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つらつらと語るフィクション

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頭の中で出来上がったフィクションを形にしていきます。 明るみの布団の中、電車の座席でどうぞレベルの小説です。
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#3 色は吸う

#3 色は吸う

とりあえず王道の手段として、扉を死ぬほど叩いてみる。五体満足で身体中は動かせるので、色々試すことはできた。

扉は一切動かない。叫んでも声も聞こえない。八方塞がりであることは理解した。

その瞬間、チャイムが鳴り始めた。
「20時になりました。集合の時間です。」

聞いたこともないアナウンスが流れた後、扉が開いた。
あまりに不自然すぎたが、扉の先にいくことに。

と言っても、ひたすらクネクネ道が続

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#2 色は吸う

#2 色は吸う

「43番ください」

愛しかった相方が手元に来るだけで、妙に安心した。火を付けると、別に焦っていなかった心がさらに落ち着く感じがする。

コンビニの電灯に虫が集まるのを見ながら一服を済ませて、誰もいない寒い道を進んでいった。

「ただいま」も発さずに部屋に戻った。探しに出かけたのか?

「おーーーい」という声を出しても、返事はない。

寝たのか確認するためにベッドに向かったが、脱がれた下着が放置さ

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#1 色は吸う

#1 色は吸う

夕方4時26分。水色の布団から泣いた女性の顔を見上げていた。「信じてたのに!」という耳がキーンとなる手前の声を浴びせられた。「膝から崩れ落ちる」なんていう動きを見るのはこれで最後が良いと願った。

「ごめん」と一言だけ告げて、部屋をでた。すぐに次の女に電話をかけた。待ってたかのようなスピードで電話に出てくれた。
「家に行っていい?」
女性を騙せるこの魔法の一言を放ってみた。
「いいよ」
これで今日

