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Gファイター出撃!「指揮官」とはどうあるべきか?~機動戦士ガンダム 第23話「マチルダ救出作戦」感想

大破したホワイトベース

ハヤト「その右のやつがそうのはずだけど」
アムロ「・・・駄目だなー」
ハヤト「第2エンジンのコードを使えないかな?」
アムロ「スケールが違うと思うけど」
カイ「早くしてくれよなー。もう紙がなくなっちまうぜー」

前回、マクベの作戦にはまり大破し不時着したホワイトベース。

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現状、ホワイトベースは修理しようにも部品が足りない状態だ。他の機関からパーツを持ってきて代用しようとしているが、うまくいっていない。

アムロやハヤトは修理作業を行なっているが、カイは暇そうだ。その他にも退屈そうにカードゲームをしているクルーが複数いる。

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このクルー達はやることすらなくなってしまったのだろう。それとも「もうホワイトベースはダメだ」と諦めの境地に達してしまったのか。

そうした中をひとり見回るミライ。自分の采配により招いてしまった惨状を目の当たりしにし、険しい表情である。

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頼みはレビルからの補給物資だ。

引継式

ミライ「ブライト、何か?」
ブライト「うん、君に僕の代理をやってもらいたいんでね。その引継ぎだ」
ミライ「指揮官のいない船なんてひどいものだけど、あたしには無理よ」
ブライト「無理はみんな同じだ。僕など、自分の意気地のなさが病気の原因かと思うと情けなくなってくる」
ミライ「そんな」
ブライト「ここに艦長指揮のABCを書いといた。これを見れば・・・」
ミライ「でも、それだけでは」
ブライト「君ならできるよ」
ミライ「・・・ブライト!」
ブライト「やってくれるね?」
ミライ「・・・」
ブライト「僕もすぐによくなる」
ミライ「ええ、やってみるわ」

前回、流れで指揮官役をすることとなったミライ。今回、ブライトから「代理をやってもらいたい」と正式に引き継ぎを受けた。

「やってみるわ」と言いつつ不安そうな顔のミライと「君ならできるよ」と笑顔のブライトの対比が印象的なシーンだ。

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ここでのブライトはなにかつきものが落ちたかのような落ち着いたすがすがしい表情である。肩の荷が降りた安心からの笑顔にも見えるし、不安がるミライを安心させるための虚勢の笑顔のようにも見える。

レビル将軍初登場!

ナレーター「同じ頃、ホワイトベースから補給の要請を受けていた地球連邦軍のレビル将軍は、ヨーロッパ前線基地に到着していた。キシリア将軍が本格的に援軍をマ・クベの基地に送る前にオデッサ作戦を行うためであった。そして、その作戦の前に」

レビル「たとえ戦艦一隻の攻撃といえども、後ろから掛かられればマ・クベとて慌てはしよう」

レビルが初登場だ。これまでマチルダ達のセリフで何度か登場していたレビルだが、ここにきてようやくご本人登場である。

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見た目年齢や髭からして「宇宙戦艦ヤマト」の沖田艦長のイメージを引き継いでいる。

レビルと同時にジオン軍と内通しているエルランも登場した。

今回レビルがエルランのことを「中将」といっているが、前回マクベはエルランのことを「少将」といっていたので、ここは単純ミスであろう。

レビルはオデッサ作戦の遂行のためにヨーロッパ前線基地にやってきている。レビルの隊が正面からマクベの基地を攻撃し、ホワイトベースが後方から攻撃すればマクベに打撃を与えられるはずという読みだ。

レビルはオデッサ作戦の際、ホワイトベースの後方からの攻撃に大きな期待を寄せている。今回の補給要請にも前向きだ。

ガンダムのパワーアップメカ!?

