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ダボス会議に寄せて

 小田玄紀です

 来週1月16日から20日まで世界経済フォーラムの年次総会であるダボス会議が開催されます。新型コロナウイルスの影響でリアルでの開催は暫く行われておらず、昨年5月に久しぶりに開催がされましたが、今年は3年振りとなる定例の冬のダボス会議になります。

 政治・経済・宗教・NPO/社会起業家・メディア・学者など様々な業界のリーダーが集まり、組織としての意見だけでなく個人として社会問題の解決のために何が出来るかを議論するのがダボス会議の当初からの理念です。当初の理念通りに全てが出来ている訳ではないものの、ここに集う人の多くが社会問題の解決のために貢献したいという思いを持っていることは事実です。

  ダボス会議に先立ち、世界経済フォーラムとして2023年のグローバルリスクレポートを公表しました。

 英語になりますが、上記からダウンロードをすることが出来ます。昨年のNoteにも書きましたが、2022年のダボス会議では大きなテーマとしては以下の6つが課題提起されました。

1) Food Security
2) Enegy Security
3)Economic Growth(特にインフレ対策)
4)Covid-19
5)Climate Change
6)Geopolitics

 詳細については昨年のNote(2022年の振り返り)に記載しているので割愛をしますが、今回公表されたグローバルリスクレポートもここでの文脈を踏襲したものとなっています。

 世界経済フォーラムが政治家・経営者・市民セクターなどの関係者1200人程度にアンケートを行い(私も回答をさせて頂きました)、集計・分析されたものがこのレポートになっています。

 今回のレポートでは短期的課題と中長期的課題の2つに大きく分けられています。短期的課題はここ直近2カ年程度で何がより深刻な問題か、中長期的課題はこれから10年で何がより深刻な課題かを回答しています。

 結論、短期的な課題としては多くの国でインフレが最大のイシューとしてあげていました。エネルギーコストに加えて食糧コストなど大きく上昇しています。これは今後も一定期間は継続するリスクがあり、このレポートでは「Food and energy have become weaponized」とまで書かれています。今後、エネルギー資源や食糧資源を確保することが各国の最重要イシューになってくる可能性があります。

 そして、短期的課題で3位に挙げられているGeopoliticsつまり地政学ですが、これも極めて重要なテーマにこれからなってきます。経済的関係や軍事的同盟関係だけでなく、地政学的な関係がこれから政治・経済に大きな影響を与えてくることになります。

 中長期的課題は引き続き環境問題が大きなテーマになっています。これについては人類存続のためにも国や企業という枠組みを超えて課題解決に向けた取組みをしていくべきイシューであることは間違いありません。特に直近のエネルギー問題においてはCO2フリーの観点よりもまずは電力安定供給が優先されることになったため、また、ロシア・ウクライナ問題による兵器使用などにより一時的に環境問題がされに悪化してしまうリスクがあります。

 他方で、昨年のコラムにても紹介したように今後は核融合技術などが仮に実用化されることで、エネルギー問題そして環境問題などは解決または大きく前進する可能性はあります。

 幸いにも、課題認識されているイシューについて、いくつかの解決策は導き出せる状況になってきているため、多くの叡智を集めて、どのように・いつまでに解決をしていくのかということをコミットしていくことが何よりも重要だと考えています。

 なお、今回のグローバルリスクレポートではそれぞれの国が認識しているイシューも掲載されています。日本の場合は上記のような課題認識とのことです。島国であり、中国とアメリカの間に位置する日本がこれからどのような役割を世界で果たしていくべきなのかがこれまで以上に重要になってきます。

 ちなみに、今回は世界経済フォーラムとして取りまとめたグローバルリスクレポートでしたが、それぞれの国の状況を可視化して分かりやすく分析するツールはいくつかあります。

 上記のAtlasは2020年までの各国の貿易や経済のデータを抽出し、分かりやすいようにグラフ化するツールです。上記のURLから Country Profilesというところで国名を入力すると各国の貿易収支状況などが出てきます。

 これが日本の2020年の貿易収支ですがICTに加えて自動車関連がやはり日本の産業には大きな位置を占めていることが分かります。

 2020年時点ではまだ世界4位の貿易収支ですが、確実にシェアが下がっていることが分かります。

 これは中国の分析結果です。電子機器がやはり強いことが分かります。

 そしてこれがインドです。これからインドが中国のように精密機器の取扱も増えていけば、より経済成長を実現していくことになる可能性があります。
 
 経済と政治・生活は両輪のため、客観的なFACTデータからこれからの社会情勢を考えていくことも出来るため、分析に活用できるツールを紹介させて頂きました。

 明後日から開催されるダボス会議を踏まえて、これからどのような取組みが行われていくのか、非常に楽しみです。なお、個人的には世界経済フォーラムとしてのメタバースが今回のダボスで紹介される予定ですので、この点も注目をしています。

 これからの時代、まだ認識されていない課題が出てくる可能性もありますが、それでも社会を良くしていきたいと思い行動をする人達は多くいます。私自身もどのような貢献が出来るのか、改めて考えてみます。

 2023年1月14日 小田玄紀

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