SKE48荒井優希さんが、『東京女子プロレス』に選手として参戦を発表し、デビュー戦を迎えたのが5月4日のこと。そこから約2か月、プロレス参戦5試合目にして、待望の初勝利を飾りました。

正直、ここまで本格的に取り組むとは思っていませんでした。いわゆるゲスト的な扱いで、それこそ『豆腐プロレス』の延長、遊びとまではいきませんが、プロレスの上澄みだけをすくい、客寄せパンダに徹する。

そのぐらいだと思っていましたし、それで良いとも思っていました。言わずもがな、荒井さんは現役アイドルです。プロレスラーではありません。多くを望むのが酷というものです。

でも、そんな甘い考えは、デビュー初戦に見事に覆されました。本気だ。本気で、東京女子プロレスは、荒井優希をプロレスラーとして育てようとしている。そして荒井優希は、本気でプロレスラーになろうとしている。

100の言葉よりも、1の試合です。たった1試合で、荒井優希は、その真剣さを伝えてきた。いやはやお見事です。これは、彼女をちゃんと選手として見なくちゃいけないと、目を覚まされました。

ただ、デビュー1試合目、2試合目は、まだプレデビュー戦というか、お披露目的な意味合いが強かったと思います。それでも佇まいや表情など、大物の片鱗は随所に見えました。しかし、まだ強烈なインパクトは残せなかった。

そんな彼女がプロレスラーとして開花したのが、デビュー3戦目の舞海魅星選手とのシングルマッチだったと思います。

逃げ場のないシングルマッチ。その一挙手一投足にすべての視線があつまる。まだデビューして間もない荒井選手です。緊張しないわけがない。でもどうでしょう。まるでそんな素振りも見せず、まるで緊張を楽しんでいるようにすら見えました。

ここが荒井選手の強さです。伊達にアイドルをやってきたわけではない。プロレスは、『魅せる』戦いでもあります。この魅せるという点において、荒井選手はプロです。培ってきた経験がある。観客の視線を集めて、それを力に変えるポテンシャルがある。

負けはしましたが、この試合で、『アイドル×プロレス＝無限大』の公式を見せつけた荒井選手は、プロレスラーとしての大きな一歩を踏み出したと思います。そういえば、デビュー戦の相手だった伊藤麻希選手も、元アイドルです。やはりアイドルとプロレスの親和性は高いのかもしれません。

デビュー4戦目では、宮本もか選手に、必殺技のFinallyを完全に防がれ、羅生門（変型コブラツイスト）でギブアップ。しかし5戦目にして、その宮本選手に完璧なFinallyを決めてデビュー初勝利。着実にプロレスラーの階段をのぼっています。

荒井選手の魅力は、前述した通り、『魅せる力』だと思います。ここにプロレスの技術と経験、そして説得力が加わってきたら、本当にとんでもないレスラーになるかもしれません。おべっかではなく、その可能性はじゅうぶんにあると思います。

その根拠として、荒井選手には、プロレスラーの色気がすでに備わっています。これはわたしの持論ですが、トップレスラーは、やられている姿に、なんともいえない色気があります。

この色気でまっ先に思い浮かぶのが、やはりアントニオ猪木です。猪木といえば、攻めている姿がよくクローズアップされますが、わたしは、「やられている猪木」が、たまらなく好きです。

猪木には、有名な「風車の理論」があります。相手の力や技を受けながら、その力を利用して、最後には勝つという方法です。なので、猪木は技を受けるんです。ものすごく受けるんです。おいおい猪木死ぬんじゃないかと思うぐらい受けます。

でも、気迫では絶対に負けない。目は絶対に死なない。絶対に呑まれない。やられながらも、戦っているんです。それは相手との戦いでもあり、観客との戦いでもあります。相手を引き立て、自分も引き立たせる。つまり、『魅せる』。

その背中は、もう色気ムンムン。徹底的に受けたあと、攻めに転じるキラー猪木もまた魅力的です。

猪木と荒井選手を同列に語ると怒られそうですが、プロレスラーとしては同じ土俵に変わりありません。技をかけているときの荒井さん、技を受けているときの荒井さん。ぜひ注目してください。色気があふれてとまりません。

これは一朝一夕で身につくものではないと思います。どう表現すれば、客（ファン）に伝わるかを、ずっと考えてきたのでしょう。それが一戦を終えるごとに磨かれ、次の試合ではさらに輝きを増していきます。

初勝利をあげた荒井選手は、「第8回東京プリンセスカップ」に出場します。台風の目となれるか。いまから注目が集まります。もちろん、勢いだけでどうにかなる甘い世界ではありませんが、プロレスラー・荒井優希の試金石となる大会になることは確実です。

アイドルとプロレスのハイブリッド・荒井優希。新たな世界を見せてくれる彼女の活躍は要チェックですよ！その魅力で、かけあがれ、プリンセス！