レビル「それともうひとつホワイトベースに届けて欲しい物がある。連中はまたモルモットにされるのかと怒るだろうがな。ガンダムのパワーアップのメカのテストを連中にやらせる」
マチルダ「ガンダムの?」
レビル「これがその目録だ」
マチルダ「はい」
エルラン「レビル大将、部隊編成の決まっていない部隊になぜそんなにまで肩入れをなさるんです?」
レビル「正規軍をテスト台に使えるかね?それにこれは参謀本部の決定でもある」

「ガンダムのパワーアップメカ」が開発され実戦に投入される。もっとも、その内容はこの時点ではまだ明らかではない。

ここでレビルの「正規軍をテスト台に使えるかね?」とのセリフは強烈だ。完全にホワイトベースをモルモット扱いである。

第14話「時間よ、止まれ」で、補給にやってきたマチルダがブライトに対し「モルモットはお嫌?」というシーンがある。

マチルダ「ジオンも似たようなものです。それに、今はホワイトベースはデータ収集が第一の任務になっています」
ブライト「データ集め?」
マチルダ「ええ。プロよりアマチュアの方が面白い作戦を考えるものです。それをコンピューターの記憶バンクから拾いだす」
ブライト「じゃあ、わざと我々を放っておいてモルモットにしている?」
マチルダ「モルモットはお嫌?ブライト少尉」

このときは、マチルダがホワイトベースをモルモット扱いしているのかという推測もしていたが、どうやらモルモット扱いしているのはレビルと参謀本部らしい。

以前、ホワイトベースにマチルダのミデア輸送機を送ったことをめぐってレビルと参謀本部とは対立していた。しかし、今回は「参謀本部の決定でもある」といっている点が地味ながら重要だ。

ホワイトベースを泳がせて実戦データを収集する部分についてはレビルと参謀本部とは連携できるようだ。

セイラ「連邦軍から入電です」
ブライト「なんだと?参謀本部の連絡会議で揉めている」
セイラ「援軍は望めそうもありませんね。マチルダのミデアを寄越した事も問題になってるくらいだから」(第11話「イセリナ、恋のあと」

「ミデア輸送隊をたたけ!」

マクベ「フフ、連邦軍め、しびれを切らしたな。この戦い、先に動いた方が負ける。クリンク、グフ3機、ドダイYS3機でミデア輸送隊を叩け」
クリンク「はっ!」
マクベ「護衛戦闘機もつけてな」
クリンク「はっ!」

ガンダムのパワーアップパーツの情報はエルランからジュダックを通じて早速マクベに届けられた。エルラン、ジュダック、いい働きである。

グフ3機とドダイYS3機、護衛戦闘機で出撃を命じる。

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「ドダイ」はやはりモビルスーツの「土台」だからこの名称なのだろうか。だじゃれ?

前回からグフの大盤振る舞いが止まらない。

マクベの保有する戦力は底知れないと思わせると同時に、ランバ・ラルにこれだけの戦力が与えられていればホワイトベースは落ちていたかも知れないとも思わせるシーンである。

果たして、ホワイトベースはマクベの攻撃を受けるマチルダのミデア輸送隊を守り切り、補給を受けることができるのか。

「しかし妙ですね」

連邦兵「11時の方向に編隊キャッチしました」
マチルダ「あと一息というところで。ジオンか?」
連邦兵「は」
マチルダ「しかし妙ですね。我々の行動を知る者がそんなにいるとは思えないが。各機、対空戦闘用意。このままの戦闘隊形を崩すな。一応、レビル将軍にはSOS信号を」
連邦兵「はっ」

マチルダのミデア輸送隊の前にマクベ隊が現れた。いよいよ戦闘開始である。

マチルダが「しかし妙ですね。我々の行動を知る者が」と違和感を覚えている。エルラン、ジュダックのスパイ行為自体にはまだ気付いていないだろうが、マチルダの聡明さを表現するシーンである。

アムロ発進!

オスカ「ミデア輸送隊からのSOSをキャッチしました」
ミライ「ミデアから?距離は?」
オスカ「北西180キロ」
ミライ 「どうするか?(補給が受けられないとホワイトベースは動けない。ミデアが来てくれなければ)セイラ、ミデア輸送隊を助けましょう」
セイラ「了解。アムロ、カイ、ハヤト、発進してください。マチルダ隊の救出に向かいます」

ミデアからの救助要請に対し、ミライは少し悩んでミデア輸送隊の救援に向かうことを決断。早速セイラが発進を伝える。

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アムロ「・・・マ、マチルダさんが!?」

憧れのマチルダのピンチにアムロが奮起する。この真剣な表情、実にわかりやすい男である。だがそれがいい。

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発進取りやめ!?

