幻冬舎 電子書籍

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出版社の幻冬舎・電子書籍部門アカウントです。 小説、エッセイなど文芸作品から、実用書やビジネス書まで、幅広い本の試し読み記事やオリジナルコンテンツ、そのほか幻冬舎にまつわる様々なことを発信していきます!

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    美を育てる (幻冬舎単行本)

    神崎恵
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    じゆうがたび (幻冬舎単行本)

    宇賀なつみ
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    やっと本当の自分で生きられる (幻冬舎単行本)

    浅見帆帆子
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    おつかれ女子のウェルネス手帳 ココロもカラダも笑顔になれる133の気づき (幻冬舎単行本)

    ウェルネスデザイン研究所
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    もう愛の唄なんて詠えない (幻冬舎文庫)

    さだまさし

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原田マハ『板上に咲く』担当編集者の想い

−この本がそばにあれば、私は大丈夫だ−この度、原田マハさん3年ぶりの長編アート小説『板上に咲く』を刊行いたします。 『たゆたえども沈まず』ではゴッホと画商林忠正の絆を、『リボルバー』ではゴッホとゴーギャンの友情を描いてきた原田さんが今回テーマに据えたのは、ゴッホに憧れゴッホを追い越した、日本人アーティストの棟方志功。 青森の寒村出身で、お金もなく、目もよく見えず、満足な絵の教育も受けられなかった棟方が「世界のムナカタ」になったのはなぜなのか? 彼のそばには、妻・チヤがいつ

    • 2024年4月の新刊

      2024年4月3日配信開始「一セットの服」で自分を好きになる/あきやあさみ 路上ネコ、22の居場所で222匹/佐々木まこと 2024年4月10日配信開始なるほどそうだったのか! ハマスとガザ戦争/高橋和夫 2024年4月11日配信開始往復書簡 限界から始まる/上野千鶴子┴鈴木涼美 全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割/岡本雄矢 みんなのヒーロー/藤崎翔 吉祥寺ドリーミン てくてく散歩・おずおずコロナ/山田詠美 J 寂聴最後の恋/延江浩 2024

      • 2024年3月の新刊

        2024年3月1日配信開始晩ごはん食堂の無限においしい野菜レシピ / 晩ごはん食堂 2024年3月6日配信開始捨てたい人 捨てたくない人 / 群ようこ 板上に咲く MUNAKATA: Beyond Van Gogh / 原田マハ 2024年3月7日配信開始ダ・ヴィンチの遺骨 コンサバターⅤ / 一色さゆり あなたと食べたフィナンシェ / 加藤千恵 ファズイーター 組織犯罪対策課 / 八神瑛子 鬼才 伝説の編集人 / 齋藤十一 叫び / 矢口敦子 姫と剣士 二

        • 2024年3月のおすすめ

          【新年度を新たな気持ちで!前向きになる本集めました】「美を育てる」ことは「自分を育てる」ことにつながる。キレイになるコトはもちろん、自分の“これから”を前向きにとらえて、楽しく、ラクに、心地よく生きるための心得が分かるはずです。 美を育てる 宇賀なつみ、初エッセイ! 「自分を幸せにするために、私は今日も旅に出る!」人生を前向きに生きるヒントがたくさん詰まった1冊。 じゆうがたび 「みんな違ってみんないい」。これからは、ひとりひとりが「自分軸の幸せ」を追い求める時代。わ

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        原田マハ『板上に咲く』担当編集者の想い

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        • 新刊
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          鍵の掛かった男 #5

          十四日の九時半にホテルを出ていた残りの二人は夫婦だった。 「萬さんとおっしゃって、ご主人は北浜の証券会社に、奥様は堂島にある広告代理店にお勤めになっています。お齢は四十代半ばです」 北浜は中之島線に乗ればふた駅だし、堂島は橋を渡ったところだ。仕事が忙しくて遠くの自宅に帰る間もなかったのかと思ったら、そうではない。年明け早々から自宅の大幅なリフォームを始めたので、工事中の十日間を通勤に便利なこのホテルで過ごしたのだという。芦屋市内在住なので、話を聞くためこちらから出向くこと

          鍵の掛かった男 #5

          神の手(上) #5

          その日の午後、白川が病室に行くと、晶子が窓際に立って泣いていた。病室は六階だ。窓には簡単な手すりしかない。白川は不吉な予感に襲われて、晶子に歩み寄った。 「どうしたんですか」 「さっき、妹から電話があって、叱られたんです。わたしがしっかりしていないから、妹が大事なときに、先生に振りまわされると」 「そんな。古林さんはこんなに一生懸命に看病しているのに」 ふたたび康代に対する怒りがこみ上げた。章太郎は完全に意識が消えないまま、うめき続けている。康代には晶子の苦しみがわか

          神の手(上) #5

          鍵の掛かった男 #4

          3 彼が差し出した名刺は、肩書が副支配人・レストラン長になっていた。それについて支配人が説明をする。 「うちの純利益の七割以上はレストラン部門が稼いでくれています。だから重責を担ってもらっているんですよ。それに」顔を丹羽に向けて「実質的には営業部長も兼務してもらっているようなものですよね」 丹羽は控えめに頷く。 「マルチ・ジョブで、フロントに立ってご予約を受け、お客様の応対や精算業務もいたしますし、小さな所帯ですから外回りの営業も施設管理もこなします」 会って一分と

          鍵の掛かった男 #4

          神の手(上) #4

          安楽死は、日本ではまだ法的には認められない。いくら安楽死の要件がそろっていても、やれば医師は殺人罪に問われる。 押し黙っている白川に、晶子が泣きながら取りすがった。 「望んで選ぶんじゃないんです。それしかないから頼むんです。これ以上、この子を苦しめるのは耐えられません。いつかまた元気になれるのなら、我慢もします。でも、もうどんなに苦しみに耐えても、望みはないんでしょう。それなら頑張らせるのはかわいそうすぎます。だから先生、お願いします」 「しかし、今の日本では、まだ……

