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871ンスタライブ #025(w/熊谷涼花さん)

#871ンスタライブ #025
2021年1月8日(金)
テキスト:宙組

主催:柳井貢(以下:871)
ゲスト:熊谷涼花(以下:熊谷)

(871) こんばんは。今日は『Saucy Dog』(以下:サウシー)とか『ユレニワ』とか、奇妙礼太郎さんとかのMVや映像を撮ってもらった熊谷涼花さんを呼んでいます。

(熊谷) こんばんは〜!

(871) こんばんは!a.k.a.熊ちゃんです!「神戸の方でしたっけ?」ってコメントきてるけど、神戸の方なの?

(熊谷) そうなんです。兵庫県神戸市出身です。

(871)  今、仕事は映像だけ?

(熊谷) 今はもうバイトもしてないです。柳井さん様様です(笑)でも一昨年くらいまで映像系のバイトをたまにしてました。安定してなかったので、家賃分だけでも、って毎月5~6万ぐらいはバイトで稼いでましたね。

(871) なるほどね。音楽の映像をやりたいなって思ったのは学生時代の時?

熊谷さんにとって強烈な記憶として残ったPV撮影ー871との出逢い

(熊谷) そうですね。柳井さんが大阪で『cutman-booche』さんのPVを撮るってなった時、私が大学3年生とか4年生とかだったので、もう10年前とかですね。その時、大学の先生が、「PV撮るから興味ある人来なよ」みたいに言ってて、お伺いしたのが初めてです。それまでもカメラアシスタントのアルバイトはずっとしてて、カメラマン志望でやってたんですけど、cutman-boocheの現場はすっごい覚えてます。柳井さんがめっちゃキレてて(笑)

(871) ははははは(笑)

(熊谷) PVってこんな情熱的に作るものだと思ってなくて(笑)監督とすっごい「いや、こっちの方がいいよ!」みたいに言ってるのがめっちゃかっこよくて。「え…!PVいいなぁ…!」って思ったのを覚えてます(笑)

(871) なるほどね。松平さんに連れてこられてたよね?

(熊谷) そうです。松平さんが私の大学のゼミの先輩でした。コメントで質問下さってるんですけど、私は関西大学っていう普通の四大出身で、映像系の大学出身ではないです。で、cutman-boocheのPV撮影の時に制作で来てた女性の方が「うちの会社、映像系で募集してるよ」みたいなのを教えてくれて。応募して受かって大学卒業後は関西のテレビの仕事をしてました。『よ〜いドン!』やってましたよ。カンペ振ったり、芸人さんとお仕事したり。

(871) へえ〜!そうなんだ!

(熊谷) でも早い段階で、“これは映像の仕事じゃないな”って気づいて。テレビの仕事は“テレビの仕事っていうジャンルだったな、と。そういうタイミングでチラチラあのPVの現場を思い出すんですよ(笑)柳井さん達が喧嘩しながら映像作ってたり、照明さんが「ちょっと待って!!」とか言って時間を一生懸命作ったりしてるのを思い出して。めっちゃかっこよかったな〜って思ってる時に、私の師匠になるんですけど、MV監督のスミスさんっていう、『フジファブリック』さんとか『氣志團』さんとかのPVを撮られてる監督さんが、急にTwitterで「弟子募集します」みたいなのを書いてて。これだ!!と思ってDM送って、あれよあれよと上京したのが24歳とか25歳とかの時ですね。

(871) スミスさんの手伝いをするようになったのも、そういう飛び込み的な感じなんだ!

(熊谷) そうです!スミスさん、定期的に募集して下さってて。私達は一期生です。

(871) そう考えると、熊ちゃんと柳井の縁はやっぱ凄いね。俺、cutman-boocheの現場をそんなに印象深く思ってもらえてるとはそこまで強く思ってなかったし、この後喋るけど再会したのが、『天才バンド』の『君が誰かの彼女になりくさっても』だよね。あれ、オーダーしつつ本人達は出ません!とか言って(笑)

(熊谷) あのPVめっちゃ最高なんですよね!皆さん是非、観てください!

