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新たな10番

WEリーグ初年度終了後の6月1日、WEリーグ優秀選手賞に27選手がノミネートされた。
「監督および選手による投票結果をもとに」という若干含みのある書き方だが、GKが1名だけだったり、8位以下のチームからはノミネートゼロだったり、初年度にしてはかなり極端な選出に見える中、AC長野パルセイロレディースからは、キャプテンのDF五嶋京香選手と、副キャプテンのMF瀧澤千聖選手がノミネートされた。


パルセイロレディースの10番

AC長野パルセイロレディースというチームは、10番を背負う選手がいない時期があった。
2014年入団から10番を背負った横山久美選手が2017年途中にドイツの1.FFCフランクフルトにレンタル移籍した時から、翌年復帰するまでの間。
そして、2019年に2部降格が決まり横山選手が海外移籍した次のシーズン。2020年は10番不在のまま、2部での1シーズン(5位)を終えた。
2021年秋からは、プロリーグであるWEリーグへの参戦。新たな船出となるチームの10番を背負ったのは、地元長野県(岡谷市)出身の、瀧澤千聖選手だった。
サポーターの中でも、次に10番を着けるとすれば千聖選手だろうという声は多かった気がする。若いチームの象徴、女子サッカーが盛んではなかった長野県で本田監督が見出した才能(初めて出会った時のエピソードは、本田監督が良くネタにしていました笑)、世代別代表の常連(コロナでU20女子ワールドカップが流れてしまったのが凄く残念)。そして中盤。条件は揃っていた。

開幕前の課題

WEリーグ開幕前、瀧澤千聖選手本人はシーズン目標に「5得点5アシスト」を掲げていた。

数字的な目標も重要だが、この目標には、味方の得点をアシストしつつ、自らもゴールを奪える選手になるという決意表明だったと思う。瀧澤千聖選手の2019年入団からのリーグ戦での2年間は、

  • 2019シーズン 10試合812分出場、0得点0アシスト

  • 2020シーズン 17試合1,294分出場、1得点3アシスト

という数字が残っている。
蛇足だが、2019シーズンにはリーグカップで2アシストしていて、全公式戦で見ると2年間で1得点5アシスト。トップリーグで戦うプロチームの攻撃の中心と言うには、このままだと少々物足りない数字。しかも全てアウェーで記録したもの。自身の得点力、そして地元である長野Uスタジアムで歓喜の中心となることが、チーム在籍3年目、プロリーグ1年目で10番を背負う瀧澤千聖選手の具体的な目標となった。

それを踏まえて、今シーズンのAC長野パルセイロレディースの攻撃を振り返って、瀧澤千聖選手の貢献を見てみたい。以下に全ての得点動画を貼っている。新潟戦のみ、FK獲得の場面も欲しかったので試合動画、他はダイジェスト動画。それぞれの動画の下に、得点までの流れを記載。
長野の得点は15。リーグ全体で少ない方から3番目。20試合中12試合が無得点と正直攻撃力では他チームに見劣りしたが、その少ないゴールは劇的なものがかなり多い。そしてホームでは3勝4分け3敗。ホームで負け越さなかったのは3シーズンぶり(2018年が3勝3分け3敗。2017年は降格争いに加わっていたがホームでは5勝1分け3敗)となった。

2021-2022シーズン全得点

6スローイン→19ヘディング→15ドリブルパス→10シュート

2ロングパス→10ドリブルパス→(相手)→11シュート

6チェック→11パス→16パス→10パス→29ドリブルシュート

15チェック、シュート

?ロングパス→(相手)→14パス→10シュート

15パス→7パス→3ヘディング

10ドリブルパス→29パス→14被ファウル→3直接FK

3クリア→19ヘディング→14パス→10ドリブルシュート

25ドリブルパス→2パス→10ヘディング→25シュート

6コーナー→2ヘディング→(相手)→3ヘディング

18パス→10ドリブルシュート

10ドリブルパス→25パス→2パス→(オウンゴール)

6ショートコーナー→10クロス→25ボレーシュート

25パス→10ドリブルパス→25シュート

3フリーキック→15ヘディング→10ヘディング→11ヘディング

瀧澤千聖選手の成長

今シーズンの瀧澤千聖選手のWEリーグ初年度成績は、
・2021-22 20試合(フル)1,647分出場、4得点5アシスト
目標には僅かに届かなかったものの、数値目標はほぼ達成とも言える。個人的には、浦和戦のゴールが一番成長が見えた気がする。前年までの千聖選手であればあの角度から左足でゴールとは想像できないし、そもそもシュートという選択肢がなかったかもしれない。
開幕戦の1得点1アシスト(アシストは付かなかったけど、三谷選手の得点の前、右サイドでの競り合いからの切り返しクロスも見事)から始まり、ホーム広島戦の大逆転ゴールなど、長野の攻撃の中心は間違いなく瀧澤千聖選手だった。アシストの前や、広島戦のFK獲得前のドリブルなども合わせると、全15得点の内12得点が瀧澤千聖選手の関与したプレーで生まれていることになる。
次のシーズン、相手の警戒が強くなる瀧澤千聖選手がそれでも得点にアシストに獅子奮迅の活躍を見せるのか、瀧澤莉央選手や川船暁海選手、ケガから戻ってくるであろう中村恵実選手が得点源として台頭するのか、或いは新戦力が・・・。その辺はまたチームでの話。
とにかく、瀧澤千聖選手は良くなった。そしてもっと良くなる。


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