社会の問題や矛盾に気づき、他者と共に変えていこうとする子どもを育てる
『みんなのねがいでつくる学校』(川地亜弥子解説、奈良教育大学付属小学校、クリエイツかもがわ、2021年)を読む。
みんなのねがいでつくる学校は、“ことば”が大切にされている。この学校では、他者は、ノイズとして無視される対象でも、異質なものとして排除する対象でもない。そうではなくて、自己を問い直す存在として立ち現れくるような、そうした関係やちからを子どもたちに育てていきたいと考えている。そのためには、「わからないもの」をとらえようとする関係が大切であり、「わからないもの」をとらえようとするために必要なちからこそ、ことばの力なのではないかと指摘されれている。わかったつもりには、他者との伝え合いを閉ざしてしまうというのだ。
奈良教育大学付属小学校には、わからないという子どもたちの静かな叫びに気づき、そのすべてに応えようとした教師がいる。体験とことばが結びつき、ことばが豊かに育っていくために、なかまと一緒に心が動く経験をたっぷり保障し、その実感や感動をもとに共感しあう活動がある。はたらきかける相手がいて、ねがいが生まれ自覚されていくプロセスが保障されるプロセスがある。みんなと異なるところが積極的に受けとめられる空間が教室にある。
授業は、お互いのことばや考えに出会いながら学んでいく自己更新の営みである。学校は、子どもを主人公として子ども・保護者・教師のねがいを育て深めていく場所である。そうした学習権を保障していくことで、社会の問題や矛盾に気づき、他者と共に変えていこうとする子どもを育てていこうというのである。
奈良教育大学付属小学校は、“ことば”が人間を形成していく実践に取り組んでいる。
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