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大雪の日の思い出

 とある2月の寒い日。
 朝早くから私は傘をさし、大雪の中を歩いていた。

 

 向かう先は、パソコン教室。

 


 ーー私は、元所属していた部署になじめなかった。
 仕事も追いつけず、ストレスと罪悪感で押しつぶされそうな日々。とうとう耐え切れず、泣きながら会社に異動を申し込んだ。
 その後、ようやく新しい部署に着いた。

 

 その頃の話である。

 


 新部署ではExcelを使ったデータ管理を行う。
 関数を使い、それを上手くセルに組み込んで、データの抽出や計算を行うのだ。

 

 文系出身の私にとって、慣れない作業であった。
 簡単な表一つ作るだけで、数時間もかかってしまった。

 

 けど、もう弱音は吐けない。
 今回は逃げずに、しっかりとこの部署で働いて、活躍していきたい。

 

 そこで思い切って、MOS資格を取ろうと決心したのだ。
 Excelのスペシャリストになろう。
 Excelのエキスパートになろう、と。

 


 ーーやはり朝の空気はとても冷たい。
 風も強く、雪が暴れるように真正面からぶつかってきた。
 もはや傘ではもう防げない。あっという間に服と靴が真っ白になった。

 

 その日は土曜日、休日だった。
 暖かい布団にくるまり、思うままに休み、のんびりとした一日を送れるはずだったのに。

 


 ようやく教室に到着し、今度はお昼抜きで午後まで通しでレッスンを受ける。

 

 寒い。
 眠い。
 疲れた。
 頭がクラクラする。

 

 精神系の薬からくる眠気とも戦いながら、必死にキーボードを叩いた。

 

 まだ病み上がりでもあったのだ。
 本当に苦しかった。

 

 自分で申し込んだのにも関わらず、いつ卒業出来るのだろう、いつになったら、もうこんなところに来なくて良いのだろうなんて考えていた。

 


 そして、あれから5ヶ月。
 天気はすっかり暖かくなり、汗ばむほどの季節になった。

 

 私はもうすっかり教室の雰囲気に慣れ、ちんぷんかんぷんだった関数には親しみでさえ感じれるようになった。
 スペシャリスト試験にはちゃっかり受かり、今度はエキスパートを目指している。

 

 ただゴロゴロしているだけでなく、充実な週末を過ごせるようになった。
 自信もついた。

 

 何よりも、仕事が楽しくなったのだ。
 依頼された案件をパパッとこなせる!なんと爽快だろうか!
 久しぶりに手ごたえのある仕事が出来、達成感も味わっている。
 
 更に今度は、自分で新しい部署を立ち上げようとも考えている。
 上司がこのような機会を作ってくれるそうだ。

 


 そういえば大雪のあの朝、泣きたい気持ちをこらえながら、私は


「いつか、この日の出来事が良い思い出になるはずだ」


と自分を慰めていた。

 

 

 ああ、本当にそうなったんだな。

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