理想の“死後の世界”

理想の死後の世界について考えた。

そこは非常に広大なスイートルームか、バーのようなところだ。500万ヘクタールほどの広さがある。天井が非常に高く、住友林業が設計したような木の造りで、全体がしゃらくさい間接照明によってうっすら照らされている。ソファやら机やらハンモックやらが至るところに設置されているほか、ベッドの付いた広めの個室も用意されている。Wi-Fiの電波は非常に強い。ところどころに製氷機やアイランドキッチンが設置してあり、抜け目のない快適さが保証されている。入場料は「一度以上生を受けたというキャリア」であり、金銭は必要ない。

こういった場所で、生前の私の友人やフォロワーたちが、思い思いのアバターを纏って過ごしている。非常に広大な空間であるため、ほとんどの者がワープ機能を活用して移動しているが、歩くのが好きな者は歩いたらよいと思う。

東側と西側にテラスがついており、東側にはプールがある。泳いでいる者はあまりおらず、プールサイドで寝転がってTwitterをしたり本を読んでいる者が多いが、暑ければ飛び込んでもよい。横に併設されている温泉で湯治を楽しむ者もいる。
西側のテラスは縁側になっている。皆寝転がったりTwitterをしている。
南側には枯山水庭園があり、その向こうにはもくもくと煙を吐き出す桜島がある。この庭園は桜島を借景する形で完成している。

館内では、あらゆるドリンクや煙草がオールインクルーシブで提供される。
フードメニューも充実しており、ロイヤルホストや四川飯店をはじめ、やぶそば、タテルヨシノ、快活CLUBや東京會舘、カリーザハードコア、はなまるうどん、カプリチョーザほか、古代ヒッタイト料理から、閉店してしまったレストランの料理まで、ありとあらゆる古今東西の料理が楽しめる(全店ルームサービス対応)。なんでも頼めるのをいいことに、私はよくモスチキンと天抜きとエッグベネディクトを同時に頼んでオリオンビールで流し込んだりしている。

さらに、この空間へ来た者には、入場者特典としてアカシックレコードへのアクセス権が付与される。
これさえあれば、宇宙が誕生してから全ての記憶をツマミに「定命の頃はさ…」と語り合う日々を過ごすことができる。そうそう退屈することはないだろう。

この広大な空間の中央にはサービスカウンターが存在する。ここでは、ドリンクやフード、日用品等の注文のほか、アカシックレコードの複写サービスも取り扱っている。外国語で書かれた情報――例えばアレキサンドリア図書館の蔵書とか、上代日本語の会話とか――を利用する場合には、翻訳サービスも完備されているので活用されたい。
ちなみに、カウンターまで行くのがだるい人のために、タブレット端末からの注文も可能である。

外の空気が吸いたいという者もあるだろう。北側のエントランスから館外に出ると、鴨川と国立民族学博物館が用意されているので、歩いたりなんだりして運動不足を解消することが可能だ。自由に使用できるセグウェイも貸し出されているので、より速く移動したいという者は乗ってみてもよいのではないか。

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