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マンガ5本選んだので、私がどういう人か言い当ててくださいますか。

推しマンガ5本あげるお題、乗ります。
こういうのは結論から行きましょう。順不同。ランキングではないです。

南くんの恋人 / あしたのジョー / あさきゆめみし / 草子ブックガイド / ゴーダ哲学堂

5冊横並びにする画像は、なんでか作れなかった。貼りたかったけど、ごめんなさい。

では以下、各作品に愛あるコメントをつけていきます。よろしかったら、おつきあいくださいませ。

南くんの恋人

地味な雰囲気に描かれつつも自分のペースで日々を楽しんでいる高校生、南くん。恋人だっている。身長15cmのエロかわいい女の子、ちよみ。前は普通の大きさだったのが、なぜか小さくなってしまった。その理由は明かされない。

小さくなったときに南くんの家の猫に運ばれて連れてこられて以来、家に帰るよりも南くんのところにいることを選んだちよみ。親のもとに帰るなり研究者に解明してもらうなりするのが妥当なのかもしれないけど。普通に高校生活を送りつつも、そんな恋人を愛しくケアする。

ときどき読み返すけど、どういう角度で読めばいいのか何べん読んでも分からない。

ちいさなエロかわいい恋人との奇妙ながらも愉快な生活というファンタジーなのか。

困難な現実を受け入れることの道程なのか。その速度には個人差があるという自由度なのか。

本当は、ちよみはイマジナリーフレンドなのかと思ったりもする(だとしたら小さな恋人は彼の精神的危機を乗り越えるために必要な天使だったのかな)。実際、漫画の中の社会では彼はそんなふうに見られてもいる。

あとがきを読むと、すべてがまた違ったように蘇ってくる。南くんの容姿さえも、あとがきに書かれたことの影響を受けてると思える。作品がひとつの思考実験に見えてきて、そこにも苦しさもあるんだけど、そういう思考実験があったということが読み手にとってひとつの癒しにもなりうるのではないかと思ったり。

一度した読みとは、月とすっぽんほど違う読みを、同じ作品で何度でもできるのかという感動を教えてくれた作品です。

あしたのジョー

一時期、漫画喫茶に通っていた。場所代を払えばコミで飲めるドリンクもあるし夢のような点数の漫画もガンガンためし読みできる。コスパ最高すぎてシアワセ、と実感してた気がする。その後忙しくなって行けなくなってしまったけど。

席を取って、その日のターゲットを捕獲してくる。何が面白いかわからないから、取り敢えず色々読んでみることにしていた。お、これ、有名なやつだ。この漫画の登場人物のお葬式だかお別れの会だが、とても大きな会場で行われた、という熱狂的な逸話がある。読むべし。合わなそうなら戻すべし。

出だしっから、驚いた。泪橋って地名から、なんとなく関西が舞台の漫画だと思っていたのに、東京なんですよ。

戦後の復興を象徴するような都心が一面に描かれて、東京タワーも高く高くそびえてて、でも同じ東京の片隅にはまだまだボロ家というか数百円で泊まれる宿屋が立ち並び道路も舗装されてないような地域がある。実際、開発が進んだことばかりが喧伝されてても、ちょっと外れれば、こんな感じだったのかもなあ。ここまではナレーションと風音はあるけれど声のない坦々とした雰囲気です。

そこに、目のキラキラした、薄汚れた見た目の、旅の男の子がピンで歩いてくる。一見、ひとの気配のしない通りです。実は宿にこもってるんですがね。「しけた所らしいな」と男の子も言います。それで、歩くうちに公園に出たら「しゃれてるじゃねえか」なんて言うんですよ。しゃれてる、そんな言葉が絶対出てこなさそうな雰囲気だったんですけどねえ。この男の子がジョーですよ。矢吹ジョー。ほんとうに、男の子、っていう感じの幼さの残るお顔立ちなんです。

ここからは賑々しくなります。丹下段平との拳の喧嘩、チビッ子軍団との多勢に無勢のやり合い、チンピラ三人組もやっつけちゃう。いいネェ、強いヒーロー。ところがこの奴が十円も持たないようなホントの文無し。宿屋の土間にも泊めてもらえなくて弱っちまいます。この辺は、ほんとうにテンポがよくて、引き込まれます。みんなメリハリきいた表情してますしね。

というか、冒頭を読む喜びについて書きましたが、全然話が進んでいませんね。

そろそろ、まとめましょう。

わたしのイチオシする、ここに注目して読んで欲しいポイントは、ジョーの表情に現れる色気の移り変わりです。おそらく彼は十代で、実際どんどん顔が変わっていく年頃です。それなのでどんどん変わるのも当然なんですが、ほんとうにストイックな色気が滲み出てくるんで、その辺を楽しく眺められてみてはいかがでしょうか。