ミライ「・・・ね、セイラ、待って、発進は取りやめてちょうだい」
セイラ「なぜです?」
ミライ「ほら、コアファイターもなくなったら動けないホワイトベースは裸同然よ。その隙に敵に襲われたら」
セイラ「アムロ、コアファイターへ。ジョブ・ジョン、ハヤトはガンペリーへ。ガンダムパーツを搭載してください。ガンキャノンはカイ。腹が立つのなら罰してくださっても結構よ」
ミライ「セイラ、あたしはブライトから引継ぎを。いいでしょう・・・」

前回から衝突していたミライとセイラだが、今回も尾を引いている。

ミデア輸送隊を救出するためにアムロ達に一旦出撃を命じたミライだが、すぐにそれを取り消す。アムロ達やガンダムが出払っているところをマクベに狙われることを懸念してのことだ。

しかし、セイラはミライの判断を無視してアムロ達に出撃を命じる。

一旦出した出撃命令を引っ込めるのは現場を不安にさせてしまう。そんなミライの優柔不断な態度を見てセイラは「これではダメだ」と思ったのか。

「罰してくださってもけっこうよ」とまで言われてしまい、ミライも返す言葉がない。

普段ブライトがいかに多くの情報を処理しながら命令を出しているか、指揮官として的確に指示を出すことの難しさ、その命令どおりに部下を動かすことの難しさをミライは痛感しているはずだ。

「ここの方が落ち着くわ」

ミライ「こうなったら、ここに敵のこないのを祈るしかないわね」
セイラ「ミライ、キャプテンシートに座ってらしたら?」
ミライ「ここの方が落着くわ」

出撃するガンペリーをブリッジから見守るミライ。

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ミライは自分の定位置である操舵輪の付近いるが、セイラは「キャプテンシートに座ってらしたら?」と促す。

このシートに座っているとお尻のあたりがむず痒くなってしまうのか、ミライは先ほど一旦出した出撃命令を取り消す際に、早くもキャプテンシートから降りてきていた。

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キャプテン(=指揮官)になりきれないミライの中途半端な気持ちをミライの中途半端な居場所で表現している。

戦闘開始!

連邦兵「マチルダ中尉、5番機が!」
マチルダ「構うな、もっと低空で」
連邦兵「はっ!」

ドダイYSに乗ったグフがすれ違いざまヒートロッドでミデアを急襲、エンジンを撃破!

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陸戦兵器であるグフをドダイに乗せて運用することで、航空機相手にも十分戦える空中戦用兵器となっている。そのことを示す演出だ。

ドップも多数展開しており、このままではガンダムのパワアップメカもろともミデア輸送隊は撃墜されてしまう。

アムロ「お前達にマチルダさんも補給物資もやらせるか」
連邦兵「コアファイターです」
マチルダ「さすが早いわね。」

ミデア輸送隊のピンチにアムロのコアファイターが救援にやってきた。絶妙なタイミングでマチルダの中のアムロ株も爆上がりであろう。

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ミサイルを撃ちまくってグフを撃破。マチルダの前では戦闘機1機でモビルスーツまで撃破できてしまうのか。

アムロ「ミデアと敵の間に入らなければ、マチルダさん達を傷つけてしまう。カ、カイさん、早く来てくれ!弾がなくなる!」

しかし多勢に無勢、徐々に形勢は不利になってきている。後続のガンペリーとガンキャノンはまだ移動中だ。

アムロひとりで持ち堪えられるか!?

「何をやったかで人間の値打ちは決まる。」

ブライト「・・・ミライ、待つだけじゃ駄目だ。修理、修理だ。・・・今のうちにできる所はさせとけ・・・。今そんなものを読んでる暇ないだろう。みんなに・・・(ほ、ほんとだな、リュウ。お前のやり方は利口じゃあなかったかもしれんが、俺達に模範を示してくれた。何をやったかで人間の値打ちは決まる。お前は強い、だからだよ、負けまいと思うのだがな)・・・リ、リュウ。ミライ、自分で判断して行動するんだ」

リュウがコアファイターで特攻するシーンを想起しながらブライトが息も切れ切れにいう。

第21話「激闘は憎しみ深く」で、リュウはガンタンクのキャタピラが故障し立ち往生している様子を見ていてもたってもいられず、病身を押して単独で出撃、コアファイターで特攻しガンダム・ホワイトベースの危機を救った。

今ブライトもリュウと同じ状況にある。過労で倒れ、前線で指揮を取ることはできない。指揮官代理をミライに任せたものの、安心しきれず「それじゃダメだ」とヤキモキしている。

