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3万のスニーカーを買ったら生きる気力が湧いてきた

このたび、数億年ぶりにスニーカーを買った。しかも、四捨五入をすると3万円もするやつである。

SALOMON XT−6

わたしほどの貧乏症の人間は、未だかつて出会ったことがない。しいて言うなら、節電のためにろうそくの灯火のような明るさのなかで生活をする、うちの母親くらいだろう。わたしだって本当は、『家族の食べるものくらいはいいものをね〜』とかなんとか言いながら、無農薬までとはいかなくても、ちょっといい卵や、ちょっといいワカメを買いたい。
しかし、結局は安くて量も多いものに手が伸びてしまう。正社員からパートになり、給料がガクンと下がってからは、さらにその傾向が高まりつつある。

さて。自分の服なんぞ、最後に買ったのはいつだろうか?毎日仕事と家の往復をしていると、服を買っても着ていくところなんてない。そう考えると、途端に金が惜しく感じる。さらには、『服欲しい』という欲すらなくなってくる。
ただね。この気持ちをそのままにしてしまうと危険な気がする。なぜなら『そもそもこれから子供に金がかかるというのに、自分の娯楽を買うなんて悪だ!最低!まだ女でいたいのか!母親失格!』と、良からぬ方向にヒートアップしてしまうのだ。そして、そのイカれた気持ちをなぐさめるため、毎日チューハイのロング缶を買ってしまう。
結果、金が貯まらない&腹回りの脂肪は貯まる。

だが、3万円で抜け出せた。
『こんな高い靴をはくんだから!』と、謎の決心で16時間ダイエットをはじめ、着ない服をすて、春服を新調してみた。傷んだ髪の毛を切り落とし、数万年ぶりにトリートメントもした。

この紙袋を手にさげ、明治通りを歩くわたしは、どこからどう見ても『SALOMONで靴を買った人』だ。ネットの買い物とはちがう。なんだか気恥ずかしいような、まだ何かに遠慮しているような、それでいて快感と喜びで胸がいっぱい。こんなにワクワクする気持ちはひさしぶりだった。
ただ、やはり襲ってきた感情は【自分のために、こんなにお金を使っちゃった】というモノ。トリートメントなんかしてどうすんの?春服なんてどこに着てくの?もったいな。ってモノ。

でもね。わたしも生きているんです。
なんだか3万よりちょっとはみだしちゃったけど、目に入るもの全部好きになってきた。
ホットヨガの先生が「愛をあげるには自分を愛してからというハヌマーン(神)の教えが〜」とか言ってたけど、これだな。ハヌマーンだかハマカーンだか知らんけどな!



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