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Last Episode 克服

 8月中旬。私の専門学校もゆっきーの大学も夏休みに入った。今は、ゆっきーと一緒に喫茶店でティーを飲んでいる。すると、私の後ろに着物姿の男性たちが素通りしていった。
「そういや、もう祭りの季節か……」
ゆっきーが呟く。
「そうか……レイノも落ち着いて来たから開催するんだね」
私はうつむく。中学の頃の黒歴史が蘇ってくる。
「仁和? 祭り好きじゃないの?」
ゆっきーが問いかける。
「好きじゃない……黒歴史があるから」
私は、過去のLEADをゆっきーに見せる。
「これ、中学の頃の友達か?」
ゆっきーは、怒りの口調になっている。
「そう」
私は答えた。
「このサーモグラフィーは何?」
ゆっきーは私の脱糞画像を見つける。
「ににゃの画像……」
私が答えると。
「詳しくは聞かないけど、これ普通に犯罪だろう」
ゆっきーは続けて
「肖像権の侵害と盗撮」
ゆっきーは、メモを取り出す。
「何書いてるの?」
私が聞くと
「祭り克服だ」
ゆっきーはメモ帳を一枚破り、私に渡す。紙には
『祭り克服事項
・浴衣は着ないこと
(可愛いかもしれないけど、考慮を考えて)
・かき氷を早食いしないこと
(お腹冷やしたからあの大勢なのだろう)
・我慢できなかったら、草むらの中でして
(かき氷早食いしなければ良いだけ)  』
と。書かれていた。
「詳しくは聞かないって……」
私の黒歴史を知っているように、書いている。
「トーク見たら、分かる……けど、本人からは聞かない……口から言わせなかった……許してくれ」
ゆっきーは悪びれず様子はなかった。ゆっきーも書きたくて書いたわけじゃない。
「分かった……この紙に書かれたこと、やってみる」
私は祭り克服をすることにした。デート場所の定番でもあるから。
 夏祭り当日。ゆっきーは、私服で祭り会場の出入り口で待っていた。少し違う所と言ったら、蝶ネクタイしているぐらいだろうか。
「ゆっきー! 待った?」
私が歩いてくると
「今来たとこだよ?」
ゆっきーは答える。絶対に何分か待った。
「じゃあ、行こうか」
ゆっきーは私と手を繋ぐ。今回は花京院中学校の近くで開催していた。
 祭り会場。
「焼きそば……お好み焼き……何食べようかな?」
ゆっきーは、匂いの強い食べ物に夢中になっている。すると
「あれ? 侑久か?」
中年男性がゆっきーを見るなり、声をかけている。
「直大先生!」
ゆっきーも気付いたみたいだ。
「久しぶりだな! 3年ぶりか?」
直大先生は、ゆっきーの中学の頃の担任だった。苗字は夏澄ちゃんと同じ岩田。
「先生はここで何を?」
ゆっきーが直大先生に聞く。
「焼きそばを売ってる……食うか?」
直大先生が、焼きそばの入ったフードパックをくれた。
「彼女さんもどうだ?」
直大先生は私とゆっきーに割り箸をくれた。
「では、お言葉に甘えて」
私はゆっきーと貰った焼きそばを食べることにした。
「腹痛になるのが怖い……」
私は祭りでの黒歴史であまり食欲がない。
「焼きそばだけで、腹が壊れることはないさ!」
ゆっきーは、焼きそばを一口口に入れる。とても、美味しそうに食べている。私達2人が焼きそばを食べ終えると、花火が上がった。
「綺麗だ……」
ゆっきーが見惚れていた。私はいつも見る花火より一段と綺麗に見えた。彼氏であるゆっきーが居たからかな。
 数分後。次の花火が始まるまで、時間があった。すると、
「あれ? になじゃん」
聞き覚えのある声が聞こえた。
「さよ……」
私の肖像権を侵害したさよがいた。
「仁和の知り合い?」
ゆっきーが問いかける。
「中学の時、あのサーモグラフィーの画像送った娘」
私が伝えると、ゆっきーが血相を変える。
「テメェか……」
ゆっきーは立ち上がり、さよに一歩一歩近づく。すると
「待ちな……」
グラサンにタバコを咥えた男性がゆっきーを取り押さえた。
「オレらの玩具に手を出すな」
モヒカンの男性も出てきた。すると、2人は私を見る。
「へぇー、お前……いい女と付き合ってるな?」
モヒカンの男性がゆっきーの顔面を殴る。
「セックスしたのか? なぁ、答えろ!」
グラサンの男性がゆっきーの髪を掴む。ゆっきーは口を塞いで、開こうとしない。黙っている方がマシだと思ったのだろう。
「になは、男嫌いだから処女だよ!」
さよが言う。
「マジかよ……」
モヒカンの男性がゆっきーに腹パンをする。ゆっきーは、嘔吐する。
「コイツ……汚ねぇな」
グラサンの男性が、咥えていたタバコを投げつける。
「じゃあ、コイツの嬢ちゃんとチョメチョメして来んかねぇ?」
グラサンの男性とモヒカンの男性が私に近づいてくる。
「あの女じゃ、満足できねぇから……あいつ妊娠したら捨ててやる」
モヒカンの男性が、私の手を引っ張る。すると
「私の教え子に手を出すな!」
直大先生が来た。剣道部の服装だ。
「なんだよ……おっさん」
グラサンの男性が、直大先生を睨む。
「私の教え子を傷つけた奴は、決して許さん!」
直大先生は、竹刀ではなく、本物の剣を構える。グラサンの男性は、鉄パイプを持って襲いかかってくる。しかし、直大先生の剣により鉄パイプは真っ二つに切れた。
「オレは、剣道やってたぜ!」
モヒカンの男性は、竹刀を取り出す。
「右胴!」
直大先生は、モヒカンの右腰を撃つ。
「グヘェ……」
モヒカンの男性は、撃たれた衝撃で倒れた。
「残心!」
直大先生は、剣を終う。
「逃げるぞ! 勝ち目ねぇ……」
グラサンの男性とモヒカンの男性が、逃走しようとする。
「ヴォエ! ま……待て……」
ゆっきーが吐血しながら、グラサンの男性とモヒカンの男性に近づく。
「お前は、倒れたはずじゃ……」
グラサンの男性が怯える。
「てめぇら、2人に女紹介するから……」
ゆっきーはスマホの画面を、見せつける。
「なんだ? オメェの姉貴か?」
目を覚ましたモヒカンの男性が問いかける。
「従姉……呼んでくるから、待ってて」
ゆっきーが電話を掛けている。
《まさか……ホントに呼ばないよね?》
 数分後。
「ゆっきー、いい人がいるから来てみたけど?」
珠音義姉さんと、音海義姉さんをゆっきーはホントに呼んだ。
「後ろにいるグラサンとモヒカン」
ゆっきーは、義姉さんを残して私の元へ来る。
「義姉さん達を、どうする気?」
私が問うと
「大丈夫……ネーネー達は、格闘技やっていたから」
ゆっきーが答える。グラサンの男性とモヒカンの男性は、義姉さん達に腕を掴まれ森の中へ消えていった。
 十数分後。義姉さん達が、戻ってきた。
「警察に連絡しといた!」
音海義姉さんが、スマホの画面を見せる。
「あとは……仁和の肖像権を侵害した奴をどうするかな?」
ゆっきーは、さよに目を向ける。
「私が連行する」
直大先生が、名乗り出た。さよは直大先生に連れて行かれた。私はゆっきーに、命まで救われた気分だった。

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