(871) そこでスミスさんにオーダーしたら、打ち合わせについてきたのが熊ちゃんだったっていう(笑)

(熊谷) 私もうその段階から、「あ!あの、cutman-boocheの撮影でめっちゃキレてた人だ!!」って思ってて(笑)
あ!もう一個cutman-boocheの印象深いエピソードがあるんですけど、私みたいなペーペーで経験値無いやつが手伝いに行ったのに、柳井さんがわざわざ、「ありがとう」ってメールを下さって。ライブがあるからって梅田シャングリラに呼んでくれたんですよね。一緒に手伝いに行った友達と観に行ったんですけど、こんなことあるんだ!って思いました。で、打ち上げも参加できるならちょっとでもおいでよ、って言われて行ったら、皆が「ありがとう〜!」って言ってくれて。「えー!すごーい!」って思ったの覚えてます。あの世界が本当に憧れでした(笑)
で、弟子をやって2年目、2016年くらいの時にスミスさんに天才バンドのお話がきて、柳井さんと打ち合わせした時に「あ、あの人だ!」と思ったんですけど、ビビっちゃって全然お話しできなくて。

(871) そうだよね。「なんか見たことある子なんだけど、どこで会ったんだっけな」くらいの感じだった記憶がある。

(熊谷) 最後の撮影日に、メンバーが出ないのに千葉まで柳井さんがわざわざ来て下さったんです。「撮影ありがとうございました」みたいな。凄い良いPVで、曲も良くて、スミスさんも凄い素敵な映像撮ってて、柳井さんがそうやってわざわざ挨拶に来て…ってなって、今しかないな!と思ってその時に初めて、「cutman-boocheの時に実はお会いしてて…」って言ったら、柳井さんが「あ〜!!」みたいな。「あ、これは!嘘の“あ〜”だな!」と思いながら(笑)そこでTwitterをフォローし合って、柳井さんが私に「いつかまた、お互い大きくなったら仕事しようね」みたいなリプライをくれて凄い嬉しくて。それから2018年とかの、サウシーの初ツアーがあるタイミングでご連絡頂いて、っていう感じですよね。

(871) 奇妙さんよりサウシーの方が先だっけ?

Saucy Dogを撮影することになった経緯

(熊谷) それはぶっちゃけて話すと、私が自立したいなと思ってスミスさんのアシスタントも辞めたタイミングに、「仕事欲しいです」みたいなことをネットに書いてたら、柳井さんが「1回お会いしてお話しませんか?」みたいな連絡を下さったんです。「お話ししたいです」って言ったら、「じゃあ今日ライブがあるのでよかったら現場来てください」みたいなことを言ってくれて、柳井さん何の仕事くれるんだろう、と思ったら、「何かしたいことある?どういう映画が撮りたいの?」って言われて(笑)

え!何だこの質問は!と(笑)「もちろん一番はMVを撮りたいんですけど、やっぱり私は自分でちゃんと見たものを撮っていきたいかもしれないです」みたいな話をしたら、奇妙さんのPVのお話と、「うちから今度出る3人組のバンドがいて、もしかしたら相性いいんじゃないかな?一回ライブ行ってみない?」みたいな感じで、サウシーは始まりましたね。

(871) ほぼ(奇妙さんと)同時っていう感じだったんだ。

(熊谷) そうです。だからもし私が「○○撮りたいです」とか(名指しで)言ってたら、サウシーじゃなかったかもしれないと思うと、運命とか縁だなって思いました。

(871) 奇妙さんの方は、当時当て振りもしないスタイルだったし作るものにこだわりも強かったから、言い方は少し悪いけどある程度アーティストなり柳井なりが「こうして下さい!」って言ったら「はい。分かりました。そうします。」って言ってくれる人じゃないと作れなかった。監督はこういうものを作りたいからって喧嘩する時間はなかった。で、サウシーの方はなるべくずっと同じ人について回ってほしいっていうのがあったから、ある程度暇な人じゃないと嫌だっていうのがあったの(笑)

(熊谷) ははは(笑)言ってましたね!(笑)

(871) それが両方ハマって、これはもう熊ちゃん捕まえておくしかない!と思って。最近は自分が細々発注するわけじゃないし任せてるけど、俺からすると熊ちゃんが「Little Glee Monsterの仕事しました!」とか言ってると、売れやがって…みたいな複雑な気持ち(笑)

(熊谷) ははは(笑)いやいや(笑)でもリトグリちゃんもサウシーと同じ感じでずっとやってて。柳井さんみたいに、スミスさんからお世話になってる方がお仕事くれて、一緒に成長させてもらってるなって勝手に感じてます。

