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低い音が聞こえない。この難聴とどう付き合ったらいいですか。

 4月1日付の宮崎日日新聞に掲載された「げん先生の悩む前に質問しよう」の記事である。中学校1年生からの質問だった。最後の最後まで言葉を選んだ回答になった。
 
 左耳が生まれつき聞こえにくく、特に低い音が聞こえない。男子の声が低くて聞き取れないことが多いのですね。自分が繰り返し聞き直すのも、相手に手間をとらせて悪いと思ってしまう。あるいは、自分が聞き取れないと、やらないといけないことをやれないから、相手に申し訳ないと思ってしまう。「あれ?どうしてやってくれないんだろう?」と相手に思われる自分もイヤだ、とお聴きしました。でも、私には、相手の負担や気持ちを想像するあなたのやさしさがあなた自身を責めているようにも思えます。

「やらないといけないことをあなたがやれていない」と、自分に非があると決めつけていませんか?あなたはやらないといけないことが共有できたならば、責任をもってやりとげる人ではないのですか?意思疎通がうまくいかなかったとき互いに何ができるかを考え合える相手とならば、コミュケーションは成立していきます。やらないといけないことを共有するために工夫する必要があるのは、あなただけではありません。

 問題は、あなたが相手を想う気遣いは、相手には伝わっていないという点です。

 コミュニケーションは、一往復半以上のやりとりのなかで成立していきます。たとえば、「聞き直す」という行為は、「えっ?」「何?」とつぶやくだけでなく、「もう一度、言ってくれますか」とか「ゆっくり話してくれますか」とか、相手に要求をしていますか。あるいは、繰り返し話してくれた相手が話し方を変えていたとき、「ありがとう。聴きやすかった」とか「伝わった。うれしい」とか、気持ちを相手に伝えていますか。相手への要求は、相手の存在を尊重する行為でもあり、生活の中で感じる困難は、周囲の対応によっても変わってくるものです。

 難聴とどう付き合っていくのかというより、聞こえることが前提のコミュニティにどのように参加するのかを考える必要があります。自分自身を偽りなく正直にさらけ出せる味方を見つけることから始めるのが、定石です。さらに、あなたには、人の役に立ちたいという想いが根底にあります。やらないといけないことを相手にしてほしいと言われる前に取り組んでみたり、相手にとって意味があることを相手にしてほしいと言われた方法以外にも取り組んでみたりしてはどうでしょうか。相手をよく観察し、相手の潜在的なニーズを発見できるようになれるといいですね。

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