ここでブライトがブリッジに上がってしまったらリュウと同じである。

ブライトが病身を押してブリッジに上がってしまったら、的確な状況分析と行動を取ることができるかもしれない。しかし、それは一時的なものである。場合によってはブライトの回復が遅れ、かえってホワイトベースの危機が長引いてしまうかもしれない。そうなればオデッサ作戦にも間に合わないかもしれない。

ブライトはリュウのことを何度も想起し「ミライ、自分で判断して行動するんだ」と最後は「現場を信頼する」ことにした。リュウとは別の行動に出たのだ。そしてその行動は結果的には正しかった。

ここでブライトがこうした行動に出ることができたのはやはりリュウの行動があったからである。

ブライトが現場を信じ任せることができたのも、リュウの死がバラバラになりつつあったホワイトベースのクルーの心をつなぎ留めたからだ。リュウの存在は未だなお大きい。

その意味で「何をやったかで人間の値打ちは決まる。」というブライトの言葉がかなり重い。リュウは自らの死と引き換えにホワイトベースに結束をもたらしたのだ。そしてそれが今実を結ぼうとしている。

中割れ!?

ジオン兵「5時の方向に敵機キャッチ。データーにない奴です」
クリンク「馬鹿言え、木馬関係のデーターは入れてあるだろう」
ジオン兵「あ、わかりました、中割れです」

コアファイターで孤軍奮闘していたアムロのもとにガンペリーがようやく到着した。いよいよガンダムの出撃である。

ジオン側はガンペリーのことを「中割れ」と呼んでいるようだ。

「中割れ」とは本を開く際に強い力をかけすぎて背表紙の部分までパッカリと割れてしまった状態を指す言葉である。

ブックオフのサイトでその状態になってしまった本の写真を掲載し、修復方法まで紹介している。

ガンペリーからガンダムパーツを射出する際、パッカリと割れる様子から「中割れ」と呼んでいるのだろう。

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ホワイトベースのことは木馬と呼ばれているが、これも特徴をよく掴んだ呼称だ。

余談だが、最近ガンプラのホワイトベースを組み立ててみた。なるほど確かに木馬っぽい。

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このホワイトベース、まだ色を付けておらず今後少しずつ着色していこうと思っているのだが、気が向いたらその様子も記事にしてみたいと思う。

戦闘中に空中換装!

ハヤト「アムロ、こんな所でガンダムに換装するのか?」
アムロ「やるしかないな。コアファイターでグフは叩けない!」
ハヤト「よーし、レーザーサーチャー始動するぞ」
アムロ「了解だ!このっ!」
「レーザーサーチャー発射、シンクロさせるぞ。うっ、グ、グフが!」
クリンク「今だ、戦闘機をやれ。うおおっ!」
アムロ「ああっ!!」
カイ「こいつ、足が遅いからねえ。よう、早いところガンダムになっちゃってよ!」
アムロ「す、すいません、援護頼みます!ミデアの方にもグフがまわってるはずです!」
カイ「わかってるって!」

すっかりお馴染みになってしまった、戦闘中の空中換装。毎回「大丈夫か!?」とか「できるわけないでしょう!」とかぐちぐち言いながらもやってのけてしまうのであまり危機感が感じられない。しかし、今回はそのあたりを丁寧に描いている。

コアファイターが今まさにドッキングを開始しようというタイミングでドダイに乗ったグフが急襲。ドッキングを邪魔する。

このままガンダムに換装できずに終わるのかと思った次の瞬間、これまたいいタイミングでカイのガンキャノンが到着し、コアファイターの危機を救う。

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ミデア隊不時着

アムロ「し、しまった!あれはまさかマチルダさんのじゃ!」

連邦兵「1番機、4番機も、持ちません、先に行ってください」
マチルダ「4番機にはガンダムのパワーアップメカが入っている。編隊を着陸させなさい」
連邦兵「し、しかし、2機だけでも敵を振り切って」
マチルダ「ガンダムのパワーアップメカを捨てる訳にはいきません」

ガンダムの換装中、ミデア1番機と4番機も攻撃を受け墜落しそうだ。ここでマチルダは着陸を指示。

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マチルダの使命はホワイトベースへ補給物資とガンダムのパワーアップメカを送り届けることだ。その目的を達成するために冷静に判断し、指示を出している。何よりパワーアップメカは絶対にホワイトベースに送り届けるという意地のようなものを感じた。

ここは第3話「敵の補給艦を叩け!」で、「ザクをシャアに渡さにゃならんのだ!」と補給部隊の矜持を見せたガデムを想起させるシーンである。

指揮官とはいかにあるべきか?