(871) お世話になった人とか、キッカケになった人が色々いるわけじゃん。そこにある程度配慮しなきゃいけないなって思ってるから我慢してるけど、自分の本音を言うと、俺が捕まえたって思っていたいみたいな欲求はある(笑)

(熊谷) スミスチルドレンですけど、柳井チルドレンです(笑)皆コメントで書いてくれてるけど、まさに「サクセスストーリー」ですよね。こんな話、私が一番まだ信じきれてないなって思います。

(871) まだまだこれからですよ。「熊ちゃん、納品1ヶ月でMVの納品お願いしたいんやけどいけるかな?」って言って「1ヶ月は無理ですね」って言われる時が来て欲しいよね。

(熊谷) 売れたいですね。サウシーで言うと、日吉“JP”純平さんとか白石達也さんとかがどんどん色んな仕事してて、やっぱお互いが得じゃないとダメだなって思います。私だけ、まだチルドレンのままなのでもっと修行を積んでちゃんと積んだ物をサウシーだったり、ユレニワに返していきたいとすっごい思ってます。それぐらい大切ですね。

(871) JPくんも白石くんもすごいなぁって思うし感謝もしてるけど、そこと比べて熊ちゃんがどうとかは全く思わないけどね。でも複雑なのが、サウシーのツアーのドキュメントを撮るってなったら基本的に熊ちゃんに来てほしいから、ある程度お暇でいてもらわないと困るっていうか、ある程度優先してほしい。でもいつかそこはジレンマがくると思うし、そうなった時に熊谷のことを120%わかってる弟子みたいな人がついてくるでも全然いいんだけどね。ただ、デカい仕事してるからいいっていうことも全然ないしね。

(熊谷) 丁度今コメントでも「売れるってどこまでいったら『売れた』なんですか?」ってありますけど、本当にそうですよね。

(871) だって、ミュージックビデオの監督のギャラって製作の総予算が上がったところでさ、監督は作りたいものにお金をかけるから結局手元にいくら残るんや、って。

良い作品を創るための投資は惜しまない

(熊谷) サウシーの『今更だって僕は言うかな』のPVを撮らせてもらったんですけど、それこそ予算がちょっと限られてて。でも柳井さんが、「熊ちゃんはやりたい人いる?」って聞いてくれて。
私はいつもお世話になっている「祭」っていう制作会社の山下くんっていうプロデューサーさんをお願いして一緒に作らせてもらったんですけど、マジで愛がなかったらあんなクオリティーで出来なかったなって私も思ってます(笑)愛と、メンバーの努力と、柳井さんや牛山さんや、A-Sketchの皆さんの協力がなかったら出来なかったなって凄い思いました。

(871) そうだね。伝わりきらないかもしれないけど、今出てきた山下くんっていうプロデューサーはさ、それこそオーラルとかで柳井が仕事しまくってる「祭」の家泉さんの後輩、っていう人間関係もあるから熊ちゃんのことも応援してるけど山下くんのことも応援してるみたいな背景の中で、そんなに潤沢じゃないけど、予算をちょっと小増しにしつつ、その分俺がむっちゃプレッシャーかけるっていう(笑)

(熊谷) そうですよね(笑)そこが柳井さんって凄いなって思いました。やっぱり、ある程度決まってる額の中でやらなきゃいけないけど、でもこっちが「こうやりたいから、もうちょっとだけこうしてもいいですか?」って言ったらちゃんと判断して、ダメな時はダメって言うんでしょうけど、今までダメって言われたことない気がします。

(871) くれって言われたら払うよ、基本。いくらでも使えとは言えないけど、俺ね、結構ギャラも予算もそうなんだけど、値段を言ってくれる人の方が好きなのよ。それって、その額以上の仕事をする自信がないと言えないじゃん。このぐらいの予算の中でやらなきゃいけないっていうのがないことはないけど、より良いものを作って、より売上を立ててっていうビジネスモデルでもあるから。ライブはキャパの上限が決まってるビジネスモデルだけど、CDは買ってくれれば買ってくれるだけ、サブスクで聴いてくれれば聴いてくれるだけ売り上げ立つから上限は決まってない。
その中で、どこまで制作費に突っ込むかっていうのは賭けではなくて、良いものが作れるならそこに投資をすればいいじゃん、とは思ってる。

