春の妄想は深く、心地よい

この時期が一番楽しいのかもしれない。

プロ野球は各球団キャンプを打ち上げ、オープン戦に突入している。

贔屓の球団の新加入選手をチェックし、評判が上々なら喜び、主力選手に故障者が出たとの記事を見れば、開幕までは間に合わせてくれよと祈る。

新助っ人外国人なんかは、特に野手はオープン戦でいくら打っても、開幕してみなければ分からない。と、過度な期待を自重する。

野手のスタメンは誰だ?

打順はどうなる?

野手のバックアップには誰がはまる?

代打の切り札は誰だ?

先発ローテーションはどうなる?

ブルペンの陣容は?

勝ちパターンのセットアッパーは?

クローザーは?

ロングリリーフは?

妄想が膨らむ。

妄想で打順やローテ、バックアップを当てはめてみたり、各選手の成績を予想してみたり。

全てが妄想であるため、期待値をうんとあげて成績を予想してみるから、気づけば頭の中で贔屓の球団はぶっちぎりで優勝していたりする。

だが、それがこの時期のプロ野球ファンの最大の楽しみであり、それが許されるのがこの時期ならではだ。

だって、まだ始まっていないのだから。妄想は自由で無限だ。

ただ、一方で妄想が膨らみ過ぎて、現実と区別がつかなくなってしまわないように注意しなければならない。

例え、膨らみ過ぎた妄想であっても、それが現実のものとならなかったとき、裏切られたような気分になり、その反動が大きくなってしまうからだ。

スポーツ紙の記事や評論家の見立てで褒めちぎられていても、話半分である。例えそれがどんなに著名な記者であっても、どんなに現役時代に実績を残した評論家であっても、全ては予想に過ぎない。

だって、まだ始まっていないのだから。


オープン戦期間は本番への準備期間もである。

開幕1軍を勝ち取るために結果を出さなければいけない選手にとっては死に物狂いで臨まなければならないが、すでにポジションを確立した選手にとっては開幕(もしくはそれ以降)にピークを合せるための調整の場でもある。

それは選手だけでなく、球団スタッフや関係者、プロ野球ファンにとっても開幕へ向けた態勢を整えるための期間となる。

球団スタッフや試合運営に携わる方々は、オフシーズンに用意していたものを試すだろうし、観客の動線やイニング間のトイレやフードコートの混み具合、チケットもぎりの段取りの確認、VIPのアテンド方法などもチェックするだろうし、新しいルールがあれば、それに伴う変更点をチェックするだろう。

応援団は新加入選手の応援歌を試し、太鼓やトランペットの調子を試すだろう。応援団に新メンバーが加われば、その実力を計る機会にするかもしれない。

プロ野球ファンは球場への移動手段を検討し、新グッズを品定めする。
球場で売られているフードやドリンクをちょっと冒険して買ってみたりもするだろう。

テレビ観戦するときは各放送局の解説者の顔触れをチェックし、誰々の解説はわかりすいだの、熱がこもっているだの、理屈っぽいだのといった印象を確認し、さらにはSBO(ストライク・ボール・アウト)等の画面表示のデザインやリプレー映像、配球チャートの有無などを確認する。

