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かっこいいピーター・ブルックの言葉

デザイナーのひとが、思ったり、口にしたりするとかっこよくみえる言葉を少し集めてみました。
「なにもない空間」(ピーター・ブルック著/高橋康成・喜志哲夫訳/1971年/晶文選書)からの引用です。

1.「すぐれた劇作家ほど自作の解説をしないものだという事実を、私たちは感動をもって認めないわけにはいかない。」p13

2.「演劇はいつだって自己破壊的な芸術なのだ。それは常に風に記された文字なのだ。」
p17

3.「あたりまえのことながら、作家は自分の手もちのもので仕事をするしかない。つまり自分の感受性の外へとびだすことはできやしない。」
p49

4.「初めから<単純>になろうと狙うのは、結局ろくなことにならない。単純な答えにゆきつくための厳しい手続きを安易に逃げてしまっても駄目なのだ。」
p52
 
補足:
1.そのあとに「すぐれた劇作家たちは知っているのだーーそれ以上の説明はおそらく無駄である、そしてひとつの言葉を正しく語ろうとするものは、それを生み出したもとの創作過程に見合うような過程をくぐらなければならない、ということを。この過程を通らずにすませたり、あっさりと簡略化することはできないのだ。」と続く。
2.紅衛兵たちが文革で伝統ある北京オペラを破壊しつくしたことをみてこう書いた。
3.そのあとに「いくら自分で自分をおだてても、現実に自分以上の、また自分以外のものになれようはずがない。自分が見て考えて感じたことについてしか書くことはできない。」「ただ、彼の手もとにある道具を改良する道がひとつある。すなわち、自分が置かれているさまざまな関係の連鎖の中で欠けている環を明確に意識することだ。」と続く。
4.この後に、演出家の仕事は妙なもので、望まないのに俳優たちが本能的に独裁者に仕立てあげて、いつも詐欺師のように、知らない土地で暗中模索で旅行ガイドをつとめる、と続いていく。

ピーター・ブルック(1925-):
イギリスの演出家、演劇プロデューサー、映画監督

 わたしは演劇関係にまったく疎いのですが、このピーター・ブルックの本は、全編きわめて現場感にあふれた具体的な考察に満ちていて、デザイナーの皆さんにとってもすこしは参考になると思います。ちょっと読んだだけでも、これだけのアドバイスが拾えるので、書いてみました。
 解説でしか読んだことはありませんが、世阿弥の「風姿花伝」も、けっして抽象的なことはなく、各演目にわたるアドバイスまで、ハウツーのようにすら読めるほどきわめて具体的に書かれていました。
 いっぱんに実際の演出家の手による演劇論は、具体的な言葉と身体の限界と、俳優や観客との闘いの場に、しじゅう身を置いているので、へんに哲学的に抽象化することのない、生々しくも「役に立つ」芸術論でありえているのでしょうか。
 最後に、ピーター・ブルックではないけど、私の好きな警句:
「いい聴衆を持つことは、いい犬を持つことに似ている。蹴とばしちゃいけないけど、むずかしい話をする必要もない。」
(イギー・ポップ(ミュージシャン)「流行通信」1979年10月号p59)
なんかこんなこと言ってみたいですよね。


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