「頼まれた予算の中で良い感じでやります」っていう人より、「絶対いいもの作るんでこの額は用意してください」っていう人にお願いしたいじゃん。

(熊谷) それ、柳井さん当たり前な感じで言ってくれますけど、結構柳井さん論だなって思ってます。今日その話言ってもらえてよかった。

(871) いやいや。俺だって若手の若手とかには、「ごめん、これだけでやって」ってお願いする時も全然あるけど、基本は聞くじゃん。「柳井さん、あれの請求書いくら出したらいいんですか?」って言われても「え、いくらでほしいの?」みたいなさ。「いくらでも良いですよ」って言われちゃうと、「え?300円でもいいの?」みたいな気持ちになっちゃう。それが嫌なんだったら、1日稼動で1万円なのか3万円か5万円なのか、自分の仕事の値段を言える人であってほしい。かける時間とかも含めて、自分の技術とか能力、ノウハウ、アイディアとかを仕事にする人にはね。そういう人と仕事したいかな。

(熊谷) 勉強になります!(笑)...でも、投資するっていうのが柳井さんっぽいなって思いました。私とかに対しても投資してくれてるなっていう。それこそ柳井さんとお仕事を始めた当初なんて、私マジでお金なくて。でもサウシーの仕事したくて。そしたら柳井さんが、「先にツアーについていく分のお金を振り込んであげるから、それだったら大丈夫?」とか「熊ちゃんはどうしたいの?どうなったらできるの?」っていう部分を踏まえてやってくれたので、私も適当にはできないというか。
もとから適当にはしないですけど、より返さなきゃなとも思うし、頑張りたいなって思えて。それが今まで繋がってるのが嬉しいなって思います。

(871) それはそう思ってやってますね。どんどんインターネットが4G、5Gってなってデータの通信量が増えていく中で、映像の重要性が上がってくるのは目に見えてる。その中で機材とか企画力っていうのはリファレンスが山ほどあるから、それなりにかっこいいものってある程度の知識と技術があれば作れる。そうなった時に、何に一番違いがあるんだろうって思うと俺は経験量だと思っていて。
熊ちゃんが、サウシーの初ワンマンから武道館に至るまでの時間を一緒に費やして、サウシーのことを見てきたっていう経験量は他のディレクターにいくら払おうが得られないものなんだよね。

この3~4年で見てきた熊谷だから撮れるものがあるだろうっていう価値を買うために、たかだか30万とか50万円のギャラを前払いするのなんか、俺からしたら全然安かったりする訳じゃん。

(熊谷) え〜〜。嬉しい〜〜。

(871) 俺からしたら、それだけ音楽なりアーティストなりに愛情があってまだ駆け出しで多少のペイメントをすれば、時間を投資してくれるっていうディレクターがそこにいたってことだよね。ちゃんと熊ちゃんがこっちの期待以上に応え続けてくれたから、今こうやって関係が続いてるっていうか。

バンドのストーリーを共に見てきた経験量の重要性

(熊谷) ありがとうございます。最近皆うまいんですよね、サウシーのファンの人とかがフォローしてくれて、カメラを持った写真とかをアイコンにしてる方がいらっしゃると、やっぱりライブとかを撮ってたりするんですよ。めっちゃ上手いわ!うまいし若いし、私も違う付加価値つけないと負けてまうわ!って(笑)もしかしたらその付加価値が、ずっと見てきた経験量とかそういう部分なのかなって、今思いました。

(871) 経験量はものすごい大事。例えば、もの凄いアイデアマンでお金の計算も上手で作戦立てるの上手で音楽マーケットのことをすごくわかってる人が、サウシーのマネージャーをやりたいって出てきたとする。でも過去何年のストーリーとかメンバーの考え方とか感情とかを知ってるか否かで言うと、俺とか一緒にやってるマネージャーとかの方が確実に分かってる訳じゃん。そこを担保しながらも出てくるやつに負けないように、こっちもマーケットとか今のトレンドの売り方とかプロモーションの仕方の勉強も頑張るけど、その経験量がそれぞれの仕事をしてる人にとっても資産になっていくんだろうなって思う。
俺がそこそこのディレクターに、ドキュメントをツアー毎にとっかえひっかえお願いしてたら、あの『今更だって僕は言うかな』のビデオはなかったわけじゃん。

(熊谷) そう思います。カメラマンもずっとサウシーのライブを撮ってくれてた子なので。私には私のサウシーがあるし、その子にはその子のサウシーがある。さっき話した山下くんとかも野音のパッケージやってくれたので、そこからの歴史とかそれぞれあるなって思います。

