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村田朋泰

自分がやってきた仕事の中に、アーティストのテクニカル支援というのがある。その手伝った作家のなかでも村田朋泰さんは異質で、作家性が強く、デジタルとは少し距離のありそうな作家である。

村田作品として馴染みがあると思うのは、Eテレでの森のレシオだろうか。MR.ChildrenのHEROのPVの方を知ってる人も多いだろうか。立体アニメーションなど映像の作品や、インスタレーション作品を作るアーティストだ。

最初に手伝った作品(2006年)

「俺の路 -TOKYO MONTAGE-」という大きな個展のなかでの1つ、さかだちくんの背後にあるピコピコ光るものの制御を手伝った。

これのときは、作品の映像をMacで再生していて、その中のピクセルの色をLEDに表示している。ランダムに光ってるように見えて、実は映像だったりする。さかだちくん、懐かしい。

というか、上記のリンク本当見てほしい。村田さんの映像しか見てない人はビビる規模の個展。映像作家なのに空間に飛び出していく感じはほんとびっくりした。あと、世界観が厚い。なんか理解できないようなぶっ飛んだ感じもあるんだけど、納得感があるというか、そういう気持ちにさせてくれる。すごいのに参加したなって思った。

村田朋泰展/百色旅館-さむらいイカが通る-(2007年)

これは自分の中では大作。古いジュークボックスを改造して映像のジュークボックスにするためのシステム開発を担当した。

上の映像の再生部分は、村田さんが作ってて、古いブラウン管のテレビを使っていい具合にレトロになってる。

本物の古いジュークボックスを手に入れたとのことで、それを修理してほしいという依頼だったんだけど、レコード部分がすでにグニャグニャで、これを修理するのは自分には手間がかかりすぎる。「Macを使っていいか」という相談をし、「Mac入れるなら映像も出せるね」ということになり、映像を再生できるジュークボックスに発展。

1. 元プラン 
2. 松山からの提案
3. 提案を飲み込んで発展
4. どちらも想像してなかったいいのが出来る

村田さんとの掛け合いはこういう展開がおおくて、本当にこちらとしてもやりがいがある。以下のリンクで、ジュークボックスに入っている映像の一部がみられる。ぜひ見てほしい。

アートフェア京都(2010年)

これの映像を生成するプログラムを手伝った気がする。元の映像のピクセルを分解して、RGBの球に分け、それを明度か何かで高さ方向にずらしてみたいな、映像立体化的な処理をするもの。それを立体に投影。


AMETSUCHI(2016年)

相談されたときは、「能の舞台をミニチュアで作る。屋根の下に雨を降らせたい。」という話だったと思う。そして、「屋根の下にある富士山に太陽の動きを感じさせる影の動きを出したい」というのがプラスされた。屋根の下に富士山?屋根の下に雨?とかわからないことはたくさんあるけど、村田さんの表情には迷いがないので、世界観はあるんだなと思い、野暮なことは言わずに話を進めた。

まず、雨については、MOMENTumを作った後だったので、応用することで循環システムが作れる。これは問題なさそう。

光りは、最初は電球を太陽にみたてて、それを動かす or たくさん壁につけてそれを制御っていう話をしていたが、表現としてそれではうまくいかないと判断。やったことないけどプロジェクションマッピング的なことを提案。

富士山の造作をKinectで立体スキャンし、そのモデルデータを使って影の動きをopenFrameworksでリアルタイムレンダリングし、それをマッピング用にいくつかのパラメータで平面に投影しプロジェクターで実物に投影。うまくいった。

この作品、なんといっても茅葺きの屋根がすごい。富士山の造作もいい感じで、更に雨も降る。展示空間に入ると水の匂いがして、リアルな雨の音もする。独特な世界観に集中していける良い展示になっていた。

Mt.Onokoro(2016年)

AMETSUCHIのマッピングのシステムを応用したいとの話しがあり、別の山の造作に対して影を落とす投影をした。プログラムはたしか微調整だけで対応できた気がする。光の動きが表現される。

ニューヨークでの展示でこのスケールのものを展示したとか。素晴らしい。


Omen(2018年)

森の表現の中の木々を光らせたいとのオーダーで、光りを一本ずつ制御する仕組みを作った。演出の作り込みはこちらではやりきれないので、映像を入れ込むとそのとおりに木が光るという仕組みを作った。

木の光が群で絵を表現するということで画面に見えてしまうのではないか(デジタル感が強すぎるのではないか)と心配したが、展示を見に行くと、別のプロジェクターを追加し月明かりの中の雲の影みたいな表現が追加されていて、それがとても良かった。なんというか、雲の影の表現がプロジェクターを使っていながらも、デジタル的な匂いがしない見え方になっていて、これがあることでミニチュアの世界に焦点があうようになっていて、すごくいいバランスになったと思った。

Reborn Art Festival 2019

そして、今年2019年8月からのReborn Art Festival 2019での展示を手伝っている。AMETSUCHI、Omenの進化版、映像ジュークボックスが展示されるようだ。

この展示の作業でジュークボックスを10年以上ぶりにみて、なにか込み上げるものがあったので、この記事を書いてる。村田さんとの付き合いも長いなーとか、作風も変わっていってるし、テクノロジーの使い方も変わったなーとか、ジュークボックス最高だなーとかいろいろ。

今回の展示での新規開発は主にOmenの進化部分だが、それぞれ再展示ということで微妙に修正を加えている。AMETSUCHIは初の水道を使った制御システムを作ったのが、うまくいきそうだ。循環システムはいろいろと難しい部分があるが、今回の水道のシステムはシンプルな構造になるので長期の展示にも耐えると思う。

Omenがどう進化したのかなど、詳しいことはまた写真が揃ったところで報告しようと思う。

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