見出し画像

おすすめ本紹介①【「女性活躍」に翻弄される人びと】

こんにちは、シンママ公認会計士河合千尋です。
女性会計士向けの研修企画をやってきました関係で、女性活躍/男女格差等に関する書籍やセミナーで学ぶ機会が比較的多くありましたが、それをベースに自分の経験もプラスして、様々なことを考えてきました。
キャリアに悩める女性やそのパートナーにもぜひ読んでいただきたいというおすすめ本を、少しずつですが紹介させていただければと思います。

「女性活躍」に翻弄される人びと/ 奥田祥子・光文社新書 2018

少し前の出版ですが、著者はジャーナリストを経て大学教授をされている方です。
何人もの多様な境遇の女性や男性への、10年以上にわたる複数回のインタビューを通じ、
・その人にとって今は良くても数年後大きく状況が変わることも多い
・ほぼすべてのケースに何らかの苦悩や問題が見え隠れし、一つの満足のために何かを犠牲にせざるをえないケースが多い
・多くの場合その配偶者にも問題が大きく波及し、そこにまで観察範囲を広げるとより悩みが深い
という状況が浮き彫りになっています。

2016年に女性活躍推進法が施行され、一定規模の企業は行動計画を公表することが義務付けられました。多くの企業では女性管理職の数値目標を設定したうえで、対象年齢の女性に急遽中間管理職候補として打診される動きが加速しました。

本書の中では主に当時30~40代の女性で
・仕事も家事もしっかりこなし、希少な女性管理職として活躍し、ロールモデルとなってほしい、(かつ企業の女性活躍推進をしているという対外的なPR人材にもなってほしい)という過度な圧力が重荷で、結局転職を選択した人
・超氷河期世代に非正規職で就職し、心身の不調や介護などの事情もあり独身で非正勤務を続けており、ボランティア活動でやりがいを感じるも、「非正規」「未婚」「子なし」ということで「女性活躍」という風潮の真逆であると社会からの疎外感を感じてしまう女性
・1990年代、いわゆる3高男性と結婚して専業主婦になり、「勝ち組」と認識していたにもかかわらず、夫の裏切りを機に自身も不倫で復讐という悪循環に陥っている女性。
・わずか10数年で、仕事と家庭を両立して職場でのリーダーになってこそ立派な女性という風潮にかわったことを「こんなはずじゃなかった」「女性の生き方に社会の規範を押し付けないでほしい」と憤る女性。
・仕事に意欲的な妻の仕事を応援するために育児・家事を分担し、よき理解者である夫と、妻から敬われるほど職務追行能力が高く出世していくデキる男―会社は女性の支援はしていたがイクメンにはむしろ風当りが強くなり、理想を追い求めすぎたばかりにストレスから子供への虐待という行為に出てしまった男性。

他にいくつものケースが紹介されているが、いずれにしても職場や家庭での「女性の活躍」が声高に叫ばれることで、それが大きく女性へも男性へもプレッシャーとなっているケースが見て取れます。

女の人生はいろいろ、という言葉もありますが、「女性」というだけでひとくくりにしてとらえてしまっては、その本質を見誤ることになり、ひいては不幸な家族を増産することになりかねません。
育児や家事と両立しやすい勤務形態や制度を整備することは重要であるけれども、仕事だけ、または昇進だけが女性の「活躍」ではありません。
昇進や勤務時間に制約があっても子育てや介護との両立でモチベーションを維持できる女性も多いし、高収入ではなくても人の役に立つ仕事にやりがいを感じたり、専業主婦であっても家庭内で輝ける存在であったり、女性の活躍シーンは十人十色です。
こうした社会風潮の圧力に屈することなく、自らの自己肯定感を高め、自信をもって生きていくために、女性たちが自身のありのままを受け止めること、そして異なる境遇の女性と比較することなく、互いを尊重することが重要と筆者は述べています。

実際、この本で紹介される30代∼40代女性をターゲットにした「VERY」や「STORY」といった女性誌も、ほんの20年ほど前は「シロガネーゼ」という言葉に象徴される、「高収入の配偶者と子供と優雅に暮らす専業主婦」を読者層としていたのが、今では仕事と子育てを上手に両立させ、余暇もファッションも楽しむ欲張りな女性という速射層を想定しているのか、現実にこんな優雅な人はいるのか?といいたくなる特集が組まれていることが多くなったように感じます。
政府やメディアを批判するつもりは毛頭ありませんが、「産め」「働け」「活躍」(もちろん育児や家事や介護もメインでね)をすべて実現できる女性などごく一握りの、周りの環境にも恵まれたスーパーウーマンしかいないでしょう。
一方でこの本のタイトルにある、「女性活躍」というワードに「翻弄」されている人というのは、あまり表に声は上げないけれど、周りには非常に多くいるように感じています。

組織内で働く男性でも、上下の人間関係に悩んでいる方は多いでしょうし、その中に女性活躍推進という要素も少なからず含まれているはずです。その課題を克服するためには、まずは課題を正しく認識することが前提になります。家庭や組織内で問題を抱えている方、さらに「特に問題を抱えていない」と認識している方によりおすすめしたい一冊です。

最後までお読みいただきありがとうございました。
お気に召していただけましたらスキ!やフォローしていただけますと幸いです。

この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?