【初記事】『バチェラー・ジャパン』からの『源氏物語』【今度こそ読む】

そうだ源氏物語、読もう。
あれは、いつもいつの日か読みたくて、なのに手にとればいつだって早々と挫折してきた頂き。それでも今ならーー。

・Amazonプライム会費が値上がりしたのでオリジナルコンテンツを観ることにした。

前年よりも値上がりしたAmazonプライムの年会費が口座から引き落とされた月、通勤電車の広告画面では『バチェラー・ジャパン』の宣伝がかかっていた。宣伝の中の視聴者は、番組を観ながら身を捩らせるほど心ときめいたり歯軋りするほど悔しがったりしていた。

これだ。そのようにドキドキハラハラするのであれば、会費分の回収のみならずストレス発散効果さえもが期待できるではないか。そしてシーズン1をコンプリートした。

・バチェラーの存在感は光源氏のそれに似ている

恋愛リアリティ婚活サバイバル『バチェラージャパン シーズン1』で、20名余りの女性と、女子の夢全部詰まってるって感じの趣向を凝らした豪華な余暇を過ごし、爽やかな笑顔と受容的態度で恋愛っぽいコミュニケーションを渡り歩き、全てを持つただ一人の男性のように描かれるバチェラーは、ほぼ光源氏だった。

といっても、この時点では『源氏物語』を読んだことはなかった。正確には、いつもいつか読みたくて、何度トライしてもいつだって、光源氏が恋愛依存のメンヘラに見えて挫折することを繰り返していた。

「須磨」あたりで挫折するひとが多いことから「須磨源氏」などと言われることもあるようだけど、もっと前の段階、末摘花のブサイクさを光が笑う場面とか、あるいはもう少し読める時で六条御息所が生霊となって葵にアタックするところくらいまでで終わってしまっていた。あるいは、亡き藤壺を求めて若紫をさらってくる場面にドン引きして、漫画本をそっと閉じたりしてきた。

・わたしの推しメンはMとY。いずれ落とされると予想しながら応援してた。

最初の、誰が誰だか分からない頃は、バチェラー争奪を通じて涙する女の子たちを観るとなんだか私までイライラしちゃって、会費回収のためとは言え、もう観るの止めようかな、きっと私はハーレムものが無理なんだ、このことが分かっただけでも十分な収穫かもしれない。そんなことを思いながら家事の片手間に動画を流し続けていた。いま思えば時間や通信費の無駄のような気もするけど、その時はどうしても値上がり分を回収したかったのだ。

そんな怠惰な視聴者でも何度目かのローズセレモニーの頃には、女の子たちの名前と顔とキャラクターが一致し、そうなればそれぞれが異なる感じに可愛らしく、同時にそれぞれの毒をその内面に宿らせていく二面性の描写に、気がついたら興味を持てていた。

たぶん最後に残るのはあの子で、わたしの推しのYやMは良いとこまで行って、落とされちゃうなあ、番組的にはそうなるのが順当でしょう。でも構わない、その瞬間まで応援するからね。あなたたちの涙や撮られたくないかもしれない悔しがる顔さえも、きっと愛おしいから。

・だから今度こそ『源氏物語』をゼロから、最初から最後まで読む。

あ、そうか。このやり方は、ハーレムものを楽しむ態度として最高に望ましいものではないかもしれないけど、苦手意識を持っているハーレムものを完走するためにとれる次善の策となるのではないか。これなら、いつも挫折していた『源氏物語』も、女の子たちに注目するっていう態度で読めるかもしれない。

そうだ源氏物語、読もう。


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