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世界を終わらせて【17】

世界を終わらせて【17】

「間も無く〇〇便にご登場予定のお客様を案内いたします。」

ミカちゃんと空港でダベっていた。飛行機が遅れているみたいなので、二人で飲み物を飲んでいた。

これから二人で東南アジアのボルネオ島に向かう。海を優先した結果、島に行こうとなった。

「忘れ物ない?」「ないよ」前日、なぜか高揚して荷物が完璧になるまで確認したなんて言えない。

自身にとっては2回目の海外だ。正直、人と行くとは思ってなかった。

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世界を終わらせて【16】

世界を終わらせて【16】

「この前の話の続きしていい?」

ふと、こんなことを聞かれた。

「どゆこと?」とすぐに答えてしまったが、「あー」という言葉が無意識に出てきた。次の言葉が予想つかなかったので、「どうぞ。」とだけ伝えた。

「そっちはどう思ってるの?」と聞かれた。

見ず知らずの女の子を連れ込んだというだけで、重罪であることは間違いない。しかも相手のことを覚えていなかった。

「申し訳ないと思ってます」と自然と口か

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世界を終わらせて【15】

世界を終わらせて【15】

「あー」、とかなり言葉に詰まっていた。

「好きって言葉を聞かされたからね。ただ覚えてないんでしょ?」

すごく申し訳ないんだけど、と謝った。コレばかりは嘘をつけない。
なので、素直に「覚えてない」と言葉にした。

「そっかぁ」と上の空の返事が返ってきたが、彼女はなぜか笑顔だった。そして、ちょうど別れ道に差し掛かった。

ちょっと気まずい「じゃあね」をもらって僕は帰路についた。なんかドギマギした。

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世界を終わらせて【14】

世界を終わらせて【14】

「じゃあ、そういうことで!」ミカちゃんとの会議が終わった。

死ぬほど真面目な内容だった。脳みそを使いすぎて疲れたので、ビールを開ける。

ざっくりとやることを伝えられた。簡単にいえば、メンバー集めから始まり、イベント開催までが仕事となる。

イベントの収益は山分けという形になるそうだ。ミーティングも週に1回。

「思ったよりガチだなー」

ふと電話が終わった後、こんなことを思ってしまった。自分に

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世界を終わらせて【13】

世界を終わらせて【13】

その日の夜は久しぶりに一人になれた気がした。実際には、一人になりたくなかったのかもしれない。

インドから帰ってきてから人といる時間を増やした。ありがたい話で、周りの人間は話を聞いてくれる人が多かった。

音楽をかけながらここ最近のことを思い出した。そして、誘われた団体に入ることも。

ちょうどいい感じの曲が流れてきた。

「歩き出さないで変わる景色はない」

なんとなく背中を押された気がする。ま

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世界を終わらせて【12】

世界を終わらせて【12】

ミカちゃんと会う日。よくわからない和風の居酒屋で飲むことになっている。

インドから帰ってきてからお酒は口にしていない。

そろそろ自分でも言えることがある。めちゃくちゃ真面目になった!!!

夜遊びも無くなった。女の子から連絡は来るけど、基本的に忙しくて遊んでいない。それでもミカちゃんには会いに行っていた。

ーーーーーーーーーーー

都内某所。良い感じの個室だ。ちょっとおしゃれな和風料理をつま

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世界を終わらせて【11】

世界を終わらせて【11】

頭の中が大掃除前の部屋のようにごちゃごちゃだった。あの状況を軽く整理する。

・同じように海外にいた
・やたらと明るい子。
・明後日また会うことになった

ざっとこんな感じだろう。

少なくとも彼女の印象はガラッと変わった。まぁ会う前から印象を決めつけるのは良くないが、もっとスマートな子だと思っていた。

ただ、まぁ海外の話で盛り上がれたので満足な時間になったことは確か。

そして、「明後日また会

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世界を終わらせて【10】

世界を終わらせて【10】

「ミカです!」

想像の20倍エネルギッシュな女の子だった。若干、引いた。

どうやら、もう手元にカフェオレはあるので、注文は終わってるっぽい。

自分もミルクティーを頼んだ。インドに行ってからお茶にはまっている。前なら絶対コーヒーを頼んだだろう。

「まずはごめんなさい。」こちらから素直に謝ってみた。

「何がですか?」

いや、何がとか言われても謝る箇所が多すぎる。

・覚えてすらいないこと

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世界を終わらせて【9】

世界を終わらせて【9】

「どうも」「あ、はい。この前の。」「すいませんでした。連絡先知りませんでした」「まぁ、教えていませんでしたから」

なんだこのLINE。史上最強にそっけない。

ただ、仕方がないことだ。これは自分に罪があるとしか言いようがない。簡単に言えば、単独事故だ。

「とりあえず、色々と話を聞きたいので、一度ご飯でも行かないですか?」
「奢りなら」

なんだこいつ。想像の5倍は冷たかった。ただ、ここでキレて

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世界を終わらせて【8】

世界を終わらせて【8】

日本に戻ってきた。「ただいま!」なんて言う人はいない。
なんせ誰にも伝えていないから。

帰ってきて、SNSを更新したら周りから「!」がばかりのリアクションが多かった。

とりあえず飲み会に召集された。現地の生活、なんで行ったのか、インド人は綺麗か、色々聞かれた。

ここでハッキリしたことがある。みんな興味はあるんだ。

行動できた自分を褒めたくなった。良い気分。ただ、みんなと飲む安心感からお酒の

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世界を終わらせて【7】

世界を終わらせて【7】

インド滞在も最終日となった。

そこまで長期間で滞在する気が無かった。「外の風を浴びる」くらいの感覚で航空券をとったので、合計で4日間の滞在。

正直、物足りなかった。ようやくインドの食べものにお腹が慣れてきたころだった。

ただ、この数日間で自分の中の価値観が180度変わった気がしている。

日本に帰ってからこの感性がどうなるのか。自分にワクワクしている。

最後の夜。静かな時間が欲しかった。な

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