(871) 今回限りだろうなっていう人にはそんなギャラも払わないかもしれないけど、熊ちゃんに関してはちゃんとうまく続けば、将来のサウシーにとっての資産でもあるし、俺にとっての熊ちゃんの存在自体が資産になるなと思った。だから熊ちゃんに撮ってもらう為に多少の前払いするのなんかめちゃくちゃ容易い、俺からしたら。

自分の役割を限定せずに動けることの大事さ

(熊谷) 私以外にも、他のチームでそういう方がいらっしゃるのかな、と思うんですけど、そういうのって何か基準があるんですか?柳井さんの中でポイントみたいな。挨拶できるやつ、みたいな感覚。

(871) わあどうなんだろう。ちょっとわかんないけど、ガッツみたいなとこかな?読みが外れることも全然あるんだけどね。この人は将来的にこうなってくれたら凄い自分にとっても凄くありがたい人材になりそうだから、どんどん仕事振ろうとか、状況によっては仕事と別の形でギャラ作ろうみたいなこともあるんだけど、それが全部当たることもないし、借金肩代わりするみたいなこともあったし。

(熊谷) えー!(笑)そうなんですね!すごい!

(871) まあでもあれかな。損得勘定も働いてるし、プラスアルファ一緒に仕事してて気持ちいいかどうかみたいなことかな。オーラルとかサウシーのヘアメイクの鈴木くん(以下:ともくん)っているじゃん?俺、ともくんめっちゃ好きなんだけど、ともくんの象徴的な良いところは、撮影で「演奏シーン1回カット!メンバーさん休憩です!」ってなった時にさ、アシスタントさんは水出す、ヘアメイクさんは汗ふく、みたいな流れの中で、ともくんはギタースタンドを持って出られるヘアメイクなのよ。

勿論、自分のセクションをプロフェッショナルにやりこなすのは最低限じゃん。だけど現場で起こりうることって役割通りには動いてくれないっていうか、お見合いする場面って絶対あって。

ライブの現場で、ステージドリンクがなくなった時に水を出し直すのは基本的にはマネージャーの仕事かもしれない。でもマネージャーがそれに気づかない時なんていくらでもあって、その時に楽器さんとか、音響さんとか、ステージ周りにいる人が水を出すとか、他のセクションの人がやってもいいじゃん。全体のエンターテインメントとして質が上がるなら。気づける方がいいし気づけたことはやろうよって思うから、そういう自分の役割を決めきらずに動いてくれたり、より良いものを作るために動いてくれる人と一緒に仕事してたいって思ってるかな。

(熊谷) その話で言うと、ユレニワのPVもやりたいことの割に本当に人手が足りなくて。カメラマンさんに車の運転をずっとさせてるとか、ユレニワのマネージャーさんの佐々木さんとか、MASH の大場さんとか、お二人とも全力で手伝ってくれて。物も運ぶわ、火をつけるシーンは皆で火をつけるわ、「何かあった時はこれします!」「消化器やります!」って皆でやってくれて。「これ、あたしが最初に見て憧れた柳井さんの現場と同じかもしれない!皆で作ってるわ!」って感じました。

(871) めちゃくちゃ大事だし、本人達からは聞かないからこうやって熊ちゃん経由でさ、大場とか佐々木とかがそういう風に動いてたよって聞こえてくるのは俺としても物凄く嬉しいよね。

(熊谷) サウシーのメンバーも皆で楽器運んでくれて。メンバーなんて楽器運んだ後、演奏シーンを笑顔で綺麗な状態で撮らないといけないじゃないですか?

(871) そうやって作ったものの方が思い入れも残るし、皆で届けたいなっていう気持ちにもなるしね。

(熊谷) そうですよね。PV撮って一番悲しいのって告知してもらえないことなんですよ。折角皆で撮ったのにやっぱり嫌だったのかな。PV、よく思ってなかったのかな?ってネガティブな方に思っちゃうんですよね。そんなこと全然ないとは思うし、忙しかったり色んな事情があって出来ないんだと思うんですけど、今回は皆がああやって「楽しみ!」って煽ってくれるっていうか。皆も撮った段階から違う部分でも価値を感じてくれてたんだなぁと思って嬉しかったです。

(871) いいですよ。ありがたい。皆がそうやって協力してくれてるのが。

トラブルやハプニングに潜む感動材料を後世に残していく


(熊谷) サウシーの武道館、できたらいいんですけどね。

(871) まあまあデリケートなところ突っ込んでくるね(笑)

(熊谷) でも私はオープニング映像とか色んな楽しいこと考えてます。

(871) あれ、熊ちゃんって岩崎慧くん(セカイイチ)って会ったことある?

