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日々読書‐教育実践に深く測りあえるために

坂口恭平『継続するコツ』祥伝社、2022年。

 才能は、自分を判断することばではなくて、人のことを憧れることばです。才能がないと自分で思う人は、自分と誰かを比べています。

 才能がある人は、比べようもない、自分が到達しえない量を継続してきた人でもあります。才能は、継続することでしか示されないというのです。

 では、継続するコツは、何か。

 継続しないのは、めんどくさがりやで、気が進まなくなるからではない。坂口さんは、行為に楽しみを感じてきたことを忘れてしまい、比較が始まり、否定が始まり、手が止まるというメカニズムがあると言います。

  「慣れてしまって喜びを忘れると、それがきっかけとなり、作品の否定(自己否定ではなく、他者否定)が始まります。そして、自分よりすごいと思う人との比較をやめられなくなります。こうなると、傑作=正しいものという思考になり、その形を追いかけるようになり、とても窮屈な制作をしてしまいます。結果、良いものは仕上がらずに、その作品を見て、今度は自己否定が強くなっていますのです。こうなってしまうと、手が止まります。そして、継続できなくなっていくというわけです。」(44・45
 頁)

 作品は、優劣で判断するのではなく、自分が伝えたいことがきちんと書かれているかを吟味するということなのだと思います。

 坂口さんの継続するコツは、①二度と同じことを繰り返さないこと、②嫌になった途端に、全てをやめること、です。やりたいことは、どこまでもやれるが、やらなければならない、となると、すぐにやめたくなる。やりたいという状態をどのように保つかに、工夫がいるというのです。

 坂口さんは、依頼される前にたくさん作品をつくっているので、依頼仕事があると、これまでつくった作品から選んでもらっていると書かれていました。

 私は、坂口さんと異なって、作品がない依頼仕事も受けるので、やらなければならないことをやりたいことに変える作業が必要になります。教えなければならないことを教えたいことにする。素材研究と同じ作業が求められます。と同時に、教えたいことを学びたいことに変える教材研究と同じ作業が求められます。本をつくるということは、研究ではなく、教育の仕事なのだと気づかされました。 


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