アンケートの数字の正当性

昨日、同時に二人の方からほぼ同じ質問があったので回答させていただきたいと思います。

こちらの内容に記載しておりました、アンケートに関してです。

「アンケートの対象抽出や数に問題があるという理由が理解しづらい」
「アンケートの回答者数をすべての地域や市町で一致させたほうが平等になりそう」

と言うことでしたので回答させていただきます。統計学は素人なので何かツッコミポイントがありましたら教えていただけますと幸いです。

ということで、実際に滋賀県交通戦略課が株式会社パシフィックコンサルタンツ滋賀事務所に依頼して行った令和4年10月に行った住民アンケートを例に挙げます。 

左のラベルの最上段をご覧ください。
「大津・湖南地域 N=744」

と記載がありますが、このNという数字は大津・湖南地域での回答者の数です。つまり大津・湖南地域の744人からこの設問に回答がありました。
うち42%の人がほぼ毎日、通勤通学目的で外出しているという回答結果です。

回答者数が違えど、その地域ごとの割合を計算しているのでこれは別段、問題はありません。

しかし、「回答者を全属性について同数とする」ことには問題が出ます。

地域ごとに数を合わせた上で、その全部を混ぜて統計を取ると、人口密度の低い地域の回答が本来の人口比より優位に現れます。

ちょっと極端な例ですが、例えば滋賀の本来の人口を

大津南部が50人、

近江鉄道沿線が30人

その他が20人

とします。↑これは実際の割合にそこそこ近いです


そんなことはありませんが、仮に、

大津南部は50人全員〇〇に反対。

近江鉄道沿線市町は30人全員賛成。

その他は20人全員賛成とします。

そうなりますと、全員にアンケートを取って回答を全員から頂けた場合、滋賀県全体では〇〇賛成派と反対派は50対50で賛成反対は同数となります。


■では、アンケートを各地域から10ずつゲットしたら?

回答数を各地域について10ずつと、数を合わせることにします。すると、

大津南部からは〇〇に反対が10

近江鉄道沿線からは賛成10

その他は賛成10

の回答が当然出るわけです。

地域ごとに集計するなら、「大津湖南地域は全員反対」「それ以外は賛成」という正しい回答が出るので問題はありません。

しかしこれを混ぜて統計を取ったら、10対20で賛成派が多いのです。

人口比に差があるのにアンケートの対象抽出を数を合わせる形で行うと、人口が少ない市町の回答が優位に結果に表れます。

これで「県全体で賛成派が多い」と結論付けてはいけません。

このようなお粗末な対象抽出が行われたのが、令和4年10月に行われた公共交通に関する住民アンケートです。

あらためてアンケートを見てみましょう。

①人口比率関係なく全市町で350ずつ配布→田舎優位

表は令和2年10月1日の統計

15%も差があります。近江鉄道沿線の市町の回答が優位に結果に出ているようです。

②郵送での依頼が主だと高齢者や主婦がメインで回答

こちらが、アンケートを回答した年齢が見える回答の一例です。計算をしますと、65歳以上が43.3%となっています。

しかし、実際の人口は以下の通りです。 

 アンケートに回答していない10歳未満の数をカットしたとすると、10~64歳、65歳~の人口比率は10~64歳は約70%、65歳以上は30%です。

つまり、全ての回答が混ぜられた上で集計された結果(例えば77%が追加負担容認)については、近江鉄道沿線地域と高齢者の回答が、本来よりも優位に結果に表れているはずです。

しかしその前に・・・

県は経費詳細や将来への負担を説明していない

公共交通充実を求める意見は確かにあると思いますよ。

ですが、公共交通を充実させた時の経費や将来への負担等を説明しないままのアンケートに意味はあるのでしょうか?

好き勝手言わせて「県民の声を聴いた」だなんて、政治家や行政のやることとしては大変お粗末ではないでしょうか。


あなたは、「ものすごく美味しいお寿司と蟹、近江牛ステーキ食べ放題」が出来るとしたら嬉しいですか?寿司や蟹、ステーキが嫌いだったら別の高級な美味しいものに置き換えてください(笑)

そして、そのように言われたら多くの人が「そりゃ嬉しい!」と回答するでしょうが、その料金が一人3万円と言うと多くの人が高すぎるからやめておく、と思わないでしょうか?つまりすべては経費や労力とセットで考えなければ質問には意味があまりありません。

滋賀県の言う「公共交通に関する県民の声を聴いた」状態とは、アンケートの令和4年10月、県民トーク、県民フォーラムが行われた令和5年7~10月の時点では、「料金を伝えずにお寿司と近江牛ステーキ食べ放題が出来たらどう思うか」というのに等しい、無責任な質問です。

経費や、公共交通充実における将来にわたっての影響についての情報をまともに与えていない状態で、

「県民が公共交通の充実を求めている」

「新たな費用負担を県民は容認している」

とは非常に乱暴です。

「誰もが行きたい時に行きたい場所へ」を、山奥や過疎地域も含めて実現させるとしたら、その設備費、経費等を含めると私たちの支払う経費はいくらになるでしょうか?

滋賀県や川勝教授がべた褒めのオレゴン州ポートランドでは、車を手放せるくらいの公共交通の充実に対する初期投資は数千億円でしたが、滋賀ではいくらになるのでしょうか。

大阪や東京の都市部ならまだしも、滋賀で「誰もが行きたい時に行きたい場所へ」まで行うと、ほとんどが税金での運営になります。

そしてその金額はおそらくは、ここ1~2年で滋賀県が交通税を許容させるために発表する徴収予定額よりも、もっと増額されることが予想されます。そのことを踏まえて交通税について考えていきたいと思います。

追伸
そして、政府が口とお金を出して事業が行われると、その事業には市場原理が働きづらくなり、その分野の成長や技術の新陳代謝が遅滞することも合わせてお考えください

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