(熊谷) サウシーとの対バンの時にお会いしたぐらいで、ご挨拶とかはしてないです。

(871) サウシーのレコーディングで色々やってくれてるけど、慧ちゃんも武道館めちゃくちゃ楽しみにしてくれてる。やっぱり皆楽しみにしてくれてるし、できることならやりたいよねって思ってくれてるので。そこが叶うならもちろんやるし、でも世の中の99%の人がやるなって思っているような状況になってしまえば健康被害を犠牲にしてでもやるわけにもいかないから、それは冷静に判断しなきゃいけないところだけどね。

(熊谷) そういうことをリアルタイムで柳井さんみたいなポジションの方がちゃんと話してくれるっていうのは凄いありがたいなと思いますし、大切だなって思います。

(871) 多少なりそういう意識もあって、この配信やってるみたいなところもあるけどね。
「あっ!これ言っちゃダメなんだっけ!まだ!」みたいなこともあるけど、それも含めてというか。なんか『NiziU』とか『BTS』とかめちゃくちゃ上手じゃん。過程を見せたりするのも。

(熊谷) そうですよね。応援したくなりますよね。

(871) やっぱり実際裏側で起こってる事とか、そこでの感情変化って、どの現場でもどのアーティストでも似たようなことが起こってるんだけど、それの出し方がオープンか、クローズドかっていうところで、応援してくれてる人の思い入れが変わってくるんだとするなら、俺はどっちかというとどんどん出していきたいなっていう気持ちが強い。
近日公開される映像も、俺はやっぱりああいうの出したかったし、それを撮って編集してくれた熊ちゃんはもう、分かってるな!って感じだったし。

(熊谷) でも撮らせてくれる本人とか周りの人あってこそ、出来てますね。

(871) あれも積み重ねてきた何年かがあって、熊ちゃんだから撮れてるっていうのもあるからさ。「熊谷が使うって言ってるならしょうがないなぁ」みたいなところって絶対メンバーもあるから。

(熊谷) サウシーの石原君とか、ユレニワのRENJUくんとかが「熊谷さんがしたいようにしてほしい」って言ってくれて。今まで指示をされてやるっていうことの方が多かったから、そんなこと人生で言われたことなくて。改めて、私がしたいことってなんだろう?って、ここ最近思います。

(871) そこに対して柳井が期待してることがあるとするなら、ドキュメント性というか、如何に過剰演出のない演出をできるかどうか。

(熊谷) 最近ダメだなって思うのは、気を遣う部分が出てきちゃってるんです。私だったら撮られたくないなとか、私だったらやだな、みたいな塩梅が難しいです。そういう時にダメだなって思う時もあります。

(871) それはむしろ撮ったほうがいいね。撮って欲しい。

(熊谷) ある程度の客観性というか、お仕事をもらっていて、仲間ではあっても他人ではあるっていう自分のポジション感の理解を忘れないようにしようと思います。可哀想だからやめよう、って思う方が絶対嫌だろうなって思います。

(871) 今、熊ちゃんはさ「お金もらってるから」とか「仕事として」っていう表現をしてくれたけど、なんかそういうことではなくて、熊ちゃんが見ててちょっと辛かったりとか、私だったら映されたくないなっていうところにドキュメントがあるから。感情曲線って“苦しい”があるからこそ“楽しい”のコントラストがつくから、熊ちゃんはどんだけ悲しかろうが涙を流して嗚咽になろうが、カメラを回し続けなきゃいけないんだよ。

(熊谷) そうですよね…!

