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ゲームレビューに出現する特定の単語の頻度とメタスコアは関連しているか?

【はじめに】

ゲームが発売される度に世界各国のレビューサイトでそのタイトルをプレイした感想などのレビューがアップされます。それらの評価を数値化した上で、最終的に「メタスコア」と呼ばれる点数がつけられます。ゲームレビューに出現する単語の頻度とメタスコアの高低に関連があれば何が「ゲームの面白さ」を特徴づけている要素なのかの知見が得られそうだなぁと思い、調べてみました。

簡単に筆者のスペック等
・年齢 31歳
筆者的至高のタイトルは「ホライゾンゼロドーン」。世界観、操作性、やりこみ要素、グラフィックすべてにおいてハイクオリティすぎて、感動しました。
・趣味で統計学を勉強中(統計検定準一級まで取得済み)
・データ分析の実務経験はなし
・kaggle 銅メダル1個所持(kaggle expert目指して勉強中)

※メタスコアとは・・・
Metacritic社が独自に計算しているゲームの評価を0~100点で数値化した指標です。スコアは各レビューサイトのレビューを数値化してそれの加重平均をとったものです。より品質の良いレビューを記載するレビュワーのウェイトが重くなるように計算しているそうです。(ウェイト値は非公開)
詳細は以下の「HOW DO YOU COMPUTE METASCORES?」に記載があります。

【使用データ】

以下URL先のPS4上位5作をピックアップして調べました。

  1. Red Dead Redemption 2(メタスコア:97点)

  2. Grand Theft Auto V(メタスコア:97点)

  3. Persona 5 Royal(メタスコア:95点)

  4. The Last of Us Remastered(メタスコア:95点)

  5. God of War(メタスコア:94点)

レビューサイトは各タイトルで5つずつ選んでいます。
選定基準は以下です。
・英語でレビューが書かれている
・なるべく100点に近いメタスコアをつけているレビュー

メタスコアの高いタイトルと低いタイトルで出現する単語が異なる傾向があるのかも気になったので以下のタイトルを追加でピックアップして調べました。

・メタスコアが低い5タイトル
1. Those Who Remain(メタスコア:49点)
2. Mighty Morphin Power Rangers: Mega Battle(メタスコア:49点)
3. Red Goddess: Inner World(メタスコア:49点)
4. Vane(メタスコア:49点)
5. The Amazing Spider-Man 2(メタスコア:49点)

【分析方法】

レビュー内容をスペースと改行ごとで分割して単語を抽出しました。
抽出した単語はすべて小文字にしています。ピリオドやダブルクオーテーションなどの記号は削除してから単語数をカウントしました。
言語はpythonを使いました。
コードはこちらです。

【結果】

1位~150位ぐらいまではどのタイトルも冠詞「the」や接続詞「of」などが多く、特徴的な動詞や形容詞が少なかったので、出現頻度が151位~300位までの単語を見てみました。
すべてのタイトルの結果を載せると長くなるのでメタスコア1位の「Red Dead Redemption 2」の結果を載せます。
以下の図1、図2はメタスコア100点のレビュー5つの文章をひとまとめにして単語の出現頻度を調べた結果です。

図1 【Red Dead Redemption 2】出現頻度が151~230位の単語
図2 【Red Dead Redemption 2】出現頻度が231~300位の単語

「incredible(信じられない)」、「open-world」、「staggering(驚異的な)」などが目に止まります。
実は各タイトルのレビュー内の出現頻度151位~300位の単語について、どのレビューにも共通して現れる単語はありませんでした。高メタスコアのタイトルの場合、同じぐらいのスコアだからといってレビューに同じような表現が使われている訳ではないようです。「incredible」は3タイトルのレビューには出現しましたがほかの2タイトルでは出現しませんでした。

では、メタスコアが低いタイトルではどうでしょうか。
同様にメタスコア49点の「THOSE WHO REMAIN」の結果のみ図3、4に示します。

図3 【THOSE WHO REMAIN】出現頻度が151~230位の単語
図4 【THOSE WHO REMAIN】出現頻度が231~300位の単語

高メタスコアのレビューにはなかった「frustrating(イライラする)」が4回、「frustration(イライラ)」が3回出現しています。frustrate系の単語に絞って高・低メタスコアのそれぞれのタイトルでの単語出現回数を数えました。

上記の表よりfrustrate系の単語はメタスコアの高低によって出現頻度が変わると考えてよさそうです。それではこれらの単語はどのような文脈で用いられているのでしょうか?