今は全てのプロ野球を愛する者たちが準備を整えている最中だ。



今年は特に楽しみだ。

ジャイアンツの評判がすこぶる良い。

新監督は私が現役時代からファンだった阿部慎之助監督。

2年連続Bクラスと低迷していたチームを変えようと新しい試みを数多く実施している。

何よりうれしいのは若い選手が活躍の兆しを見せていること。

ドラフト1位の西舘投手は前評判に違わぬ投げっぷりで、ローテ候補に名乗りを上げている。

ドラフト3位の佐々木選手は激戦区である外野のポジション争いに割って入ろうかという活躍だ。

ドラフト5位の又木投手は勝利の方程式に食い込める可能性を見せている。

ルーキー以外でも育成の中田歩夢、京本眞などもキャンプで実力を示している。

昨年、泣き所だったブルペンも補強し、オリックスから近藤大亮、ソフトバンクから高橋礼と泉圭輔(高橋は先発かな?)、阪神からカイル・ケラーと馬場皐輔を獲得。

既存戦力の、大勢、中川、バルドナード、高梨、鈴木、菊池らと合わされば、勝利の方程式もローテーションが組めるほどの厚みになる。

ただ、キャンプ前に阿部監督からクローザー指名を受けた大勢が出遅れているのは少し気掛かりだ。

先発の軸は開幕投手に上り詰めた戸郷翔征。WBCも経験して、もはやエースの風格だ。

山崎伊織は昨季、二桁勝利をあげて、安定感あるピッチングをしていた。今期はローテーションの軸としての役割が求められる。

菅野も黙っちゃいない。昨季、自己ワーストの4勝に終わった元エースはここまで順調に調整を行い、今季の復活を期待される。

この3人を中心に昨季、実績のある外国人のグリフィンとメンデス、新加入の高橋礼、ルーキー西舘、3年目の赤星らがローテを争う。

内野陣は坂本、門脇、岡本のポジションを固定し、それぞれが順調に調整を進めている。

門脇は背番号も軽くなり、昨季以上にショートで華麗な守備を見せてくれるだろう。昨季終盤から向上した打撃を維持できるかがカギだ。

岡本は4番としてもはや風格すら漂わせ、どっしりとチームの柱となってくれるだろう。6年連続30本塁打以上は伊達じゃない。ファーストに固定されれば、さらに打撃に集中できる。2018年以来の打率を3割を達成できれば三冠王も夢じゃない。

ここ数年はケガに悩まされてきた坂本も、今季はサードに固定され、守備の負担が軽くなる。調整も順調そうで、オープン戦では華麗な守備も披露した。坂本については1にも2にもコンディションだ。健康でさえいてくれれば成績は自ずとついてくる。阿部監督の腕の見せ所でもある。

残る内野のポジションはセカンドのみだが、最有力は吉川で間違いない。
守備は折り紙付きだが、打撃に波があるのと、ケガがちなのが玉に瑕。
故に中山、湯浅、前述の中田にも十分にチャンスがある。

先にも書いたが、外野陣は激戦必至だ。

新外国人のオドーアをライトで起用すると見られているが、彼の本職はセカンド。慣れない外野守備と日本の野球にどこまで適応できるかがカギ。

秋広は今季から外野にコンバート。昨季は二桁本塁打を放つも後半失速。目覚めかけた大器は昨季以上の打棒を見せられるか。

キャンプ、オープン戦で結果を出したオコエ瑠偉は野球に取り組む姿勢が阿部監督に評価され一軍昇格。オープン戦でもすでに2本塁打記録している。昨季も開幕スタメンだったが、早々に2軍暮らしとなったため、継続性が重要。身体能力はチーム随一。

大振りを捨てた松原聖弥はかつての輝きを取り戻しつつある。オープン戦でも結果を出し、低迷していたここ2年の借りを返せるか。

この4人にベテランの丸、梶谷、長野、2年目の萩尾、浅野を加えた外野のポジション争いは12球団でも一番過酷なのは間違いない。
だが、お互いが切磋琢磨していけば自ずとチーム力は向上するだろう。


これを踏まえて開幕スタメンを予想してみよう。

1番 ショート 門脇(左)
2番 センター オコエ(右)
3番 レフト 秋広(左)
4番 ファースト 岡本(右)
5番 サード 坂本(右)
6番 セカンド 吉川(左)
7番 ライト オドーア(右)
8番 キャッチャー 大城(左)
9番 ピッチャー 戸郷

セットアッパーは中川、ケラー、近藤、馬場が中心。クローザーはもちろん大勢(間に合うと信じて)

この陣容で昨季、日本一の阪神とがっぷり四つの戦いをしてほしい。


今の時期は盛大に妄想を広げ、バラ色のシーズンを夢見て、ワクワクしていようと思う。

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