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Episode.3 友達になる

 10月1日、特別教室棟3階。特別教室棟には奇数階は女子トイレのみ、偶数階に男子トイレのみが設置されている。時差分散登校も無くなった。私は今、夏澄、音琉、勝山命風かつやまみか勝山凌かつやまさえで女子トークをしている。
「ねぇるね、好きな人できたの……同じクラスなんだけど」
音琉ちゃんがモジモジし始める。耳も赤くなっている。とても恥ずかしいのだろうか。
「誰なの? 同じクラスって言われても分かんないよ?」
命風ちゃんが問いかける。
「命風と同じ小学校出身のゆっきーだよ!」
音琉ちゃんは、源くんのあだ名を言う。私は膝から崩れ落ちる。また新たにライバルが増えた。
「仁和? 大丈夫?」
凌ちゃんが心配する。私は『大丈夫、大丈夫』と手で答える。
「でも、侑久はね……短気だからね、高校からは怒ることは減ったけど」
命風ちゃんが音琉に伝える。
「じゃあ、友達程度にまで止めておいた方がいいの?」
音琉ちゃんが言う。
「その方が良いんじゃない? 侑久だって突然告白されてもね……」
命風ちゃんは、過去の源くんを知っていた。よく怒りっぽくて、大体大人しかったけど感情の浮き沈みが激しかったらしい。今は、そんな風には見えないけど。
「分かった……友達として接する」
音琉ちゃんは、友達程度に止めてくれた。
「そう言えば、私も彼氏できたんだよね」
夏澄ちゃんが口を開く。
「そうなの!」
凌ちゃんが驚いている。夏澄ちゃんは、真面目だから恋愛なんかに興味なさそうに見えたのだろう。
「私の彼氏は、同じ教室にいる光くん!」
夏澄ちゃんが、塚本くんの名前を口にする。
「え? 私も塚本くんと付き合っているんだけど?」
私が夏澄ちゃんに告げる。
「え? いつから?」
夏澄ちゃんが、期間を聞く。
「7月31日に告白されてから、2ヶ月弱ぐらいかな?」
私は期間を答える。
「じゃあ、塚本くんは……浮気しているってこと⁉︎」
音琉が叫ぶ。
「なんで光くんと付き合っているの?」
夏澄ちゃんが問いかける。
「ににゃは、源くんが好きなの……だけど、源くんには別に好きな人が居て……だから、塚本くんなんかと付き合えば源くんにも、迷惑かけなくて済むかなって……今考えたら最低なことしてた」
私は目から涙が溢れてきた。
「仁和は、何も悪くないよ……光くんと別れよう……そして、源くんを取り返そう!」
夏澄ちゃんが、私を立ち上がらさせる。すると、足音が聞こえてきた。こっちに向かってくる。私達が普通教室棟に顔を向けると、源くんが1人で歩いてきた。どうやら、外は雨が降っていて2年生の普通教室棟から来たみたい。3階は、2年生の教室になっている。5時限目は化学基礎のため、源くんは2階へ降りていく。すると、音琉が
「ゆっきー!」
と。叫ぶ。すると、源くんが振り返ると同時に音琉が隠れた。
「今、誰か呼んだか? 声聞いた感じ女子だけど……」
源くんはしばらくキョロキョロしながら、階段を降りて行った。
「やっぱり、ゆっきーかっこいい!」
音琉が再び赤面する。
「私たちも行こう!」
夏澄ちゃんが、教材を持つ。私達も教材を持って化学教室に向かう。
 特別教室棟2階、化学教室A。私達が教室に入ると、源くんは『花びらが散る頃に』の小説を読んでいる。
《確か、Extra Episodeが多いんだっけ?》
私が、源くんを見ながら自分の席に腰を下ろす。すると、音琉が源くんの隣に座り、
「ゆっきー!」
と。再び呼ぶ。
「音琉が言ってたの⁉︎」
何ヶ月かぶりに、源くんの声を聞いた。私はなんかそれだけで頬が緩んで
「みんな知ってるよー」
と。源くんに話しかけてしまった。
「マジか……」
幸い、ここにはひよりちゃんは居なくてホッとする。その後凌ちゃんと源くん含む4人で女子トークをしていた。

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