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盆栽に苔は貼ってもいいの?【前編】

今回は、盆栽に苔をつけて(貼って)もいいのか?について解説していきます。
今回はいつもより長くなってしまったため、前後編でお送りします。
今回は苔を貼ることのメリットとデメリットをお話しします。
次回は苔を貼った後の注意点をお話しします。

※一般的に盆栽に苔をつける際に、「貼る」と表現するため、この記事でも貼ると記載します。

観賞するために苔をつけてみたい!
苔をつけて自分の盆栽をさらにカッコよく(かわいく)したい!
という方にお届けできれば嬉しいです。

盆栽と言われて、イメージでいえば、木+苔+鉢のセットのイメージはありませんか?

それもそのはず、テレビや雑誌、SNSなど、メディアで紹介される際は、ほぼ必ずと言っていいほど苔が付いています。
(苔が生えている、自生していると感じる方もいらっしゃるかもしれませんね)

これ、実は(ほぼ全てと言っていいですが)お化粧として貼られている苔です。

お化粧と言い換えたのは、私が勝手に言い出したものではなく、盆栽をされている方々はみなこのように表現しています。

展覧会や各種イベント、テレビや雑誌など、誰かに盆栽を見せるというのは、いわゆるお披露目会。
盆栽とは、自然で生き抜く木の情景を小さな鉢の中に表現する、というものです。

自分が大切に育ててきた自慢の盆栽を、皆さんにお披露目するにあたり、さらに美しく見せるため手法の一つなんですね。

では普段はどうなんでしょうか?

答えは、普段は苔は付けていません。
この理由には、のちにご紹介する様々なデメリットがあるためですが、基本的には付けないもの、むしろ邪魔になるものと考えてください。

余談ですが、ネットなどの通販で盆栽を購入しようとした際、ほば必ずと言っていいほど苔がついていると思います。
これは購入を検討している方のことを考えた際に、ネットショップでの接点がお披露目会だから、ということで、やはり見栄えのためです。

土が露出している状態と、苔が付いている状態、やはり見た目の美しさに加え、緑豊かな大地をイメージできる苔があると、より一層自然を感じられるのではないでしょうか?

なぜ苔をつけることはいけないことなの?

苔を付けることで情景がより浮かび、自然を表現したい時にはもってこいの立役者です。
むしろ、苔盆栽やコケリウムなど、木の補助という役割ではなく、苔を主役としたものもあるくらい、とても可愛らしいものです。

自分の盆栽の魅力をさらに引き上げたい、という目的で苔を貼るというのは、間違っていません。

それでは、苔を日常的に付けることがダメだと言われている理由をご紹介します。

①土の乾き具合が分からない

盆栽の水やりの基本として、土が乾いたらたっぷりとあげることが最良とされています。
例えば、夏場は気温や日光の強さによって土が乾きやすいので、1日2回、春と秋は1日1回、冬は2〜3日に1回など、水やりの頻度の目安はこのように書かれています。
しかし、これらはあくまでも目安であり、木の大きさや鉢の大きさ、樹種や個性によっても変わるので、育てる方がきちんと見極めなければいけません。
(長く育てていれば気づくタイミングが来ると思います😄)

苔を貼ることにより、水の渇き具合を見極めるための土が隠れてしまうため邪魔になる→見えないがために、水を多く与え過ぎてしまい根が腐る、逆に水を与えずに枯らしてしまうなど、水やりのタイミングが掴みにくくいことにより最悪の結果を招いてしまうかも、、
というのが一つ目の理由です。

②苔自体が水を保持するので、土が乾くタイミングを遅らせる

苔は吸水性と保水性に優れています。
もちろんこれがデメリットだけではなく、木にとってメリットに繋がることもあるのですが、
盆栽の土は水捌けがとても大事で、たっぷりの水を与えた後はサッと水が引いて、徐々に乾いていく。という流れがとても大切です。