ミライ「ねえ、セイラ、指揮官ってこんなとき...」

戦力の大部分が出撃してしまい、マクベ隊の攻撃が来ないことを祈るしかないホワイトベース。ミライは不安げにセイラに話しかける。

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しかし、セイラのこの視線。「指揮官はあなた、そんな態度ではダメ」とでもいいたげな表現である。セイラさん...コワイ…。

ミライ「いいえ、なんでもないわ」

ミライもこう言うのが精一杯。しかし、これもセイラがミライに対して意地悪な態度をとっていると考えるのは早計である。ミライに指揮官とはどうあるべきかを自問するよう促していると考えるべきだろう。決してセイラもミライを応援していないわけではないのだ。

そんなとき、マーカーがミライに言う。

マーカー「ミライさん、こんなとき指揮官役っていうのはどっしり構えてくれてた方が安心なんですよ」

ガルマに聞かせてやりたい言葉である。

ガルマ「・・・こ、このような失態を姉上になんと言って報告したらいいのか・・・」
シャア「我々指揮官は最前線で士気を鼓舞しなければな。」(第8話「戦場は荒野」

ミライもガルマほどではないが指揮官としてはまだまだ未熟である。

しかし、ホワイトベースのクルー達はブライトの突然の戦線離脱によって指揮官代理に祭り上げられたミライのことを盛り立てようとしている。

こうしたクルー達の応援を自覚して、ミライも少し自信を取り戻したようだ。

ミライ「あ、セイラ、メカマンに伝えて。第一戦闘配置は中止して修理を続けるようにって」
セイラ「大丈夫かしら?」
ミライ「ええ。敵も戦力が少ないからこんなに時間がかかるのよ。大丈夫、こちらには来ないわ」

さきほどまでの不安がってうろたえていた表情からうって変わって、自信に満ちた表情で修理作業の再開を指示する。「大丈夫かしら?」とのセイラの問いにも「大丈夫」とはっきり言い切る。

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このシーンは指揮官としてミライが成長した瞬間である。

ここでミライが自信に満ちた表情を見せるのは虚勢かもしれないし、内心は不安や動揺でいっぱいかもしれない。しかし、それでもいいのだ。自信満々に指示を出したように見えることが大事なのだ。それだけで現場のクルーは安心できる。頼れる指揮官の絶対条件は部下を不安がらせない振舞いができることである。

動けないガンダム

アムロ「うわっ。グ、グフめ、パワーが次々と上がっていく感じだ。や、やれるか?」

不時着したミデア輸送隊の救助に向かいたいガンダムだが、グフのヒートロッドに捕らえられ身動きができない。

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ここでどういう理屈かはわからないが、ガンダムの左足のあたりで爆発が発生。ガンダムの機動力は大きく減退する。

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しかし、ヨタヨタ歩きながらも、なんとかグフを切り倒すことに成功する。

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アムロ「だ、駄目だ、足の回路がズタズタだ。早くマチルダさんの所へ!あっ!ま、まだいるのか?」

足の回路がやられ動くことすらままならないガンダム。しかし、そこへドダイに乗って新手のグフがやってきた。

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さぁどうなる!?

やさしい嘘

ブライト「ミライ、マチルダ隊は着いたのか?」
ミライ「起きたの?大丈夫です。あと5分ほどで到着予定ですって」
ブライト「・・・そうか、ジオンの包囲網を突破してくれたか。さすが中尉さんになっただけのことはあるな。すまんな、もう少し寝かせてくれ」
ミライ「どうぞ」

ブライトの「マチルダ隊は着いたか」の問いに対し、ミライは「あと5分ほどで到着予定です」と答える。もちろんこれは嘘だ。

ブライトが安心して体を休めることができるようにミライなりの気遣いである。そして、ミライに精神的な余裕ができているということの現れでもある。ミライの成長が著しい。

Gファイター発進!!

