見出し画像

盆栽に苔は貼ってもいいの?【後編】

今回は、前回お話しした通り、
盆栽に苔を貼った後の育て方、注意点についてお話していきます。
こちらのテーマは前後編となっておりまして、前編では盆栽に苔を貼ることのメリットとデメリットをそれぞれ書いておりますので、ぜひそちらもお読みください。

↓前回の記事

苔ってどんな種類を選べばいいの?

苔といっても数えきれないほどの種類があり、性質も様々です。
盆栽で使用する場合は主に化粧用として用いられる苔ですが、どんな苔が盆栽に向いているのでしょうか?

一般的な苔を大きく分けると3種類

苔は大きく蘚類(せんるい)、苔類(たいるい)、ツノゴケ類の3つに分類されますが、蘚類はこの中でも1番種類が多く、盆栽用に適している種類が多いです。

また、苔というと薄暗くてジメジメした場所で生息していると思われがちですが、種類によっては日光を好む種類もあります。

全てをご紹介するのは途方もないので、ホームセンターやペットショップ、通販サイトなどで一般的に手に入りやすい苔たちをご紹介します。

スナゴケ
小さな星のような姿が愛らしいです。
主に北半球の日当たりの良い場所に生息していて、直射日光や積雪にも強いため、初めて苔を育てる方にはオススメです。
シッポゴケ
ふさふさの尻尾みたいな見た目をした苔です。
森林や半日影の場所に生息していて、湿気がある環境を好みます。
他の苔に比べて背が高いので、テラリウムなどでは高さや奥行きを出すためによく使われています。
盆栽に使用する際は一面に敷き詰めるのではなく数本をポイントを絞って配置するとバランスも取れつつ、木の根張りを隠さないのでオススメです。
タマゴケ
柔らかな質感と明るめの緑色が特徴的です。
明るめの日陰に生息していて、丸い胞子体(画像でピョンと伸びているもの)を出すことからタマゴケと名付けられたそうです。
寒さには強いですが、夏の暑さには弱いため涼しい環境が向いています。
ホソバオキナゴケ
短いきめ細やかな葉とこんもりとした姿が特徴的で、お寺などでも使われる定番の苔です。
「ヤマゴケ」とも呼ばれており、むしろヤマゴケの方が呼び名としては定着しているかもしれません。

半日陰の乾燥気味の場所を好みます。
もう一つの特徴として、乾燥した際は白くなるだけで形状の変化が少なく、成長もゆっくりのため重宝されています。

注意点として、加湿気味にするとゼニゴケやタチゴケという強い苔が生えてしまうため、水のやり過ぎは禁物です。

※特にゼニゴケは観賞用としてもあまり良くなく、土をジメジメとした土壌に変えることと、横に広がって成長していくため、表土を多い水捌けを悪くします。発生したら取り除きましょう。

ミズゴケ
ミズゴケというと、上の画像の姿が生きている姿で、
フワッとした可愛らしい姿ですが、盆栽に用いられる場合は下の画像のように乾燥したものを水に戻して使用されます。
(言い方は悪いですか死んだミズゴケです)
もともとの性質として、歯に特殊な細胞があるので水を大量に溜め込むことができます。
排水性、通気性にも優れているため、盆栽の表土の乾燥防止や取り木といった技法の際など、広く使用されています。
観賞用には適していません。
シノブゴケ
葉を広げた姿がとても魅力的で、コケリウムや苔のみの盆栽などではとても人気があります。
しかし、性質として地面や木の幹に這うように成長していくため、木をメインとする盆栽の足元に置くことには向いていません。
ギンゴケ
山々から都会のコンクリートなど、日当たりの良い場所から半日陰まで、様々な場所に生息しています。
名前の由来でもある「銀」からも、シルバーがかった白〜灰色の葉先が特徴的です。
蒸れるとカビが発生しやすいため、日当たりと風通しの良い環境が適しています。
また、乾燥や寒さには強いですが夏の蒸れには弱い性質があります。
また、葉性の良いもの(種類?)はビロウドゴケ(ビロードゴケ)と分けて呼ばれることもあり、ビロードのようにきめ細やかで艶のある苔として販売されています。
ホソウリゴケ
形状はギンゴケにとても良く似ていますが、葉の先が白っぽくならない点に違いが見られます。
こちらもギンゴケと同様、山々から都会のコンクリートまで幅広く自生しており、好む環境も同じです。

いやー、多いですね😅笑

さて、一般的な苔の紹介が終わったところで、本題のどんな苔を選べばいいのか?ですが、

私のオススメはホソバオキナゴケ(通称ヤマゴケ)です!!

