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冷たい風が吹く

何も無い学校の屋上でただひたすらに
雨に打たれながら空を仰ぐ
雨音に混じり終わりを告げるチャイムが鳴る

もう全てがどうでも良くなった

そんなことを考えていると自然に足は歩み始め
網格子を超え向こう側へ足をつける
そのまま、もたれて再び空を仰ぐ

○○︰今…そっちに行くよ

目を閉じ、もたれた体を前へ倒すと
体は風を切り加速を始める
体中の感覚も徐々に無くなっていった

そして何も感じなくなった

こんなにも一瞬で何も感じることのもなく命は途絶えるのか
そう思った時、体に悪寒が走った

…冷たい

ゆっくりと瞼を開ける
そこは学校の屋上だった

○○︰...あれ?

        ︰今は死ねないよ

○○︰...誰?

うつ伏せのまま声の主に問いかける
彼女はただ微笑んでいるだけだった

○○︰...死ねないってどういう事?

         ︰そのままの意味だよ

○○︰...どうして

         ︰あなたにはやらなくちゃいけない事が有るから

○○︰...やらなくちゃいけない事?

         ︰...それは私の口からは言えない

○○︰...

         ︰...頑張ってね

そう言い残し彼女は屋上を去って行った

○○︰あ...待って!

重い体を無理やり起こし追いかけるも、彼女の姿は無かった
立ち尽くす中、終わりを告げるチャイムが鳴る

○○︰...あれ?

それと同時に冷たい風が流れ込み
気がつくと床に頬を付けていた

窓の外は街灯が目立つほど暗く雨が降っていた
とりあえず帰ろうとする気持ちとは裏腹に
雨に打たれ続けた体でまともに歩くことは出来ず
荷物が有る教室まで右側の壁に体重を預けながら歩く
教室には1つだけ灯りが付いていた

        ︰あ、やっと来た!もうどこ行ってたの?

○○︰...まだ帰ってなかったの?

         ︰当たり前でしょ!いつも一緒に帰ってるんだから...ってどうしたの!?

○○︰あ...屋上で雨にうたれちゃって

         ︰大丈夫なの...?

○○︰...まあ、

そこで目の前が真っ暗になった

保健室の天井が視界に入る

先生︰あ、○○君起きた?

○○︰はい...あの、僕はどうしてここに?

先生︰賀喜さんが連れて来てくれたのよ

ベッドに凭れかかり寝息をたてる遥香の姿があった

先生︰まだ部活やってる子達も帰ってないから、もう少し休んでいって。あと、賀喜さん起きたらちゃんとお礼言うのよ

○○︰...分かりました。ありがとうございます

先生はそう言うと去って行った

○○︰...ありがとう

頭を撫でそう呟くと、遥香は少し口角を上げた
雨に濡れたからか少し体が熱く怠さを感じ
ぼんやりとしながら再び横になり重い瞼を閉じた

どのくらい経っただろうか
少しずつ瞼を開けると、見知らぬ天井があった

さく︰...大丈夫?

○○︰...うん、遊園地楽しかったよ笑

さく︰ん、遊園地?まだ治ってないの?それとも寝惚けてるの笑

○○︰...分かんない

見知らぬ部屋に見知らぬ人と二人
なのに知人のように会話をしている
情報の整理が追いつかなかった

さく︰まったく...だらしないな○○は笑
ほら、お粥作ったから口開けて

本来なら受け付けるはずも無いが
体は自然と口を開けた

○○︰ん...美味しい

さく︰そう?良かった笑

彼女の笑顔に不思議と胸が締め付けられる
一体なにがどうなっているんだ...

さく︰たくさん食べて元気になってね笑

○○︰ありがと

さく:...

確かさっきまで保健室に居たはず...
これは夢なのか?それにしてはやけに現実的だ

さく︰...

○○︰あの...

自分の意思で体が動くようになると
時が止まったかのように彼女は動かなくなった...
目の前で手を振っても反応がない

さく︰...

○○︰...何なんだ?

目の前で起きた不可解な出来事に混乱したせいか
再びぼんやりとして来る

○○︰...またか

徐々に重くなる瞼には逆らえず瞼を閉じた

遥香︰...きて...起きて

○○︰...遥香?

遥香︰やっと起きたよ...もう!早く帰らないと学校閉まっちゃうよ!

○○︰...あ、ごめん

遥香︰熱は...大丈夫なの?

○○︰...うん、大丈夫

遥香︰...あのさ、昨日も言ったけど今日両親が居ないの

○○︰...そうだったね

遥香︰それで、その...泊まっていかない?

○○︰...え?

その時の遥香の表情に胸が締め付けられる

遥香︰...む、無理にとは言わないから!ただ、○○の家遠いしまた途中で倒れちゃったら大変だと思って

○○︰...無理じゃないけど、良いの?

遥香︰ぜ、全然!むしろこっちがお願いしてるんだから!

○○:じゃあ、行こうかな笑

遥香︰本当に!?...じゃあ、はやく帰ろ!

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