【高メタスコアのタイトル】
Grand Theft Auto Vの場合

Moving in and out of online sessions can still bear frustrating delays, but things have improved over PS3’s GTA Online, while boasting a higher player count of 30 and better-looking world to boot.
(オンラインセッションの出入りでイライラする遅延は相変わらずだが、PS3の「GTAオンライン」よりは改善されており、プレイヤー数も30人と多く、世界観もより良くなっている。)

出展:https://www.psu.com/reviews/grand-theft-auto-v-ps4-review/

オンラインでプレイする際の遅延について言及されています。

God of Warの場合

Past God of War games have had their share of problems.
(過去の『ゴッド・オブ・ウォー』には問題があった。)
~中略~
And, probably most importantly, Kratos was a boring character – a one-note anti-hero with a single drive and zero range, making him hard to sympathise with, predictable and downright frustrating.
(そしておそらく最も重要なのは、クレイトスが退屈なキャラクターだったことだ。一本調子のアンチヒーローで、行動範囲も狭く、共感しづらく、予測可能で、実にイライラさせられるキャラクターだったのだ。)

出展:https://www.criticalhit.net/review/god-of-war-review/

過去作の良くなかった点について言及しています。今作ではそれが改善されているという話に繋がっており、今作に対するネガティブな感想ではありません。

Combat is also made harder hitting as a result of the camera change. You’re closer to the violence as it unfolds, and while sometimes not being able to see what’s happening around you can cause frustration, it makes for battles that are more tense and strategic.
(また、カメラの変更により、戦闘はよりハードになった。暴力的な展開がより身近になり、周囲が見えないことでイライラすることもありますが、その分、緊張感と戦略性のあるバトルが楽しめます。)

出典:https://www.gamespew.com/2018/04/god-of-war-review/

カメラ視点が前作の固定画面からプレイヤーの肩越し3人称視点に変更されたようです。そのため、周囲が見えにくくなってはいるが、結果的にバトル体験について戦略性の向上などのポジティブな結果を生んでいるとの評価です。

【低メタスコアのタイトル】
frustrate系の単語が使用されているすべての文章を提示すると長くなるので一部を引用します。

THOSE WHO REMAINの場合

①One frustrating puzzle has players shifting back and forth between the game’s two realities for whatever reason only to be forced to bring oil barrels across a long hallway onto pressure plates.
(あるパズルは、プレイヤーが何らかの理由で2つの現実の間を行き来し、長い廊下を渡って石油の樽を圧力板の上に運ばなければならないというもので、イライラさせられる。)
②It truly is a shame that the bulk of Those Who Remain is built upon frustration. The puzzles and their solutions here are so bland and cookie-cutter that the little feeling of reward for solving them eliminates any desire to do so.
(Those Who Remainの大部分がフラストレーションの上に成り立っているのは、本当に残念だ。パズルとその解法があまりにも無難で無個性なため、解いたときの達成感が少なく、やる気が起きないのだ。)

出展:https://digitalchumps.com/those-who-remain-review

単調で時間のかかる面倒なゲームシステム難易度の低さゆえの達成感の少なさに対する不満が書かれています。

MIGHTY MORPHIN POWER RANGERS: MEGA BATTLEの場合

One issue I didn’t expect to encounter in this day and age is how artificially frustrating progression can be. You only get 1 life, and when that happens, you have to restart a level from the beginning, with no checkpoints or extra lives to be found.
(この時代に遭遇するとは思ってもみなかった問題は、進行がいかに人為的にもどかしく感じられるかということです。ライフは1つしかなく、そうなるとレベルを最初からやり直さなければならず、チェックポイントや余分なライフは見つからない。)

