髪を切ったら、色好みの必要性が頭をよぎった。~源氏物語を読む素人の雑談~
◆◆秋だし髪とか切ってみる
髪を触るのは、
どちらかと言えばメンドクサイ。
多くて太くて硬めのうねる黒髪。理想とは違う髪質。
呼吸やそよ風を敏感にキャッチするたびにたやすく震えるような、毛先がぼうっと溶けてゆくような、消えそうで儚げな、そんな髪のひとに生まれたかった。綿毛でもしっとりとしたストレートでも。ハゲそうって意味じゃない。
縮毛矯正とかも結構やるけど、あれはあれで一年中貞子かアダムス・ファミリーのひとみたいになって窮屈なのです。
で、1年のうちのほぼ毎日を、結べるから困らないけどブルーで心踊らない髪で過ごすんです。そんなの悪夢じゃないですか。
私は悪夢から抜け出したい。
一年の計は元旦にあり。
今年の正月に考えた。とりあえず、コンスタントに美容院に行こう。美容院に行って少なくとも3週間くらいはスタイリングごきげんでいられるはず。
まあ、行くのは2ヶ月おきくらいにしたいけど。ともかくこの計画を実行するだけで、1年のうち半分近くまで、よい髪型でいられる……筈だった。
でも、なんか、素敵なときは短いのだった。
おっかしーなー。
わたし、髪がカッコいいほうの1年が欲しくて、予約取って通ってるんじゃなかったっけ?
スタイリングに費やす情熱は省エネモード。でも、髪がよかったら嬉しい。
気の合ってた担当さんは産休&育休らしい。
その日の担当は、サブで入ってくれたことはあるけどカットをしてくれるのは初めての美容師さん。そんなひとに言うべきではないかもだけど無茶を承知でリクエストする。
「正直、スタイリングとかメンドクサイんですよ。
夏は扇風機で乾かしてたけど秋になればドライヤー使って乾かすのはできる。ブラシ使ってカールとかは無理。夜のアイロンは楽しい。朝は早いから家電品使えない。
長さはどうでもいい。ゴムとかピンとかでアレンジして可愛い女の子って好きだけど、それは諦める。とりあえず夏で傷んだし切ろう。結べる長さとかも、別にどうでもいい。
朝起きて手ぐしして、スタイリング剤をパパパーッとつけたら、毎日カッコいい、そーゆーの、お願いします」
というか、だいたい、そう言ってる。
で、反応は2つに分かれる。
言語化できていない要求を明確にして共有しようとするひと。
じゃあ、どんなふうにしようかな? と案出ししてくれるひと。
こないだ担当してくれたひとは、後者で、切り終わって鏡で見たらカッコいいし、毎日もラクだし、スタイリング剤で質感変わるし、なかなか楽しい仕上がりだった。
こういう感じで接してくれるのは、私の僅かな経験則からすると美容師さんの1/5~1/3くらいで居ると思う。
問題は1度かっこよくなったあとだ。
ここで、わたしはだいたい欲を出す。ゆるふわな感じでアレンジできるのが好きだと。長さはクリアできても、髪質も雰囲気もそんなんじゃないのに。でも、1度よかったから、と大きすぎる夢を見てしまう。
だって、美容師さんって絶対、長さどうします? って訊くんですもん。訊かれりゃ、同じ髪型でいるのも飽きるし、伸ばす方向で、って言うじゃん。それでほぼ一年中、伸ばしかけの厄介な時期になる。
もう、次からは「いつものやつ」ってオーダーで行こうかな。伸びた分を、切っておくれよ、って。
◆◆◆色好みは時々人生の役に立つ。他のことと同じように。
結べる長さとかで切ってると、だいたい結んでばっかになって、髪切った実感が無い。
今回はだいぶ切ってもらって、リフレッシュした感がある。
暮らしのなかにこういう変化が無いと、わたしはシンドイ。
何にだって飽きる。ずっと同じなのって無理。
それなのに、同じ場所に同じメンバーで10年以上も住んで、同じ会社で似たような仕事を10年以上してる。
あー、引っ越ししたい。諸事情により無理だけど。エキチカで、古民家で、でも状態はすこぶるよくって、庭も広くて、樹齢が凄い欅がある、みたいなとこに住みたい。仕事変えるとか、サードプレイスを変えるとかでもいい。
分散勤務には、新鮮味があって良かった。時間も部署もシャッフルして、今まで見えてなかった部署のひとが同じフロアにいるようになって。
何か変えていかないと、自分のなかのどこかが死ぬ。それなのに、こんなに長く、少しずつ息苦しくなってく世界に引きこもってる。
あー……。
昔はなあ、こういうとき、デートする相手とか変えてたよなあ。
気がつけば鞄のなかに溜まっている名刺。雨の続いた頃、新しいひとにアクセスしてみる。手軽な新機軸って、それくらいだと思ってたんだよね。それだし生身の人間には予測不能なところがあって新鮮な喜びを与えてくれる。
それも、今は昔。うーん。
源氏物語のことを思い出す。
あのひとたちも、都で暮らしてる自体が自粛みたいなモンなんじゃないのかなあ。
それで物忌みだとか行動が制限されるのも、ロックダウンみたいだよね。得体のしれない見えないものに振り回される。
でも、あのひとたち、スマホとかないし、Kindleに本をダウンロードとかできないし、夜は長いし暗いし、あの世界には魑魅魍魎はリアルにいそうだし、閉塞感ハンパないんじゃないのかなあ。
そんな想像をしたら、色好みは価値観だとはいうけど、腐らずにこの世界に居続けるためにも需要あったんじゃないかと思えた。
あ~あ、こんなイマジネーション、当たってるかどうか知らないけど。私にとっては、こういう妄想も源氏物語を読むうちです。
息苦しさも、本を読むのに役に立つ。
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