見出し画像

怪我は美少年の勲章『矢野くんの普通の日々 ①』感想【微ネタバレ】

みなさんこんにちは、三度の飯より少女漫画が好きなめるこです。世の中に少しでもキュンをあふれさせるためのおすすめ読書レビュー、今回は講談社モーニングKCの『矢野くんの普通の日々①』です。

かわいすぎん?

↓過去のレビュー

男に尽くし過ぎる女は振られる。突き放すぐらいがちょうどよい―――。
とよく聞くが、目の前で怪我をしている美少年を放っておける人類はいるのだろうか。いや、いない。(反語)
こちらを見つめている美少年の頬っぺたが絆創膏だらけだったら、心配になって手を伸ばしてしまうのが人情だろう。まるでセイレーンの歌声につられた漁師のようにホイホイ1巻を手に取る。表紙の矢野くんに伸ばされている指は私のものだ。
以下あらすじ。

高校2年生、春。吉田さんの最近の心配事は、隣の席の矢野くんが毎日ケガをして登校してくること…。
ありとあらゆるケガをする矢野くんから、目が離せない! 手当がしたくてたまらない! 心配性女子とケガだらけ男子による、ピュアすぎるマイペースラブコメディ!

裏表紙

内容はあらすじのままである。主人公吉田さんはクラス委員長で、しっかり者。そんな彼女の目の前に、毎日ケガをする転校生矢野くんが表れる。真面目である彼女は矢野くんのことが気になっていき、彼に接していくうちに外見にも中身にも惚れてしまうのだ。しかし矢野くんは鈍感で、吉田さんがどんなにアプローチしても気が付かない。それを生温かく見守る話だ。

正直、吉田さんが矢野くんへの恋を自覚してするまでの期間が短く、初めはやや展開の速さに物足りなさを感じた。
じれったいな、キスしろよ!みたいな展開を何十年も繰り返している『ガラスの仮面』ものばかり読んでいるため…。

しかし、1巻を読み終わる頃には満足感。これはよくある少女漫画とは微妙に異なり、二人が恋に落ち結ばれる過程を楽しむものというよりも、ヒロインが恋状態でヒーローの世話をあれこれ焼いている様子を楽しむものなのかもしれない。
思い返してみれば中学の頃、幸の薄いイケメンの先輩にやたらと女子が群がっていたな。
「彼ったら、私がいなきゃだめなのよ…」
の心理を刺激されたら最後。永遠に抜け出せない沼に沈む。この漫画はそういう体験を疑似的にさせてきている。

矢野くんは特別な事情があるというよりも、ただそういう不幸体質故に怪我をしている状態という設定。家族全体がそう。ケガというか、呪いなんじゃ…
だからか、ミステリーやホラーに寄らず、物語全体が穏やかなラブコメの雰囲気だったのはとても良かった。
急にシリアス展開になることもなく、ただ川の流れのように~ゆるやかに~失った高校2年生が過ぎる。
仕事で精神を病みつつある社会人女にとっては非常にありがたい。少女漫画はオアシスであり、チョコラBBなのだ。体力を使いそうなハード展開がある場合、精神的余裕がないと読み進めにくいからね。

あとは少女漫画においてあるあるな、ヒロイン問題。
いつも何かが起きる矢野くんの日常を、他の人と同じ”楽しい普通”にするために奮闘するヒロインの姿がとーーーっても可愛い。
リップクリームも入らなそうなちっちぇ鞄を持っているのがいい女、みたいな現代に、大きい救急ポーチ持っているの可愛くないですか。怪我したときに絆創膏くれる女の子、ベタだけど良くないですか。
途中ヒロインのことが好きな男子が出てくるが、その子も「頑張れよ…」と背中を押してくれるくらい矢野くんに真っ直ぐな女の子。
普通だったら、
「そんなやつやめて、俺にしろよ…」
になるのにね。誰も不幸にしない。素晴らしい。
そんな吉田さんだからこそ、ただひたすら怪我をし、不幸を呼び込む矢野くんの隣に立てるのかもしれない。

でも、ひとまず吉田さんは矢野くんを連れてお祓いに行った方がいい。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?