出展:https://www.newgamenetwork.com/article/1619/mighty-morphin-power-rangers-mega-battle-review/

チェックポイントが少ないなどプレイヤーの利便性を考慮していないシステムに対して不満を述べています。

RED GODDESS: INNER WORLDの場合

Hope you have tons of patience because you will begin dying over and over again. Yes I know platforming games are supposed to be a challenge but this is more frustration than anything.
(何度も何度も死ぬことになるので、忍耐力があることを願います。プラットフォームゲームはチャレンジングであるべきだと思うが、これは何よりもフラストレーションがたまる。)
Again, I have no problem with a challenge, but this is just cheap and frustrating especially when you have to wait to respawn over and over again.
(挑戦することに問題はないが、何度も何度もリスポーンするのを待たされるのは、安っぽくてイライラする。)

出典:https://www.gamingnexus.com/Article/4868/Red-Goddess-Inner-World/

度を超した難易度の高さ再チャレンジするまでにかかる時間の長さに対して不満が述べられています。

VANEの場合

This segment of gameplay immediately shines a light on two major issues with Vane. The first has to do with the camera, ~中略~ That works out fine if you're the only creature there, but when you have an entire flock present and you're trying to figure out if you're facing the right way, the refusal to zoom into your bird is frustrating.
(このゲームプレイで、「Vane」の2つの大きな問題点が浮き彫りになりました。1つ目はカメラで、~中略~ 自分一人しかいない場合はいいのですが、群れでいるときに自分の向きが正しいかどうか判断するのは難しいので、鳥にズームインしないのはイライラします。)

出典:https://worthplaying.com/article/2019/4/15/reviews/113810-ps4-review-vane/

操作性の悪さがネガティブなポイントだと指摘されています。

THE AMAZING SPIDER-MAN 2の場合

New York City doesn’t look as sharp as I would have liked, enemies look too generic and the graphical glitches are frustrating to say the least.
(ニューヨークの街並みは思ったほどシャープではなく、敵の姿も一般的すぎるし、グラフィックの不具合にはイライラさせられる。)

出典:https://cogconnected.com/review/the-amazing-spider-man-2-ps4-review/

解像度が低くなるバグがあったようで、それについて言及されています。

【まとめ】

・高メタスコアのタイトル上位5作について、レビューに出現する単語とメタスコアには関連性は見受けられない
・低メタスコアのタイトルの場合、「frustrate」系の単語が高メタスコアのレビューよりも多く出現する傾向がある

低スコアのレビューを見る限り、主にゲームの「frastration」を高める要因としては以下が挙げられます。

1. 時間がかかるだけの単調なゲームシステム
2. 難易度が低すぎることによる達成感の少なさ
3. チェックポイントが少ないなどプレイヤーの利便性を考慮していないシステム
4. 単調なバトルシステム
5. 度を超した難易度の高さ
6. カメラの視点移動のしづらさなどの操作性の悪さ
7. バグの混入

この点が指摘に上がらないようなゲームであれば評価される作品になるかもしれません。確かにこれまでのゲーム体験から考えると、上記1~7の点はゲームの面白さ・没入感を低減させる原因になると思います。
ゲーム経験がある方でこれまで「面白い!」と思ったゲームには上記の要素が少なかったことに気づくのではないでしょうか。

【感想】

当初目的としていた「ゲームの面白さを特徴づけている要素を探す」という目的は達成できませんでしたが、「面白くない」ゲームがどんな要素を含んでいるかを自分なりに言語化することはできました。ゲーム開発者にとっては当たり前の要素だと思うので新しい発見ではないかもしれませんが、自分的にはためになって良かったです。

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