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安全確認と忘れ防止のために、「指差呼称(しさこしょう)」はいかが?

先日の「とんでもない忘れ物事件」を書いた後に思い出したことがあった。それは「指差呼称」である。

私の最終キャリアは安全衛生担当部署だったのだが、「指差呼称」は安全には重要な確認行動である。

多くの方はご存知であろうがあえて説明すると、「指差呼称」とは、対象物の状態があるべき状態であることを確認した後に、対象物を指差して「〇〇ヨシ!」と呼称するというものである。

鉄道車両の運転手や車掌が前方を指差して信号などの状態確認をする姿は映像で見たことがあるであろう。また工場や作業現場で一般的に目にするのは、通路を横切る際に、通路の左右を確認するために、「右ヨシ!左ヨシ!前方ヨシ!」と指差呼称する姿である。

ある実験結果によるとこの動作を行うことによって、操作間違いが6分の1になることが報告されている。

在職中は立場もあり、必ず安全確認の際には大きな声で指差呼称を行っていた。しかし、最初からそうであったわけではない。

私に厳しく指導してくれたS係長のおかけである。彼は、「指差呼称は安全の基本だ」との信念のもとで必ず大きな声で指差呼称を行う有言実行の人だった。

彼は私の指差呼称を見るたびに「声が小さい!」とこれまた大きな声で指導してくれた。そのうちに悔しいので、彼に指摘されないように大きな声で指差呼称をするようになったというわけである。

余談だが、S係長には「専務のズボンのポケットを閉じさせた」という逸話がある。

作業現場で禁止されている行動の中に、手をポケットに入れて歩く、いわゆる「ポケットハンド」がある。専務にはこの「ポケットハンド」のクセがあった。

そして、それを見つけるといつもS係長が指摘した。いつもいつも指摘されていた専務は自分のクセを直そうと一念発起して、ズボンのポケットを縫い合わせて閉じてしまったという話である。

話を指差呼称に戻そう。

この指差呼称だが、ほとんどの社員は工場や作業現場では行うが、外に出ると行わなかった。理由は聞いたことはないが、「恥ずかしい」というのが大半だろう。

中には、中途半端に街中で行うと怖いお兄さんに「何、人を指差してんねん!」と因縁をつけられるのではないかというものもいた。そんな話は聞いたことはないがあり得ない話ではないだろう。

しかし、堂々と左右を指差ししている様子を見て、因縁をつけているとは思うまい。

ところで私は不器用なので、場所によってやったりやらなかったりということができない。そこで、社外でも常に安全確認時には指差呼称を行っていた。

特に車の運転中は意識して安全確認をするという意味で指差呼称は非常に効果がある。指差呼称を行っていなければ車を見落としていたかもしれないという事も何度かある。

在職中のエピソードになるが、ある社員が市内のうどん屋に向かって歩いていると、横断歩道の手前で指差呼称をしているおじさんを目撃したそうである。

「こんなところで指差呼称をしているとは変わった人だなぁ」とよく見てみると、私だったというのを後に教えてもらったことがある。

ところで指差呼称は安全確認だけではなく、忘れ防止にも役立つ。

私は車で通勤していたのだが、車を駐車場に駐車して事務所に向かって歩いていると、ふと車を施錠した自信がなくなることがある。

私の他にも何人かが、車を離れた後にもう一度車に戻って施錠を確認している様子を何度も見たことがある。

常に当たり前に行っている動作というのは無意識で行うために、振り返ってみるとその確認ができないものである。

そこで、鍵をした後に「施錠ヨシ!」と指差呼称をすることで行動を意識することができる。

最後に、指差呼称で大切なのは、「呼称」である。「呼称」せずに「指差」だけだと繰り返すうちに無意識な行動になってしまう。

例えば、車の施錠の確認であれば、「指差」だけだとやがて無意識な行動になってしまい、「あれ?指差呼称したっけ?」となってしまうのである。

そんなわけで、安全確認と忘れ防止に「指差呼称」はいかがでしょう!

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