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ちょっと遠くへ【長瀬萬純さんの個展へ】

仕事を辞めてからというもの、電車やバスで30分以上かかる場所へ行っていなかった。遠くに行くのが億劫だった。
外出はハローワークに行ったり、近所を散歩するくらい。

たまには遠出した方がメンタルには良さそうとは思いつつ、なかなか腰が上がらなかった。

twitter(X)で心惹かれる絵を見つけた。作者は長瀬萬純 さん

仄暗い夜の森。動物の頭蓋骨で作られたようにみえる仮面をかぶった大きな生き物が光を灯している。その足元に集まる人と思われる生き物。

ダークな雰囲気がありながら、やさしさを感じる絵だと思った。

近々、個展を開催するようだ。

長瀬萬純 さんの個展「露払い、畏れ遊ぶ夜」の開催は2週間後だった。会場「gallery hydrangea」の最寄り駅は曳舟。だいぶ時間がかかる場所だ。外出したくないモードが継続していた私だが、早々にDMハガキ送付してもらうためにフォームを送信していた。
あの絵を直接見たいと強く思ったのだ。



個展開催の数日前。個展の開催案内のハガキを送付いただいた。
楽しみなのだが緊張してきた。

楽しみで緊張する感覚は久しぶりだ。

個展に向かうため、最寄り駅に向かう。
雨が急に降ったり止んだりする不安定な天気。

駅でICカードに入金し、改札をくぐりホームへ。

時刻は昼過ぎ。テスト期間等で下校時間が早いのだろうか、ホームには高校生のグループが目立つ。
近くの男子高校生が「古事記を読んだけど~」というようなことを話している。

十数分後、ホームに電車が到着したので乗り込む。乗車率は5割程度だろうか。3人掛けシートの端に座る。ドアが閉まり電車は走り出した。

移動時間が長くなるので本を持ってきていたが読む気にならず、車内広告を眺める。

クレジットカード、有料老人ホーム、電機屋の決算セール、ゼクシィ、ブランド物の買取、自己啓発本、排水管洗浄、脱毛。

見ていたらそこはかとなく不快になったので、やはり本を読むことにした。

本を読むのに倦んできたら窓の外をぼーっと見ていた。

何故自分が電車内の広告を不快に思ったのか、ぼんやり考えていたらいつの間にか眠っていた。
はっと起きたら乗り換え駅だったので慌てて電車を降りる。

何度かの乗り換えを経て曳舟駅に着いた。ここから会場まで徒歩10分くらいのようだ。幸い雨は降っていない。

駅から少し歩くと、下町風情の残る町並みに変わった。


小さな公園も

肉屋や魚屋、酒屋、たばこ屋、畳屋、とんかつ屋、和菓子屋。下町風景のある環境で育ったわけではないが懐かしさのようなものを感じる。
個人経営の魚屋は最近、本当に見かけなくなった。


カバンは井上

通りを歩いてしばらくして会場のギャラリー「gallery hydrangea」に着いた。


gellery hydrangea

玄関ドアにはカーテンがかかっているので、中の様子がわからない。ドキドキしながらそっとドアを開く。

ギャラリーは洞窟のような空間に感じた。ランタンのような温かみのある小さな照明の下、作品が数多く展示されている。

twitter(X)で見かけた今回の個展のメインビジュアル『鎮めの夜』はもちろん、素晴らしい作品ばかりだった。

作者の長瀬萬純さんが在廊しており、絵のモチーフ等作品制作についてお話を伺うことができた。
お話を伺ったなかで印象に残っていることがある。額が先にあって、それに合うように描いた作品があるという話だ。絵画を見るときに額に注目するという視点はなかったので、絵を愉しむためのアンテナが増えた気がしてちょっと嬉しい。

※会場の様子はこちらのgellery hydrangeaさんのtwitter(x)からどうぞ。

ギャラリーを2周くらい回った後、ポストカードを購入して会場を出た。

雨が振り出していたが、久しぶりに良い気分だった。曳舟駅に向かう。


駅への帰り道、スカイツリーが見えることに気づく

行きと同様、たくさんの乗り換えを行う。まだ夕方早い時間だったので電車があまり混んでいなくて助かった。満員電車は本当に苦手だ。

アパートに帰り着くと、やはり疲れていたのだろう、ちょっと横になったら1時間くらい寝ていた。

疲れたが、久しぶりのちょっとした遠出は楽しかった。

買ってきたポストカードは部屋に飾った。考えてみれば部屋になにかを飾ろうと思ったのも久しぶりだ。


それではまた。











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