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『世界は五反田から始まった』の大佛次郎賞贈呈式が行われました!

 第49回大佛次郎賞を受賞した星野博美さんの『世界は五反田から始まった』。その贈呈式が2023年1月27日に行われました! 朝日新聞社主催の贈呈式&パーティー、ゲンロン主催の二次会、そしていつもの(?)ゲンロンカフェでの三次会まで。大盛り上がりだった当日の模様をお届けします。

 贈呈式&祝賀パーティーは、東京のど真ん中、帝国ホテルの孔雀の間で行われました。朝日賞、朝日スポーツ賞、大佛次郎賞、大佛次郎論壇賞の合同で行われる贈呈式には、哲学者の柄谷行人さんやサッカー日本代表の森保一監督など、錚々たる受賞者の面々が一堂に会しました。

 朝日賞、朝日スポーツ賞の贈呈を経て(じつはここまでで一時間超の盛大な式典でした……!)、大佛次郎賞の贈呈へ。選考委員の斎藤美奈子さんから、地域史はこれまで、その地域の偉人や大きな出来事から紡がれていくものだったが、『世界は五反田から始まった』はそうではない、市井の人々が主人公の新しい地域史の可能性を示したことで受賞が決まった、という旨の選評が語られました。

 そしていよいよ、星野さんからの受賞のお言葉が。受賞の電話がかかってきた際は、「両親に『特殊詐欺に気をつけろ』と言っている手前、詐欺だと思って出なかった」とのこと! その後携帯に電話があり無事受賞が決まったようです(笑)。

  「私は小さなシャベル1本で文章を書く」――1997年の香港返還が書き手としての原体験だと星野さんは続けます。当時、香港に足かけ2年にわたる滞在をしていた星野さんが見たのは、日本の大手メディアが香港に大挙し、一流ホテルに宿泊して「ブルドーザーのように」取材する光景でした。けれども返還後、彼らは、潮が引くように香港を忘れていった。その経験から、大手にはできない「小さなもの」を扱うノンフィクション作家としての姿勢が確立したと言います。そしてそれは、町工場で小さな金属部品を作っていた祖父、千葉の漁村で鰯の群れを追っていた曽祖父の姿勢につながるのだ、と。
 またスピーチでは、受賞自体よりも受賞をみんなが喜んでくれたことが嬉しい、この本を五反田にある「小さな」出版社ゲンロンで出せて良かったという、版元として胸が熱くなるお言葉もいただきました。その後の祝賀パーティーには星野さんの(『世界は五反田から始まった』に登場するあの!)ご両親とご姉妹も参加し、その一角は和やかなホームパーティーのようでした。

 二次会は「大五反田」に凱旋し、目黒区のホテル「雅叙園」での立食パーティー。実はこの雅叙園、星野さんのご両親が結婚式を挙げたゆかりの場所なのだとか(ちなみにホテル1階のイタリアンレストラン「カノビアーノ」を経営しているのは星野さんのはとこだそう)。受賞の挨拶で「この場所には私の愛する人をお呼びした」と言う星野さんの口調には、贈呈式のスピーチとはまた違った、どこかリラックスした雰囲気が漂います。

 また二次会では、ゲンロン代表で『世界は五反田から始まった』担当編集の上田洋子が乾杯の音頭を取りました。なんと星野さんが大佛次郎賞の楯や目録を帝国ホテルに置き忘れたことが暴露され、星野さんらしいエピソードに、ご本人をよく知る会場は爆笑に包まれました。

 参加者には、政治学者の宇野重規さんやノンフィクション作家の末並俊司さん、西谷格さん、広野真嗣さん、与那原恵さんといった面々が。また星野さんなじみの各誌紙のノンフィクション担当編集者も集い、会場は大盛況でした。最後の挨拶で、星野さんはノンフィクション界へのエールを送ります。贈呈式の「ブルドーザーに対してシャベル1本で書く」という姿勢は後ろ盾のないフリーランスの矜持であり、それを大切にしながら生きることが、後の世代が続くためには必要なのだ、と。二次会は「ノンフィクション界がんばれ!」という力強い言葉で締められました。

 そして一同は、「大五反田」の中心部、ゲンロンカフェへと移動しました。三次会については、22時30分にスタートした酒宴が朝4時まで続いた、とだけ記しておきます。つきぬ話の中あっという間に時間が過ぎていくのはゲンロンカフェならではでもありますが、同時に、星野さんがいままで培ってきた、ノンフィクション界の強い絆を感じるものでした。そしてなにより、この写真のみなさまの笑顔。星野さんが、「受賞をみんなが喜んでくれたことが嬉しい」と語った意味を実感した一夜でした。星野さん、あらためて、ご受賞おめでとうございます!

(ゲンロン編集部:横山宏介)

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