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夜の都会のハイウェイドライブにピッタリな「モダンソウル」でハイエンド気分に浸る。たとえマイカーが軽トラだろうとも。

「モダンソウル(Modern Soul)」については、ネット上にも日本語の解説が意外と少ない。

というのも実は、そもそも「モダンソウル」とは厳密には音楽ジャンルではなく、ある特徴を持つソウルミュージック群を概念的に指す言葉なのである。

その特徴というのが

①70年代から80年代初頭に録音された

②ミッド〜アップテンポの

③レア音源ソウル

という3点である。

そもそも後追い世代が時代を遡って勝手にグルーピングしたジャンル名なので、この3つにだいたい当てはまっていれば「モダンソウル」と分類しても問題ない。
「これはモダンソウルじゃないね」とかいちいち突っ込んでくる面倒なレコオタには膝カックンでもしてやればいい。


上記の①には当てはまらないが、②と③を満たす「ノーザンソウル」と呼ばれるモダンソウルによく似たジャンルがある。

モッズカルチャーが一段落した1960〜70年代のイギリス、特に北部において、レアでカルトでアップテンポなUS産ソウルレコードを夜通しクラブでかけながら熱狂的に踊る若者文化が流行した。そういったクラブで好んでプレイされていたソウルのこと、そしてそのムーブメントそのものを一括して「ノーザンソウル」と呼ぶようになった(映画にもなってます)。

ノーザンソウルのクラブで好んでプレイされていたソウル音源は、前述のようにアップテンポな「踊れるソウル」であること、そしてレアでカルトであることが何よりの価値だった。
レア/カルトソウルは大手レコードレーベルのソウルに比べて明らかにアレンジが稚拙だったり、生音感が強かったり、洗練されていない荒っぽさが特徴で、有名ではないけどキラリと光る魅力的なフレーズを持つレアな音源が客にも好まれていたし、「このレコードは世界で10枚しかプレスされてない」とか「これは誰々の未発表音源で関係者にしか配られていない7インチだ」みたいなDJ同士のマウント合戦的側面もノーザンソウルカルチャーを盛り上げた要素の一つだった。

ノーザンソウルとモダンソウルの違いを一つ挙げるとすれば、単純な「古さ」である。まずはノーザンソウルを一曲聴いて欲しい。

A Dream / The Creations


お聴きいただければわかるようにノーザンソウルは、レア音源ゆえのアレンジの弱さ、年代ゆえの音質の悪さでオールディーズ感が強いのである。まだまだ土っぽくて、「都会のキラキラ感」みたいなのはあまり感じられない。めっちゃカッコいい曲ではあるんだけど。


一方の本場アメリカでは、ソウルミュージックバブルによる売り手市場がゆえの余裕からか、本来はスローテンポなフィリーソウルを得意とする中堅ソウルシンガーなんかがアップテンポでダンサブルなアルバムを試作したり、録音技術の発達や音響機材およびノウハウの一般化もあって、イギリスで買い叩かれていた60年代のノーザンソウルのような荒っぽさからはいち早く抜け出していた。たとえレア/カルト音源でも、かなり丁寧な録音とアレンジが施されたソウル作品が出回っていたのである。

この時期に作られていたのが今回紹介するいわゆる「モダンソウル」としての条件を満たすソウル群なのである。

エレピやストリングスや管楽器を散りばめた軽快でゴージャスで煌びやかでスピード感のあるソウルは、都会の摩天楼とか真夜中のハイウェイなんかにピッタリの音楽で、赤いスポーツカーでパーティをこっそり抜け出す着飾った男女、みたいな情景が思わず浮かぶ。


それでは、あなたの夜のドライブをゴージャスにしてくれるモダンソウルナンバー(一部ディスコとサルソウルも)をご紹介。文字数多すぎるので一つ一つの曲の説明は省きます。


You Deserve To Dance / Webster Lewis


Search for Tomorrow / Chain Reaction


Battened Ships/ Odyssey


Sizzlin' Hot / Paradise


Let Me Down Easy/ Rare Pleasure


Positive Forces / Leroy Hutson


It's Lilke That / G.Q.


Hit and Run/ Loleatta Holloway



70年代から80年代初頭にアメリカで一瞬の輝きを放ったモダンソウルは、リアルタイムで日の目を見ることなく、ファンクとディスコの板挟みに合いその二つに吸収合併されていくのだが、その後のハウスミュージックの隆盛により「レアグルーヴ」として再発見、再評価、リミックスの機運が訪れ、ハウスDJたちによってさらに都会的に洗練された官能的なドライヴィングミュージックへと進化していく。

Spend A Day Without You (Original Album Mix) / Crue-L Grand Orchestra feat. Philip Ramirez / Dimitri from Paris


Lyk U USE 2(feat.Andres)/ Moodymann




あなたもぜひ、煌びやかな都会の夜の、優雅なドライブのお供にモダンソウルを添えてみては。

最後に、色々言ったけど、そんな私は中古の小さなSUVと軽トラがマイカーの田舎住まいです。

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