しかし、水をたくさん保水する苔があることで土がいつまでも乾かず、常に土が濡れた状況を継続させることになります。
土が常に湿っている状態ということは、根が呼吸することが出来ないので、生育上良くありません。

また、保水力のある苔が触れている土の表面だけが湿っていて、中は乾き切っている、なんてこともあります。

蒸れの原因にもなるため、通気性も悪く、夏場の暑い日には、鉢の中が高温になったり、根腐れを引き起こします。

特にこの根腐れは最悪で、治すのには腐った根を切り落とすしかなく、根腐れの範囲が広範囲に及べば、ほぼ枯れてしまうと思って良いでしょう。
栄養を吸い上げるための根が腐るということは体の半身を失うようなもの。仮に生き残ってくれたとしても、回復までに長い期間を要します。

③苔があることで病害虫の発生を引き起こすリスクが高まる

そもそもが盆栽の鉢の中というのは、害虫や菌にとってとても住み心地が良いようです。
鉢の中は温度は一定(大きく変化しない)ですし、定期的に水も補給されるため、害虫の温床となりがちです。

そこに苔が加わることで、湿度も一定に保たれ、土も乾きにくく、さらに病害虫にとって住みやすい環境になってしまいがちです。

もちろんデメリットだけではありません

①見た目が良くなる

やはり1番はこれだと思います。盆栽の土の部分は、自然でいう大地を表現する場所。
木が生えている足下には、悠久の時を生きた証の一つとして、苔むして長い時を過ごしてきた苔も当然あると思います。

余談ですが、盆栽の風景=盆景を表現する手法の一つとして苔が有名ですが、石や草、別の木を植えるなど、盆景を表現する方法は様々あります。
(苔が全てではない、ということです!)

②保水が出来る

保水性について、デメリットはご紹介しましたが、メリットもあります。
鉢全体で見た時に、苔が水を多く含むことによって、水を与えたあとの水持ちが良くなるという点があげられます。
これが悪い作用をすることもありますが、例えば植え替え直後の土は水捌けがとても良いため、過度な乾燥を防ぐことも出来ます。

また、空中の湿度を保つことが出来るため、木の生育にも良い影響を与えます。

土の乾燥を防ぐための手段として、よくある緑の綺麗な苔を貼るのではなく、ミズコゲという死んだ苔を貼ることが一般的です。こちらは保水性にかなり優れており、植え替え直後や、夏の暑い日の水切れ対策など、かなり重宝されます。
乾燥されたものが安価で販売されていますが、見た目の美しさはなく機能的な役割の側面が強いため、観賞用には向きません。
使用するときは水で戻してから使用します。

③土の流出を防ぐ

盆栽に水を与えていると、水の力によって土が鉢から溢れていくことがあります。
特に植え替えをした直後などは、土同士がくっ付いていることもないためさらさらと軽く、水の流れで簡単に流出してしまいます。
以前の記事でも触れましたが、鉢から土が流れ出ていくということは、減った土の量だけ根が栄養を吸い上げられないことにもなり、また、土が少なくなると必要以上に根が露出してしまうことにもなりかねません。

苔を張ることにより、水によって土が舞い上がるのを苔が抑えてくれるため、利点と言えるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
かなり長くなってしまったので大変恐縮です。。

比重としてはデメリットがあまりにも多かったため、もう苔を付けるのはやめよう、と感じられた方も多いかもしれませんね。
ただ、安心してください。
全てではないですが、私は苔を盆栽に貼って育成をしています。

※もちろん苔によるデメリットは理解していますし、苔はダメだ、という意見を否定するつもりはございません。

お気に入りの盆栽です。足下には苔がびっしり!

今回は前後編のため、次回は「苔を貼った盆栽の注意点」についてお話しします。
注意点とはいっても、メリットデメリットのお話は今回でお話しし終えたので、次回の記事では実際に育成している私の感想などをお話ししますので、ぜひご覧ください🙏

それではまた!

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