私はこれまでスナゴケやタマゴケ、ホソウリゴケなどを試してきましたが、うまく生育できませんでした。
それもそのはず、

そもそも苔の生育環境と
盆栽の木の生育環境が合わない

ことがあげられます。

一般的に盆栽は土が乾いたらたっぷり水を与え、風通しも良く日光もさんさんと降り注ぐ環境で成長します。
反対に、上で紹介した苔の多くは直射日光に弱かったり、空気中の湿度は求めるが水で濡れていると腐ったりと、鉢の中で木と同時に育てていくのは難しい(一定期間は綺麗でも長持ちはしない)と感じました。

ではホソバオキナゴケはどうなのか?というと、
実はこれも半日陰で乾燥気味の環境を好みますので、一見盆栽の足元に貼るには適してなさそうですが、
乾いても白くなり活動を停止し、水を与えると復活するという特性があるため、これまでずっと形を変えず私の盆栽を彩ってくれています。
(※とはいえ、成り立っているというだけで生育できているかという点では疑問ではありますが😅)

ホソバオキナゴケは基本的に「ヤマゴケ」として呼称され、様々なショップで取り扱われています。
私は盆栽妙さんの山苔パックを一度購入し、長いこと使っています。


ちなみに、屋外で管理しているとその鉢に適した苔が自然と自生し、木の根本を覆うことがありますが、根の育成を阻害したり、幹肌に強く張り付いて腐食させたりと悪いことばかりですので、基本は取り除く対象とされています。

最近購入した苗木のポットです。
雑草もですが、苔が自生しています。


盆栽に苔を貼ったあとの生育・注意点について

重ねてのお伝えにはなりますが、私は盆栽を室内で育成しています。
前回の記事でお伝えした、苔になる病害虫などの被害もほぼ受けない環境のため、成り立っているのではないかと考えています。
これらが屋外となると、前回の記事で触れたデメリット、特に病害虫と夏の蒸れは大きな被害となる要因でしかないと思いますので、先人の方々が仰るように、苔は観賞用のお化粧として考え、短期的なものとして活用する方が良いと思います。

それでは最後に、苔を長く持たせるための注意点を最後にお話ししたいと思います。

◼︎苔を貼った場所に肥料を置くと腐る

参考までに、画像を添付します。

肥料はこのようにカゴに入れて与えていました
カゴを取った跡がこちら
(現在は腐った箇所は取り除いて新しい苔を貼っています)

肥料があった場所が黒ずんでいるのが分かりますでしょうか?
盆栽の成長を促すための肥料を与えていたのですが、その肥料に含まれる成分が苔ととても相性が悪いようで、定期的な水やりによって溶け出した成分が苔にかかると腐ってしまうのか、黒ずんでしまいました。

もし苔を貼りながら、木にも肥料を与える場合は、肥料のエキスがかからないように苔を配置するか、肥料を必要とする時期は苔を外すなど、方法を検討してください。

◼︎乾いた苔は水を弾く

実験的に、乾いた苔の上から水を与えてみました。
水の動きが分かりやすいように注ぐ形で与えていますが、普段ははす口のジョウロで水を与えています。

このあげ方だと水の勢いが強く、土が舞い上がってしまうなど問題があるため、間違ってもこのような水の上げ方はしないようにしてくださいね。

水をかけています。
苔の上を水が滑るように弾いているのが分かりますでしょうか?
少しアップです。
水の膜が張っているようにも見えます。
これが苔が水を弾いている証拠です。

この鉢は苔を全面に敷き詰めているため、苔が乾くとこのように水を弾いてしまい、土に水が行き渡りにくくなってしまいます。

これは偶然で意図したものではないのでそのままにしていますが、
この鉢はどのようにして水が鉢の底まで届いているのかというと、
苔は敷き詰めて置いているのですが、苔が乾くときゅっと引き締まり、苔の塊同士の間に隙間が生まれます。
その隙間から水が浸透し、鉢底まで水が行き渡っているというような状態です。

苔についても、水を与えれば水を吸い込み、かつ水を通すようになるため、
以前植え替えの記事でご紹介した水やりの方法と同じように、水が表面に溜まる→サッと離して吸い込まれていく→また水をかける、という方法を繰り返すことで、苔がある状態でも育っています。

余談ですが、これまでご紹介した私の盆栽のように、苔を全面に貼る必要はありません。

私は苔で土が覆われていても、鉢の重さなどで鉢の中の乾き具合が判断できますが、始めたばかりの方だとそれも難しいと思います。
例えば、下の画像のように木の足元にだけ苔を貼るなどをすれば、苔に全ての土が覆われているよりは判断がしやすいでしょう。

注意点としては、苔と土の境目は水と土の舞い上がりの
影響を受けやすいため、
だんだんと苔がほぐれてしまう事があります。


いかがでしたでしょうか?
苔一つをお話しするだけでもかなり長くなってしまいました。それだけ奥が深いものなんだ、と自分で納得したいと思います😂

ここまでお読みいただき誠にありがとうございます。


この記事を書いていてふと思いついたことがありまして、苔の貼り方と洗浄についても近々投稿したいと考えています。
特に屋内で盆栽を育てる場合、この洗浄はやるやらないでは天地の差が生まれてしまうため、
私と同じような被害者を生まないために、また投稿させていただきますね。

それではまた次回の記事でお会いしましょう。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました🙇‍♂️

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?