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クドカン先生、絶好調♡今期ドラマを熱く語っちゃうぞ

ドラマ『不適切にもほどがある』(TBS系)が面白い。
最初から最後まで、ゲラゲラ笑って頷いて、「そーそーそー」「あったあった」「だったよね~」連発で、わくわくドキドキしっぱなしの50分だ。
こんなドラマは滅多にない。

今クールは『さよなら、マエストロ~父とわたしのアパッシオナート』(TBS系)がダントツかなぁと思いきや、奈緒の好演が光る『春になったら』(フジテレビ系)もなかなかで、NHKの 『正直不動産2』も安定の面白さ。豊作だなぁと思っている。山下智久の不動産営業マン、なかなか良いよね。

残念だったのがフジテレビ系『君が心をくれたから』。永野芽郁は、かわいそうな悲劇のヒロインっていちばん似合わないんじゃないだろうか。まぁ、どんな役でもリアルに成立させちゃうのが演技力といってしまえばそれまでだけれど、いまどきこんなベッタベタな悲劇のヒロインものが出てくるとは思わなかった。しかも月9枠。月9ってもう力ないよね~

病気で死んじゃう系は昔から悲劇の定番ではあるけれど、わたしは好きじゃない
と、書きながら、あららと思った。
『春になったら』はまさに父親が病気で死んじゃう話だし、『さよなら、マエストロ』もタイトルからいってそう予測できる。毎回、オーケストラの演奏が素晴らしくて『さよなら』のニュアンスを忘れていたけれど、前回の展開では主役の西島秀俊に病気の兆候が出ていた。

死んじゃう系が加速してくると、わたしの楽しみ熱は下がってくるかもしれない。となると、今後のいちばんのお楽しみはやっぱり『不適切』かなぁ。

録画し忘れていて追っかけで見始めたのが『厨房のありす』(日本テレビ系)。自閉スペクトラム症で「料理は化学です」が口癖の天才料理人という設定を門脇麦がどう演じていくか。
自閉症の天才外科医を描いたアメリカの『グッドドクター』と比べちゃいそうだけど、麦ちゃん、がんばれ!

わたしは基本、俳優さんでドラマを選ぶことが多い。
『厨房のありす』は門脇麦だから、『院内警察』(フジテレビ系)の 桐谷健太だから、『ジャンヌの裁き』(テレビ東京)は玉木宏だから見ている。

それにしても昨今のドラマ視聴率の低さには改めて驚いた。どれも視聴率は4~5%程度。『マエストロ』は出だし7%近くまでいっていたようだけれど、徐々に下がり傾向のようだ。


死んじゃう話が多いということは、視聴率が取りやすいという判断なんだろうけれど、それって安易だぞって現場で誰も思わなかったんだろうか。だから、ドラマは面白くなくなってきているんだな。

そこへ行くと、今回のクドカンは挑戦的だ。昭和と令和をタイムスリップで行き来しながら、コンプライアンスでがんじがらめの現代人をリアルに描き出している。
と同時に、昭和のあのいい加減で杜撰な社会を面白おかしく思い出させてくれる。

昔は良かったには絶対にならない、当時の野蛮さや女性に対する厳しさもちゃんと表現されている。世のなか緩くて、もっとのびのびしていたし、未来に希望を持てていたようには思うけれど、それと同時に女に生まれてきたことが恨めしくて仕方なかった、わたしたち世代の青春が『不適切にもほどがある』の1986年だった。

20代半ばのわたしは、このころ人生でいちばん迷っていた。
バイトから始めた週刊誌の仕事は、大学卒業後も続けていたが、迷いが生じて、一度、田舎に帰っている。
大学時代に教職も取っていなかったのに「学校の先生になる」とか体裁の良いことを言って田舎に帰るわたしのために、編集の皆さんが盛大に送別会を開いてくれたっけ。とてもアットホームな環境だった。

田舎に戻ったのは良いけれど、先生の資格をとるための一発試験に挑もうとして、とんでもない難関だと知り愕然とする。あえなく落ちたが、代わりにNHK長野のFMラジオのパーソナリティに合格。ひとりで番組構成から曲選び、レコード(当時はまだレコードだった)を探し回ったりして楽しい2年間だった。

その契約を終えて、さぁ、このあとどうしようというときが1986年。
パニック発作をたびたび起こしていた当時のわたしは、かなり危なくてヤバイ人だった。

28歳の誕生日前に盲腸炎になり、近くの病院に行ったが「便秘でしょう」「腸が弱っているだけですよ」と言われて放置され、破裂。これが人生最初の入院・手術だった。
腹膜炎になっていたので、お腹のなかの膿を出すために1カ月も入院し、いろんな患者さんと接しているうちに心がしだいに落ち着いたのかもしれない。病院の赤電話から昔、お世話になった編集者に電話して、再び記者として復帰したのが、夏の終わりだったと思う。

そこからがむしゃらに働いて、6畳一間・共同トイレ・共同炊事場というアパートから、新築マンションの12畳ワンルームに引っ越したときは、パニック時代の友人から「出世したね~」と言われたものだった。

『不適切にも』はそんなわたしの激動の時代を掘り起こす。最初はテレビも買えなかったから、ドラマに出てくる『11PM』はほとんど見ていないけれど、ドラマのとおりにお尻のアップや胸の谷間が堂々と、深夜のテレビ画面を占拠していたものだった。

なぜ、脚本の宮藤官九郎氏は、昭和の時代設定を1986年にしたんだろう。バブルがピークに向かいつつある時代、世の中、むちゃくちゃ元気がよくて、働けば働いただけ豊かになれると信じられる時代だった。「24時間働けますか」のCMも、このころだったんじゃないだろうか。

女であることが不利と知りつつ「いつか見返してやる」と、男性と同じように、ときにはそれ以上に働いて、女だからとなめられたり、セクハラまがいの危ない橋をいくつも器用に渡りながら、わたしは雄々しく逞しく生きていけていると思っていた。

無理していたのかもなぁ。記者として八面六臂の活躍(自分で書くか・笑)ができていたのも5年ほどで、生まれつき悪かった股関節が壊れてきて入院。以後、数年おきに何らかの体の故障が生じたりして、以後はほどほどに仕事をしているだけになったが、それでも地方出身の女が東京でひとりで生きてこられたのだから、上出来というものだろう。

ドラマからずいぶん離れてしまったけれど。まぁ、いつものことです、すみません。(以下、ドラマのネタバレあり)


「セクハラ」「モラハラ」と言われて右往左往する令和の男性に向けて、クドカンさんは良いセリフを書いている。(第3話)

「(女性は)みんな自分の娘だと思えばいい」
「娘に言わないことは言わない」
「娘にしないことはしない」
「娘が悲しむことはしない」
「娘が喜ぶことをする」
「それが俺たちのガイドライン」

これをイギリスのロックバンド、クイーンばりのメロディーに載せて、阿部サダヲがピアノを弾きながら歌い上げる。
これはもう、たまらないぜぃ

セクハラがテーマだったこの3話がオンエアされた日、日弁連の新会長に渕上玲子さんが就任することが報じられた。裁判所、検察庁、弁護士連合会の法曹三者で組織のトップに女性が就くのは、史上初だそうだ。

1986年から2024年。この38年で、いちばん大きく変化したのは女性の地位かもしれない。もちろんまだまだ平等とは言えないけれども、女性たちはずいぶん生きやすくなったはずだ。そうでもない? わたしはずいぶん生きやすくなった気がしているよ。




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