          神の手(上) #4

          鍵の掛かった男 #3

          私は、ココアを飲んでいた巡査部長の顔を虚空に思い浮かべ、文句をぶつけたくなった。──悩み電話相談の件は話してくれたけど、それ以外にも色々とボランティア活動をしていたことを隠しましたね。本件に無関係と思って言わなかっただけで、隠したつもりはない? こっちは「とりあえず」他殺説をとったから、梨田さんの身辺にトラブルがなかったかに大きな関心を持っているんですよ。彼が部屋に引きこもったままだったら、他人との間に摩擦が生じる機会はほとんどなかったでしょうけれど、盛んに外の人たちと接触し

          鍵の掛かった男 #3

          有頂天家族 #5

          夜も更けたけれども、四条大橋はぞろぞろと人間が行き交っている。 弁天の氷の接吻でにわかに興奮した私は、店主の奢りであることをよいことに、偽電気ブランを続けざまに呷って大いに酔った。そこで四条大橋の欄干へ優雅にもたれて、夜風に吹かれながら酔いを醒ました。 四条大橋の東詰にレストラン「菊水」があって、屋上にはビアホールらしい明かりが灯っている。真ん中がぽこんと高く飛び出していて、そのてっぺんがつるりと丸いのがいつ見ても妙ちくりんである。壁面に並んでいる縦長の二連窓から細く明か

          神の手(上) #3

          1 二十一歳の安楽死末期がん患者の病室には、特有のにおいが漂っている。 死臭を先取りしたような、甘酸っぱく、饐えたにおい。それは、全身に広がったがん細胞からにじみ出る独特の臭気である。若い患者のそれは、旺盛な身体の代謝や髪の汗と混じり、ことさら濃密になる。 古林章太郎。二十一歳、肛門がん、末期。 部屋の明かりを常夜灯だけにしているのは、本人がそう望んだからだ。彼には蛍光灯の光さえ、耐えがたいようだった。 主治医の白川泰生は、ベッドの傍らに立ち、じっと章太郎を見おろして

          神の手(上) #3

          鍵の掛かった男 #2

          2 「お待ちしておりました」一礼して「当ホテル支配人の桂木鷹史です」 見たところ三十歳前後。古いホテルだということで錯覚してしまったのか、こんなに若いとは思っていなかった。経営手腕がどれほどのものか知らないが、色白でおっとりとした若殿風である。 「梨田稔さんの件を調べるために伺いました。ご迷惑にはならないように気をつけますので、ご協力をお願いします」 新入社員の飛び込みセールスよりぎこちない頼み方だったが、若い支配人は畏まって一礼する。 「お世話になります。私以下従

          鍵の掛かった男 #2

          有頂天家族 #4

          言うなれば自分のやったことを対岸の火事だと思っていたのだが、対岸へ火をつけたのは自分だ。四条通を駆け抜けながらわくわくした。 武者震いを鎮めるために、「朱硝子」にもぐりこむことに決めた。「朱硝子」は寺町三条の地下にある店で、我々の眷属がしきりに出入りする。昼は喫茶店であり、夜は酒場にもなる。 寺町通はすでに大方の店舗がシャッターを下ろして、行き来する人もまばらであった。大声で喋る酔っぱらいの声がひっそりとした空気を震わせていた。 べたべたと謎めいたビラが貼ってある狭い階

          神の手(上) #2

          「少し落ち着かれたようですね」 頭上の声に促されるように、随行員たちは佐渡原の衣服を整える。仰向けにされたあと、佐渡原は身ぶりで座らせるように指示をした。 「先生。ご気分はいかがですか」 私設秘書が佐渡原の額から汗を拭いながら訊ねた。陶器のように冷え切っていた皮膚に、温もりがもどり、佐渡原は表情を緩めた。 「ゆっくり深呼吸をしてください。慌てないで」 言われた通り、ゴムマスクを当てた口で大きく息を吸い込む。途中で咳き込むが、優しく背中をさすられて落ち着く。 「……

          神の手(上) #2

          あなたへ #5

          森沢明夫さんによる『あなたへ』は夫婦の深い愛情と絆を綴った、心温まる感涙小説です。刑務所の作業技官の倉島は、亡くなった妻から手紙を受け取る。妻の故郷にもう一通手紙があることを知った倉島は、妻の想いを探る旅に出る。 ◇  ◇  ◇ 冷たく、鋭利な月の下、土の匂いのする夏の夜風が吹いた。 並木道の樹々たちが、さらさらと心地よい音を奏でる。 足元から立ちのぼる夏の虫たちの恋歌。 歩きながら田宮は、自分と美和との近い将来を思い描いた。きっと、あと二~三年もしたら、この並木道

          鍵の掛かった男 #1

          第一章 ある島民の死1 私は繁岡とは反対に向かい、北浜一丁目の交差点に出る。東南角は大阪証券取引所のビルだ。二〇〇四年に高層化のために建て替えられる際、湾曲した特徴のある正面ドーム部分はいったん解体・保存された後、再び新しいビルに再利用された。近年、よく行なわれる手法だ。 明治初期に近代大阪の経済の礎を築いたとされる五代友厚の銅像の横を過ぎ、信号を渡るとすぐに難波橋。こちらは橋の袂の四ヵ所に据えられたライオンの像がシンボルだ。橋を半ばまで渡れば、そこが中之島である。ひしゃ

          鍵の掛かった男 #1