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「女性管理職比率」開示により離職が増える!?~人的資本開示について思う②

先日の投稿では2023年3月期より有価証券報告書で記載が義務化された人的資本開示「女性管理職比率」「男性育児休業取得率」「男女間賃金格差」のうち「男性育児休業取得率」に触れましたところ、多くの「スキ」をいただきありがとうございます!

今日は「女性管理職比率」の開示によって企業の組織で起きた(または起きうる)問題について取り上げてみたいと思います。

算出方法は単純で、女性管理職数 ÷ 管理職数 

一般には役員・部長級・課長級の女性割合を示すものであります。

東洋経済社が有力先進企業と区分する1714社数について調査したCSR企業総覧(雇用・人材活用編)よると、2023年時点で

・女性管理職比率の全体平均は9.3%
・同比率が高い業種トップ5は、1位保険業(27.8%)、2位サービス業(19.4%)、3位銀行業(19.2%)、4位その他金融業(18.5%)、5位空運業(15.7%)とのことです。

特にサービス業や教育産業、医療関係などではもともと女性従業員の比率が高い企業も多く、業種平均の数値にどれほど意味があるのかは何とも言えないが、少なくとも同業平均には劣らない水準で開示したいというのが多くの企業の意識としてあると思われます。

ここで目を引くのは1位の保険業はともかく、銀行業や金融業での女性管理職比率が意外にも高いというところではないでしょうか。

私は1996年学部卒ですが、管理職数集計の対象となるであろう40代~50代が就職した頃、銀行業をはじめ多くの大企業では、採用での表向きの男女格差は撤廃されたものの、伝統的に「女性は補助業務に従事し、結婚または出産で退職する」前提であり、さらに「できれば社内結婚をして退職後も男性社員に会社に人生をゆだねてもらえるよう、間接的に貢献してもらえる存在」を期待されていた、とも言われています。

もちろん私もそのような風潮は理解していたし、一般的な女性の就労とはそんなものだと学生時代はとらえていました。

 それが20数年たって、手のひらを返したように「女性活躍」「女性が家庭でも仕事でも輝く社会」とうたわれるようになったところで、その時代に社会に出た女性たちに変身しろ、会社で昇進して輝け、といっても無理なのは明白です。が指標を公表するとなると少しでもよい数字を見せたい、見せようとするというのは企業行動として仕方ないことなのでしょう。

実際大手金融機関に勤める同世代の男性の話では、この数値がうたわれるようになり、会社としてもKPIを掲げて行動せざるを得ず、その結果何が起きたかというと

・もともと一般職で昇進意欲はないが長く就労してきた女性に半強制的に打診して課長職に引き上げ
・当然資質や能力、意欲も足りないため、男性を課長補佐の名称で影の課長として配置

その結果

・意に反して課長になった女性課長はストレスや周囲の妬みに耐えられず離職
・課長代理の男性も理不尽な立場と業務にストレスを感じて離職

というようなケースが多発したのだそうです。

 このほかにも、プライム市場の金融業の社長から、「当社でもともと女性は全員補助的な立場であったにもかかわらず、やはり女性管理職を数人登用しなければというプレッシャーで、数名に課長職を打診したものの、拒否された挙句に最終的には全員退職してしまった」という話を聞き、この数値が企業のサステナビリティや働きやすさを示す指標として扱われることで、現場ではどれだけの企業や社員はたまたその家族が翻弄されているのだろうと懸念してしまいます。

政府や政策だけが悪いというつもりは毛頭ありませんが、多様性を認め男女共同参画社会を推進するという目標に向けての施策としては、残念ながらかなりずれていると感じざるを得ません。女性閣僚への期待が「女性ならではの感性や共感力」という感覚の政府にこのような企業の現場で起きている実態というのは届いているのでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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