──新しい建築の運動体をつくる

著者:秋吉浩気×佐藤研吾×市川紘司×辻琢磨 現代の群居を考える(仮)

1983年に創刊された伝説的な建築メディア『群居』。当時のメンバーである大野勝彦役を秋吉浩気が、石山修武役を佐藤研吾が、布野修司役を市川紘司が、渡辺豊和役を辻琢磨が務めるかたちで、現代の群居について考える会が2019年2月17日に開催された。

「群居」から考える

秋吉浩気|VUILD みなさんお集まりいただきありがとうございます。今日のイベントは公開打合せというかたちで進めていきます。まずここに集まったみなさんに質問したいのですが、『群居』という雑誌を知っている方は手を挙げてもらえますでしょうか。

(会場挙手)

 うん、少数派ですね。ではみなさん一体何を目的に今日ここに集まったのでしょうか(笑い)。

 このイベントの背景として、『建築雑誌』という日本建築学会が発行している学会誌があり、そこで門脇耕三先生の司会のもと、僕と、今日も来てくださっている布野修司先生とのディスカッションがありました。僕自身は布野先生も『群居』という雑誌も存じ上げていなかったのですが、自分が取り組んでいる建築のデジタルファブリケーションを用いた生産や流通というテーマと、『群居』という雑誌で扱われていたこと──たとえばこの23号の標題を見るかぎりでも「職人工や商品としての住居」とか、「木匠塾」といわれるものづくりのことも含めていろんなテーマが扱われているんですが──、そして今ここに集まっているメンバーにも、共通する問題意識があると思いました。それで「『群居』面白いな」、「こういうものをもう一回、自分たちの時代でもやりたいな」と思いました。

 それで、ただ「やりたい」というだけでFacebookにイベントページを作って、そこにも何の詳細も書かなかったんですけど、『群居』すら知らない人がこれだけ集まってくださって(笑い)、「良いスタートが切れそうかな」と思っているところです。

 今回ひとつの大目的として“メディア(運動体)を作っていく”ということがあります。僕自身も昨年までは『建築雑誌』の編集委員をやらせていただいていたり、『新建築』や『住宅特集』に文章を掲載していただいたりしていますが、学会誌(『建築雑誌』)、企業の広報誌(『TOTO通信』『LIXIL eye』など)、もしくは『新建築』『住宅特集』『GA』といった雑誌以外に、『群居』で扱われていたような建築意匠・空間以外の領域をテーマにしたメディアを、いかに自立的に、収益化も実現し、自分たちで主体的にやっていくかということを考えています。

 その根底にはメディアに対する批評性もあります。今回のイベントは、最終的には文字起こしをして記事化するのですが、その方法をどうやっていくか。その先、書籍化するのかどうするのかっていうのは今後の展開ですが、私たちが今考えているのは、イベント自体は無料で開催して、最終的な記事を販売することです。『群居』でも購読者を募って、このテーマに関係のある購読者によって支えられてきたのかなと思っています。

布野修司|日本大学特任教授 『群居』は会費制。会員のマックスは2,000人でした。だから、経済的には結構いけたんですよ。編集の神様というか、戦後の建築ジャーナリストとして『国際建築』『新建築』『建築』『建築知識』『SD』『都市住宅』『住宅建築』と次々に手掛けてこられた平良敬一さんなんかにいろいろ相談しながらやっていました。購読者は最初からどんどん増えていったんですけど、2,000人くらいで横ばいになった。平良さんには、「これであとは少なくなるだけだぞ」なんて言われたんですが、その通りでした(笑い)。当時の読者は、今でも──まあ僕の世代ですから老兵ですけど、たくさん読んでくれていました──つながっていますよ。有名どころだと宮脇檀さんなんかにも押し売りしましたよ。ただいろいろ難しい問題もありました。在庫の管理なんか、任意団体であることの限界もあった。

秋吉 会費制だったんですか。

布野 会費制です。まあ同人誌的ですね。

市川紘司|明治大学助教 いま建築メディアを考えるうえでマネタイズの問題はとても重要だと思います。たとえば東浩紀さんが主宰しているゲンロンには「友の会」があって、数千人の友の会会員の会費がいろいろな活動を行う基盤になっているようです。『群居』が会員制で2,000人の会員がいたというのはやはりすごいことですね。会費はどれくらいだったんですか。

布野 その『群居』の値段を見てくれるといいけど、季刊だったので4冊分ですね。4号分で5,000円でしたね。

市川 そうすると単純に計算すると年間1,000万円は確保できていたわけですね。

布野 ただし「原稿料は絶対に出せ」っていう方針で、ちょっと細かいところは忘れちゃったけど、今から考えるとすごく安い、誰でも1字1円、400字で400円だったかな。当時、『建築文化』に書くと1,500円ぐらいだったかな。とにかく原稿料は絶対に出すっていう方針でやっていました。

秋吉 というわけで、マネタイズの方法もいろいろ試行錯誤していこうと思っています。今回は4人での打合せで出てきた「note」というオンラインサロン型ブログのサービスで記事を編集して公開して、1本500円という値段で公開していきたいなと考えています。今日ここにきているみなさんは無料で参加していただいて発言もどんどん投げてほしい。そのうえで1か月以内に「note」に記事を公開したいと思っています。だいたい目標として300人に拡散したい。とりあえず15万円で、編集費用とか写真代、辻さんの浜松からの交通費とか。もしくは次回我々が東京以外の場所でこういうイベントをやっていくための渡航費、そして書籍にしていくための費用にプールしていきたい。そういうメディア経営のトライアルも考えています。これまでのところが前段です。

この続きをみるには

この続き:37,334文字/画像16枚

いま、「建てる」とは──新しい建築の運動体をつくる

現代の群居を考える(仮)

500円

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

66

建築

2つのマガジンに含まれています
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。