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植物を育てる(2)by立花吉茂

種子をまく前に
 集めた種子が、短命なものはすぐにまかないと死んでしまうので、調整洗浄、乾燥(または湿気を含ませ)して苗床にまく。調整が意外に面倒な仕事であり、きれいな種子だけにするのは案外手間がかかる。
 栽培植物の種子は、適当な温度、適当な水分、適当な空気、適当な光、の4条件がそろえば短期間のうちに発芽する。しかし、野生の植物の種子は栽培植物の種子と違って、まいたらすぐに発芽するというわけではない。硬実、休眠、後熟などの性質があって発芽に日数を要し、場合によっては2~3年かかることもある。これは植物の生き残り作戦のためであるが、われわれ人間サイドからは不都合である。水やりや草取りなど長期にわたって管理せねばならないから、早く生えてほしい。そこで、事前に前処理をおこなうのである。前処理には目的の植物の種子がどのタイプに属するかを知らねばならない(図参照)。


 硬実性種子なら①種子に傷をつけるか、②薬品処理をするか、③熱湯処理をおこなうか、が必要である。もし休眠性の種子なら、休眠打破の処理が必要になる。それには、①低温処理をするか、②ホルモン処理をおこなわねばならない。もしも、後熟性の種子なら何らかの方法で後熟が終わるまで貯蔵せねばならない。
 
硬実性種子
 硬実種子は図のような乾果のものであり、熟すると水分の少ない莢やカプセルの中から種子が出てくる。なかには藤の種子のように硬い莢が熟すると、突然パチンと音がして遠くへはじき飛ばされるものもある。このようなものは、後熟させているうちに種子がどこかへ消えてしまうようなことが起こる。水分の多い果肉の中に入っているものは多くは休眠性種子である。
 
熱湯処理法
 70℃ほどの熱湯(温湯)に15分~1時間浸し、水浸して1夜置く。翌日吸水して種子がふくらんでいればOK、ふくらんでいなければもう1度やり直し2~3時間浸す。それでもふくらまない場合は、硫酸処理が必要になる。少量の種子なら湯飲み茶碗に種子を入れ、熱湯(100℃)を注ぎ、冷めるまで置く。1夜水浸してふくらむと成功である。
(緑の地球68号 1999年7月掲載)


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