写真日記 2024/04/5 「友人Pとひさびさの頂へ」
(2024/04/15記。見事に三日坊主。先週末の山行の写真すら上げてなかった。というか、久しぶりに頭がからっぽになるくらい肉体を酷使して、すっきりして、いったん表現欲から解放されたのかもしれない。物は言い様だ。なんたって翻訳家は言い換え職人だからな)
登山基地のフォーチェ村で顔なじみのレストランの面々に、来るの何年ぶりだ? と言われるくらいだから、本当に久しぶりだったのかもしれない。それだって年下の友人Pがシビッリーニ山地(写真ギャラリー)に連れて行ってくれと言うから、じゃあ行くか、と重たい腰を上げたのであって、ひとりじゃ、いつあの高みに戻れたかしれない。
今年も降雪が極端に少なかったが、上の方はまだ雪も残っているし、アイゼン・ピッケルを使ったことのない雪山初心者のPを連れていくのによいコース選びに少し悩んだ。結局はいつものフォーチェ(945m)~トレ・ファッジ(アルジェンテッラ東陵)~アルジェンテッラ山(2200m)に向かう。
下から見た感じ、2000m付近まで雪はなさそうだったからとりあえずそこをめざし、雪の状態によっては彼にもアイゼンを履いてもらうつもりでアルミの軽量10本爪を持たせた。結果的に雪は2100mの主稜線直前で5分程度の、滑落しても危険のない斜面のみで、キックステップ直登で済んだ。
へろへろになりながら登頂できたのはとにかくよかった。Pも喜んでくれた。へろへろになったのはもちろんこちらの体重増とトレーニング不足のためだが、それでも歩けたのがおもしろいと思った。何がおもしろいかって、いつものようにひとり歩きであれば、きっとさっさと心が折れて、適当なところで適当な言い訳をして引き返していたはずなのに、10歳は若い彼にいい感じに引っ張ってもらったおかげで登れた、という点だ。ちょっとした発見をした気分。
https://x.com/kirokubito/status/1776280954576765208
しかも車まで彼が運転してくれたので、下りたあとの山小屋でも気兼ねなくビールを飲むことができた。うん、悪くない。
僕はずっとひとり歩きだったし、これからも基本的にひとりなのだろうけれど、たまにはこういう山もいいなと思った。もちろん山に対して謙虚になることのできる誰かとならば、という条件付きだ
山歴の浅い彼はいい意味でまだ感覚が若いのだろう、自分との闘い、なんてことを哲学的につらつら考えながら歩いていたらしく、形而上学的にも非常に満足したようで、やたらと感謝してくれた。誰かのためになれて、自分も楽しい、というのはいいものだ。うん、やっぱり悪くない。次回までに少し片脚スクワットとカーフレイズをやっておこうと思う。
以下、ヘビの写真あります。
ヘビ苦手なひとはそっとページを閉じてください。
そうそう、今回の山行で唯一やばかったのは残雪ではなくマムシ。絶滅危惧種のヴィペラ・ウルシーニ(日本語ではノハラクサリヘビ?)という小さなマムシを彼が踏みかけたのだ。マムシといっても毒性は低いらしい。
僕も経験あるけれど、蛇って、あんがい変なところで会うので、ひやっとして本能的に飛び退いた拍子に下手するとこっちは崖から落ちそうになったりするのです。それが毒よりやばい。なんでもなさそうな場所での滑落事故って案外この手のパターンが多いのかも。春山でひなたぼっこ中の蛇には注意しましょう。注意のしようがあまりないのだけれど。
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