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人類史とデザイン史をまとめてみるよ

サピエンス全史とホモデウスと近代デザイン史を読んだらなんとなく人類の思想の変化とデザインの関わりが見えてきたから、書き留めとく。

人類の思想の劇的な変化・人権という概念

人類は17世紀あたりまでは神を中心に生きてきた。人権という概念はルネサンス期に出てきたしもっと前から存在はしていたけど、異端な考え。人間を尊ぶなんていうのは変人・狂人の類。

それはなぜかというと、「王国」と「教会」が権力者であったから。神の子孫たる王族と神の代弁者たる聖職者が権力を維持するには、「神」を至上としたシステムが効果的だった。

(神に権力が集中する過程の、農耕が発明されて大規模集団生活と戦争が生まれて... という下りも面白いのだけど割愛)

中世以前の価値観

神中心の価値観だと、「古いものほど正統である」となる。

あらゆるものは古代に神が「完全な形で」創造し、無知蒙昧なる人々の中でそれは劣化していった、という価値観が基本となっている。新しい技術や思想が出てきても、それは古代に存在し失われたものの再発見と見なされるか、破棄される。

その価値観の中で、デザインという行為は土地ごとの宗教観に合わせた装飾を施すことであった。

古代をイメージさせる古めかしいもの、天上をイメージさせる煌びやかなもの、古代ギリシャを思わせるフォルム... などなど。

それは権威を可視化する装飾であり、神話(神が与えたもうた叡智)を想起させる機構であった。
長い時間の中で洗練されて、生活に役立つ形態を成している(人の幸福に寄与する)場合もあったが、それも「神の恩恵を人々にもたらす」という仕組みの一端だった。

なんにせよ、その当時のあらゆる技術・思想と同様、デザインは人のためのものでなく、神のためのものであった。

市民革命・産業革命による劇的な価値観の変化

大航海時代を経て、王国や教会とは別個の富が形成され、また、社会制度の進化により教育が普及し出し、神のプレゼンスが薄まってきて、「人は神のためでなく人のために生きた方が幸福なのでは?」という人権思想が一般化する。そして市民革命が起き、多くの人が自らの意志で行動する権利を得た結果、産業革命が起きる。

この変革の中で、「神のために行われていた」デザインはその意義を失う。

ただの装飾となるか、生産効率のみを求めた形態となるか。

そこで出てくるのが近代デザインの発想で、「無意味な装飾、機能に沿わない形態をやめて、人間の幸福のためにモノづくりしようぜ」という思想。

そしてインダストリアルデザインへ

デザインによって、モノの機能性・有用性が増すことが認知されると、いろいろなモノづくりに適用されることになる。ゆりかごから墓場まで。そうしてデザインは産業に取り込まれ、ビジネスや公共インフラ構築のためのツールとなっていく。

いわゆるインダストリアルデザイン(ID)であり、現代の思想の主流である資本主義と相性が良い。このIDが、現代のデザインの主流というか、「ID ≒ デザイン」となっている。

そしてこのIDは、油断してると本来の「人のため」から外れて「利益のため」「組織のため」となりがち。デザインの本筋から外れないよう注意しないといけない。

次は?

デザインは「神のため」のものから「人のためのもの」へと変貌した。「人のため」は「個々人の幸福のため」と言ってもいいかもしれない。

インターネットと人工知能の発展により、今また人類の価値観・思想が劇的に変わりつつある、とか言われている。どこまで真に受けたものかわからないけど、市民革命・産業革命並みに大きなインパクトをもたらすなら、デザインもまた大きく変わるのだと思われる。

次は「社会のため」、それとも「人と機械の融合した何かのため」か。もっと別の何かか。

まだしばらくは「人の幸福のため」にデザインする時代が続くと思ってるけど、これからの劇的な変化に備えて、インダストリアルデザインに没頭しすぎずに少し引いて、俯瞰的にデザインというものを見る癖をつけといた方がいいな、と考えている。

何が言いたいかっていうと

ビジネスとしてのデザイン行為は、「デザインを利用している・活用している」という状態であって、本来デザインはビジネスのためのものでなくて人の幸福のためのものだかんね、ということを言いたくてぼんやり考えてたら壮大な話になってしまった。まあそういうこと。

ところでジャパン

ここまで書いたことは全部欧米の話で、多神教価値観の中にあった日本(というかアジア)に対して同じように考えていいのかはよくわからない。

日本にはデザインが根付かないとか言うけど、日本におけるデザインは欧米のデザインと同一には成り得ないのかもしれない。それは民主主義とか資本主義とかもそうで、欧米の振る舞いを参考にしてそれっぽく真似てるだけで本質は全然違うのかも... ってあああもう話がどこまでも膨らむよ。

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