(871) 言っちゃえば、使うかどうかは後から決めればいい話だから、自分がギューってなる時ほど回さないといけない。心を鬼にして。

ちょっとエモーショナルな描写だからみなまで言えないけど、すごくショッキングな出来事とか、トラブルが起こったとする。俺はそのトラブルの対応をしなきゃいけなくて、演者とかステージ、客席に対してすごくシビアに向き合うわけじゃん。でも実はそういう時、俺は絶対後ろで、カメラ回してって指で合図してるから。俺はトラブルに全力で向かってるけど、回しとけよっていう。そこ回しとかないとドラマ生まれないし、伝えられない。カメラクルーを呼んでる時はその人達に向かってやってるし、カメラクルーがいなかったとしたらもう現場マネージャーだろうが楽器スタッフのスマホだろうが何でもいいんだよ。

(熊谷) へえ〜〜〜すごい。

(871) どんなアーティストだろうが、トラブルとか、ハプニングが起こった時は、俺はマネージャーとして回してて欲しい。

(熊谷) なかなかいないですよね。大体、撮らないで、っていう感じ。

(871) いやいや、回さないとダメだよ。

(熊谷) そうですよね。使う使わないは本当、後で判断できますもんね。撮ってなかったらそれすら判断できない。柳井さんの素敵なところっていうか、いつもありがたいなって思うのは映像に対して、そういう残すことの大切さとか、「ライブ撮っとこ!」とかを言ってくれるところ。すごい嬉しいです。

(871) いやもう本当、ハプニングっていつ起こるかわかんないじゃん。例えば10カ所ツアーがあって、ツアーファイナルだけを10カメ入れて完璧に抑えるぐらいだったら、10本全部1カメで撮っててほしいのよ。もちろん、ちゃんと見せるべきところを見せて作品として成立させるために、ある程度の台数を入れたりとか撮り方を試行錯誤するのは重要だし、そこを疎かにするわけではないんだけど、かっこよく撮るのと記録、を敢えて天秤にかけると、記録の方が俺は上。その事実を撮り逃してしまうと後世に伝えられない。だからなるべく長く回してほしいし、撮り逃しはすごい後悔しちゃうし自分が悔しいから。やっぱり回してて欲しいっていうのはあるかな。そこに感動の材料がどんどん残ってたりするから。

(熊谷) 改めて胸に刻んで撮影します。

(871) お願いします。

今後の展望―2人目の熊谷さん?


(871) 熊ちゃんそろそろ、2人目3人目の熊ちゃんを作っていかないと。

(熊谷) 柳井さんそれいっつも言ってくれますよね。だから、私も仕事の話とかした方がいいんだって思えました。嫌じゃないですか?「仕事しましたー」とかツイートしたら。「ツイートすんなよ」とかならないですか?(笑)

(871) いやいや、した方がいいよ。

(熊谷) 私も自分のきっかけがSNSだったから、やっぱり誰かしら見てるんだなって思ったんですよね。悪いことも含めて。悪いこともありました。SNSのせいで暴言吐かれたり、ネットに書くなよって逆に怒られたこともありましたし、そういう経験が色々あってこその今なので、こういうインスタライブ観て下さったりだとか、Twitterみててそういう仕事がしたいなって思う人は連絡ほしいなって凄い思ってます。もし興味ある人いたら連絡ください。

(871) そこは両方だね。むちゃくちゃ求めてるし、だけどそんな簡単な世界でもないよっていうのもあるし。だから本当にやりたい人はどんどん入ってきてほしい。でも仕事を手取り足取り教えてもらえるような職場でもないじゃん。
俺もプロデューサー気質というか、ディレクター気質なところが多少なりあるけど、もうやっぱり自分が細かいことをディレクションできる限界みたいなこともすごく感じてるし、どっちかいうと大きい考え方は共有した上で、そこ踏まえた上であとは好きにやって、みたいな。その上で、自分達が良いと思うものに全力で時間と労力をかけられる人たちに仕事をお願いしたいからさ。
適度にサボりながらいい感じで、みたいな人は生き残っていけないっていうか。普通に夜中の3時とかにさ、「ごめんやっぱ修正!」みたいなの全然あるじゃん。

(熊谷) はは(笑)でも楽しいこともいっぱいある世界だとは思ってるので。興味ある人は、きっかけになることはもしかしたらあるかもしれないので、是非声掛けてください。

(871) 最近、この配信の1時間のルールを守れてないんだよな、俺。

(熊谷) ほんとですね!お忙しい中、すみません!(笑)楽しかったです。

(871) いえいえ!こちらも楽しかったです。

(熊谷) これからもお仕事また頑張ろう!って思いました。ありがとうございました。

(871) じゃあ、熊ちゃんまたね!

(熊谷) ありがとうございましたー!


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