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irony.

幼なじみを「白袴さん」と呼んでからかっている。

病気が見つかって、それはあまり性質の良くないもので、おそらく一緒にいられる時間は長くないと本人が言っていた。

そうか、貴方は急にはいなくならないのね。
準備の時間をくれるのね。
けど、知ってる?
どちらにせよ、悲しいことに変わりはないのよ。

父親が死んだって泣かなかった。
だから、貴方が死ぬと聞いたって、まだ泣かない。

どこでだって泣かないし、傷つかない。

だからどうかお願いだから死なないでって言葉だって、ちゃんと飲み込むから、貴方が大丈夫なフリをしなくて済めばいい。

痛いも辛いも怖いも何もかも変われないから、せめて未練とか後悔とか全部残してくれたら良い。

「俺で良かった」って言うから視界が歪む。
私だってきっと「私で良かった」って言ったと思う。
生前贈与の話なんてするから笑っちゃったし、白袴さんって長くて紺屋さんって言ったりめちゃめちゃだ。

貴方が居ても居なくても、生きていけることが少しだけ恨めしい。

起こるはずのない奇跡を期待してしまう。


私は何を望んだのかな。
運命だって言うなら中指立てて「地獄へ落ちろ!」って叫ぶわ。

こんな経験、もう二度としたくないって思ったのに。
二度目があるのね。

嫌だな。私きっと、少し泣いたら、また笑ったり出来るのよ。

そのときに「薄情だな」って責めるあなたはいないのよ。

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