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不動産に関わるハンコ代はよく耳にしますよね。

既出の不動産記事「私道とは(その2)」で説明した私道の掘削承諾料も
ハンコ代の一種ですが、本記事では任意売買におけるハンコ代の説明をします。

住宅ローンを借りると金融機関がその不動産に第一順位の抵当権を設定し、万が一延滞が発生した場合最終的には競売にかけ融資金を回収します。
フラット35などの公的融資の場合は、支払が滞るとまず不動産所有者が自分の意思(任意)で売却することを促されます。

なかには住宅ローンを借りた後、他方から融資を受け第二、第三順位の抵当権が設定されている場合があります。
また固定資産税や住民税などの税金の滞納で差押の登記が設定されているケースもあります。

任意売却の場合は所有権以外のすべての登記を解除抹消しなければなりませんので、抵当権者、差押者に相当の金額を支払い同意してもらいます。
任意で売却した代金は
①第一順位抵当権者
②税金
③第二、第三順位抵当権者
の順番で一括返済しますので、売却代金で②③までの滞納金全額を充当できるとは限りません。
その場合は②③にはいわゆるハンコ代で納得してもらい抵当権、差押の登記を抹消してもらいます。

関与した任意売却事例 【〇〇マンション305号室】

    任意売却金額:21,000,000円
<抵当権>
1.フラット35: 残金12,075,352円
2.○○○保険:  残金14,637,279円
3.○○銀行:   残金1,454,018円
4.〇〇保証:   残金1,365,819円
<差押>
杉並都税(固定資産税):滞納金512,800円(延滞税87,300円)
杉並税務署(法人税): 滞納金317,500円(延滞税111,800円)
杉並区(住民税): 滞納金261,700円(延滞税92,400円)
 合計:30,624,468円  


配分案

. フラット35:    12,075,352円(+-0円)
. ○○○保険:   7,195,098円(▲7,442,181円)
. ○○銀行:      150,000円(▲1,304,018円)
. 〇〇保証:      100,000円(▲1,265,189円)
. 杉並都税:      425,500円(元金)
. 杉並税務署:     317,500円(元金、延滞税)
. 杉並区:       100,000円(元金一部)
. 仲介手数料:   580,400円
. 抵当権抹消費用:    56,150円

合計:21,000,000円

○○〇保険、〇〇銀行、〇〇保証および杉並都税、杉並区は個別交渉して
損切りに同意をしてもらい、ハンコ代で折り合いをつけました。


税金滞納金は税金元金は必ず回収しますが、延滞税は免除してもらえる場合が多いです。(杉並税務署だけは頑固としてまけてくれませんでした。)

第一抵当権者のフラット35(回収機関はMUフロンティア債権回収(株))は今回は全額回収しましたが、任売代金が債権額より下回れば競売にかけたでしょう。
競売になると下位抵当権や差押は裁判所の職権で抹消されますのでハンコ代の余地はなくなり所有者(債務者)の引越し代も捻出できません。
今回の引越し代は弊社仲介手数料から捻出しました。

民間金融機関も任意売買の相談ができる場合がありますので、住宅ローンの返済に困ったら不動産コンサルティングマスターの吉田までご相談ください。

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