あさきゆめみし

ここnoteでは、源氏物語を読んでいます。実は前段階として全体像をざっくり把握したくて幾つかのアレンジを読んであります。そのなかのひとつです。

源氏物語はいつもいつの日か読みたくて、トライするも挫折すること十数回。あさきゆめみしだって、ごく最初のころにも当然読んでます。で、そのころは、やっぱダメでした。

時代劇を見ないせいか、漫画の中のひとたちも着物を着てたらそれだけでみんな同じお顔に見えるんだよね。と思っていたのです。

ですが、今回は、あさきを読む前に既に国語便覧で全体のあらすじを押さえちゃったんです。着物とロングヘアで統一されてる姫たちも、話の流れの中のどれくらいのところに今いるって分かったら区別つくんじゃないかと期待して。ほんと、挫折しないためのルートを探す、っていうところに今回は意欲を注いでます。

あさき前の準備段階で解ったのは、実際問題、けっこうみんな同じ顔っぽいということでした。桐壺(生みの親)と藤壺(育ての親)はよく似てるし、藤壺と光源氏も似てるって桐壺帝(父親)も言う。それだし、藤壺と若紫(誘拐したのちに夫婦に)も似てる、と。美人はみんな似てる論か。

という訳で、みんな同じお顔に見える、のは当然なのでした。むしろそれでこそ忠実というか。

山川の日本史資料集を見る前にあさきゆめみしを読みましたが、建物とかインテリアの知識がなくても明確にイメージわくので、ありがたかったです。ほんとうに。

まとめると、国語便覧であらすじを確認 → あさきゆめみし → 漫画で見たものの名前を山川の日本史資料集で確認 の順でした。

あさきのあとに現代語訳などを読んで、あの印象的な場面は原作にないアレンジだったんだなあ、など事後的に知るのもまた面白いもんですよ。源氏物語、一緒に読みましょう!

草子ブックガイド

1冊たった数百円、全3巻揃えても2000円とちょっと。憧れのひとが読んでいたとか、誰か大切なひとに戴いたとか、サイン会に初めて行ったとか、そんな特別なエピソードなんてない。男性向け週刊漫画雑誌で見かけて気に入って単行本になったら自分で買った。通常運転の出会い。でも、宝物です。

先ずは絵に注目していただきたい。墨一色で濃淡が表現される手描きの絵、描くの、時間掛かりそうだなあ。1ページあたりの描きこみ時間を考えると目が眩む。ふわっと軽い紙の本の中に丁寧な時間が凝縮されてる。その尊さ。

ストーリーとしては、居場所の無いシビアな状況に暮らす内気な女子中学生が古書店の本を読んでブックガイドという感想を書く。読み切りシリーズ。

生活パートと感想パートのメリハリに、そうだね、本を読むのって生命が蘇るようなことだったよね、と思う。草子ちゃんの感想には躍動感がある。コスプレもある。閉塞感のある日常と対比するように読書のイメージは遠くまで拡がっていく。いいなあ、わたしもあんなふうに本を読みたい、と思ったりもする。

本を読む喜びはシビアな人生を生き抜く糧になるのか。本を読むことは自分を読むことにも似ている。本を読む態度と人生を読む態度は連動する。

舞台となった西荻窪の雰囲気も出てるのかなあ。行ったことないけど、いつか歩いてみたいエリアのひとつです。

ゴーダ哲学堂

業田良家さんの作品は色々読んでいて、どれをあげるか悩んだ。『自虐の詩』の薄幸というアイデンティティがどうでもよくなってからの怒濤のラスト。『百人物語』の可愛らしい絵柄のヘンなひとたちの日常が与えてくれるなごみ。『詩人ケン』のやるせなさ。『ロボット小雪』の健気と豪気。

今回選んだのはこの一冊。ゴーダ哲学堂は読み切りシリーズものです。そのなかのひとつ、空気人形は実写映画化されました。その他にもキャラ被りの少ない多彩な読み切りが満天の星のように煌めいています。

価値とは何か? そう問いかけてくる。別に作中に「どうですか?」という問いは無いのだけど、この基準はどうかと、時に素敵に時にシュールに傾いた世界を見せてくれる。

慰められない。いつもよく分からない。でも惹かれる。ここに描かれる各種の世界と私に見えてる世界とを、同じ座標にプロットしたい。そしたら、別の角度からもそれぞれの世界を眺められるから。いや、まあ、そんな戯れよりも、大事なことの大事さをちゃんと知るほうが先決かな。

わからない、が少しわかる、に変わるときに、世界が少し広がる。そのときに、大事なひとをより大事にできる。

あるいは。分からないカオス。なにも分からなくなったとき、毎日空を巡る月を私はいつも探していた。形と位置をずらしながら東から西へと滑るのを繰り返す月の姿は秩序を連想させて私を落ち着かせた。そんな月のように、業田作品を読んでいるのかもしれない。

最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。あなたのお好きな作品はありましたか? なんかイイな、と思っていただけましたら、スキ、フォローお願いします。

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