第1回内科専門医/第231問(血液)/2021

第1回内科専門医試験
2021年度予想

症例は、68歳の女性。
5年前から関節リウマチで週1回のメトトレキサー卜を内服されている。2週間前から左耳閉感を自覚し、咽頭痛も認めるとのことで内科受診となった。
既往歴 : RA,高血圧症
内服歴 : メトトレキサー卜
家族歴、飲酒歴、喫煙歴 : 特記すべき事項なし
現症:血圧134/79mmHg、脈拍81/分整、体温37.3℃、呼吸数14回/分。眼瞼結膜に貧血認めない。上咽頭左側を中心とした腫脹および左中耳に浸出液の貯留を認める。腋窩、鼠径部の表在リンパ節は触知しない。肺野は両側清で、病的心雑音聴取しない。腹部は平坦、軟、腫瘤触知しない。肝脾触知しない。神経学的に異常を認めない。関節の変形はみられない。
血液所見:白血球7500/μL、赤血球369万/μL、Hb12.9g/dL、Hct 36.2%、血小板23.8万/μL、PT-INR 1.04、APTT 32秒。
血液生化学所見:総蛋白 7.8g/dL、Alb 4.4g/dL、総ビリルビン0.8 mg/dL、AST 20U/L、ALT 19U/L、LDH 238 U/L、AMY 60 U/L、BUN 12mg/dL、Cr 0.68mg/dL、空腹時血糖 108mg/dL、Na l42mEq/L、K4.5mEq/L、Cl 108 mEq/L、CRP 0.62 mg/dL、RF 8 1U/mL、抗CCP抗体 205U/mL (基準4.5 U/ mL未満), slL-2R 1282 U/mL (基準 145~519 U/mL)。
上咽頭内視鏡所見、頸部造影CT、PET-CTを示す。
次に行う対応として適切なものを1つ選べ。
a. 経過観察
b. CHOP療法
c. 局所放射線療法
d. メトトレキサートの中止
e. 抗CD20モノクローナル抗体療法

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解答

d
MTX関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)

画像解説

左上、右上は初診時上咽頭内視鏡所見。左耳管隆起周囲から上咽頭正中よりやや対側にまでかかる腫脹を認め、左中耳に浸出液が貯留している。左下は、初診時の造影CT所見で同様に左側を中心とした造影効果を伴う上咽頭の腫脹を認める。右下は、生検直後の PETCT 所見で上咽頭左側に FDG の異常集積を認めた。

試験でのポイント

MTX関連リンパ増殖性疾患は、まずはMTXを中止する。
MTXだけではなく、タクロリムスなどの免疫抑制薬TNF-α阻害薬を中心とする生物学的製剤でもリンパ増殖性疾患の誘発が問題となっている。MTXとともにエタネルセプト(TNF-α阻害薬)も投与されていたのであれば、これも中止すべき薬剤の候補である。

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