アムロ「だ、駄目だ、自由に動くという訳にはいかない。どうする?」

ハヤト「アムロ!!マチルダさんの持ってきたパワーアップメカだ。ガンダムを乗せられる!」
アムロ「よ、よし、やってみる」

グフのヒートロッドで機動力を失ったガンダムだが、そこにこれまた絶妙なタイミングでハヤトの操縦するGファイターが到着。Gファイターに搭乗することでその弱点を見事にカバー。ドダイYSに乗ったグフと対峙する。

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そしてあっさりグフを撃破。戦いは終わった。ガンダムはミデア輸送隊を守り切ったのだ。

ガンダムのパワーアップメカというので何か合体ロボ的な展開を予想していたら上に乗るだけで少々拍子抜けする展開だった。

ただ、Gファイターのすべての性能が明らかになったわけではない。マチルダもラストで「さあ、ガンダムのパワーアップパーツのすべてを見てもらいましょう」と含みを持たせたセリフを言っているので、これで終わるはずはない。今後に期待である。

「あなたにそう言ってもらえると嬉しいわ」

レビル「報告は聞いた。ミライ君、指揮官代理としてよくミデア輸送隊を守ってくれた。礼を言う。では、あとはミデア隊とよく連絡を取ってホワイトベースの修理を急いでくれたまえ」
ミライ「はい、ありがとうございました。・・・つくづく自分が情けなくなるわ」
セイラ「そんな事ないわ、ミライ。よく辛抱したと思う。それに、ブライトを安心させたりもできたじゃない」
ミライ「セイラ、ありがとう。あなたにそう言ってもらえると嬉しいわ」

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戦いが終わり一安心のミライ。無事補給も受けることができたし、レビルからも激励の言葉をもらった。臨時の指揮官としては十分な働きである。

しかし、ミライは「つくづく自分が情けなくなるわ」と反省しきりである。そこにセイラがそっと手を添えながら「そんなことないわ」と優しくいう。これに対してミライも「あなたにそう言ってもらえると嬉しいわ」と答える。

前回と今回と対立するように見えたセイラとミライだが、ここにきて和解である。

ガキどもを手玉に取る大人なマチルダ

マチルダ「あなた達には二度も助けられたことになるわね、アムロ君、ハヤト君」
カイ「ご・・・ごほ、ごほん・・・」
マチルダ「フフ、カイ君もね。今日はあなたが一番つらかったわね」
カイ「え、・・・いやあ、あれくらいおちゃのこさいさいってね」
マチルダ「頼もしいわ、カイ君」
カイ「いやあ、ニャハハハッ」

マチルダの大人の余裕か、ガキどもの扱いに手慣れている感がすごい。

カイの「お茶の子さいさい」とは久しぶりに聞いた言葉だ。

「お茶の子」の「茶の子」とはお茶請け(お茶菓子)の意で、これに丁寧語の「(お)御」をつけたものである。お茶菓子は軽い食べ物であることから、簡単、たやすいの意に転じたものと推測される語である。

そして「さいさい」は俗謡の囃子ことばの「のんこさいさい」の「さいさい」からきたもので、口調を整えるために語尾に付けられたものだ。

要するに「とても簡単なこと」を語調よくいう際に使う言葉である(新明解語源辞典「おちゃのこ【お茶の子】」)。

最近ではあまり聞かなくなってしまった言葉に出会えるのも、昔の作品鑑賞のひとつの楽しみであろう。

第23話の感想

前回に引き続き、ミライがホワイトベースの采配を振るう回であった。前回と違うのは正式にブライトから正式に指揮官の引き継ぎを受けたことである。そして指揮官としてのミライが大きく成長する回でもある。

当初ミライは作戦をころころ変え優柔不断なところを見せてしまったし、終始不安で落ち着かない様子だった。これでは部下は安心して自分の持ち場に専念できない。セイラに至ってはミライの指示を完全に無視してしまっている。

しかし、部下も自分をなんとか盛り立てようと応援してくれていることを認識してからは自信を取り戻し、的確な指示を与えることができるようになっている。

ブライトがリュウのことを思い出し、ミライを信用して任せるシーンも印象的だ。

リュウのあの行動がなければ、ホワイトベースは今回の危機を乗り越えられたであろうか。リュウの残したものはとてつもなく大きいと思わせるシーンである。

さて、次回マチルダがどうやら死んでしまうらしいことが予告でネタばらしされてしまった。

この手のネタばらしは今回が初めてではないのでまぁいいのだが、しかしマチルダが死ぬのはショックである。

おそらく黒い三連星のドム3機との戦闘中に死ぬのだろう。その死に様とマチルダの死を目の当たりにしたアムロの心情に注目して見ていきたい。

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