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FnT図の使い方

先日のDesignshipの最後のセッション、長谷川敦士さんの「デザインコンフィデンス - これからのデザイナーに求められるもの」を拝見しつつ以下のようなツイートをポストしました。

元資料はこちら → https://t.co/ALWLUr3IMR

この図、勝手にFnT図と呼ぶことにしました。For and To図の略です。なんでそう呼ぶことにしたかはこのnoteのカバー画像からお察しください。

(最初は「FnF図(ふんふず)」って呼びたくてFromとForで表していたのですが、ForとToで表した方が元資料の意図に近いように感じて書き直しました。伴ってこのnoteの内容もいくらか書き換わってます。)

モヤが晴れたっていうのがどういうことかと言いますとね、今まで私の脳内にデザインやらアートやらエンジニアリングやらをマッピングした図があったのですが、これがどうも現実の業務とマッチしてなくて、ずっと不便だったんですよね。で、FnT図をイベントでお見かけして、「これ便利!」となった、という訳です。

どう便利なのか、というのを、以下に仮想事例を挙げて述べてみたいと思います。

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仮想事例:カレー屋さんからの依頼

ある時、カレー屋さんから「お店をもっと良くしたいんだ。お客さんいっぱい来て欲しいんだ。手伝ってよ。」という依頼が来たとします。

カレー屋さんを良くする... 一般的に、カレー屋さんが行ってることはなんだろう。良くすべきポイントはどこにあるんだろう。洗い出してみます。

- スパイスの調合
- 調理方法の調査・試行
- 食材の探求
- メニューの検討・レシピの作成
- お客に振る舞う料理を作る
- お店の空間づくり
- お店に人を集める
- 付帯サービス提供
 ...

とりあえずババっと8つ挙げてみましたが、時間割いて洗い出せば30個とか50個とか出てくると思います。100とかいくかな。
さて、自分はデザイナーとして何ができるのか。何について取り組むのが適切なのか。ここでFnT図と照らし合わせて考えてみます。

スパイスの調合/調理方法の調査・試行/食材の探求
料理に使用するか否かはさておき、多くの可能性を用意する。自己探求から始まり、物理的な結果に落とし込まれていくのでscience要素大きめ。
味覚という、人の感性に訴求するものであるのでart要素もあり。
どんなものを作るのかがあらかじめ定まっていて、お客にどんな印象を与えるかのアタリがついているなら、思考は割と外向きなのでtechnology要素も結構大きい。
メニューの検討/レシピの作成
料理人が己の味覚や経験を頼りに突き詰めていく世界なので、art要素が大きい。(内から発し、内側で突き詰める)
いくらかは流行・一般論・他者の意見なども干渉してくるだろうから、designscienceの要素も少なくない。
お客に振る舞う料理を作る
時間・空間といった物理的制約や経済的制限などの外的要因に対処しつつ、他者へと供するべく具現化する。technology要素が大きい。
料理人自身の思い入れや感覚も大きく関わり、人の味覚に訴求するものなので、artdesignの要素も大きい。
お店の空間づくり/お店に人を集める/付帯サービス提供
どのようにしてより快適に感じさせるかという空間設計・音響設計といった演出。これはお客のためでありつつ、料理人の嗜好も入ってくるので、designartが強め。
お店に呼び込むための宣伝や、食後の楽しみの提供(お土産とか?)等の企画は、人の内的な印象・感性へ訴求することが目的なのでdesign要素が大きい。

と、整理していくと、自分がどういう角度から関わるべきか、どういう立ち位置をとるのが好ましいか、というのを見定めやすくなります。
デザイナーとして役に立てそうなのは、お店の空間づくり/お店に人を集める/付帯サービス提供のあたりだな、と。
メニューの検討/レシピの作成 と お客に振る舞う料理を作る は、手伝える余地はありそうだけどあまり効果的ではないかもな、そしてスパイスの調合/調理方法の調査・試行/食材の探求のあたりはできること無さそうだな、と。

こんな風に、自分の望ましい立ち位置が見えてきます。

ここまで読まれた方は、「デザイナーがスパイスの調合に役立たないなんて考えるまでもなくわかるだろ?」とお思いかもしれません。
正直、その通りです。この仮定においては。

共感を得やすくするためにカレー屋を例に挙げてみましたが、実際にデザイナーとして仕事していると「これを行うべきはデザイナー?エンジニア?リサーチャー?アナリスト?」とか「このフェーズで必要なのは別の職種の専門家じゃない?」とかを考えるべきタイミングが結構あります。というか、しょっちゅうあります。

それを恣意的に「一般的には〇〇だよね」とか「今まで✕✕だったから」で済ませず、状況に応じて適切に動くための手がかりとして、FnT図を脳内に即座に描けたらとても便利だ、と思う訳です。

別にとらわれんでも良いですけどね

ではアーティストはお客集めに参加しちゃいけないのか、テクノロジストが料理の味に口出しちゃいかんのか、と言うと、無論そんなことはありません。
踏み込みたいと思うなら、または踏み込むべきだと思うなら、踏み込んで行けば良いと思います。
ただ、「その分野の向上には、自分より適切な人がいるのではないか?」という疑念は脳裏に留めておいてほしいですね。

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と、こんなことをお昼ごはん食べながらダラダラ考えたわけです。
すいません途中一個嘘つきました。「共感を得やすくするためにカレー屋を例に挙げた」とか言いましたが、お昼がインドカレーだったのでこんな感じにまとまっただけのことです。

いやほんと超便利っすよこの図。
図の作成者の意図とどれだけ合ってるかはわかりませんが、ていうか全然的外してそうですが、知れて良かったです。

■(追記)■

カバー画像の図内の、左右矢印のラベルがおかしい気がしてきました。
SocietyはHuman insideの集合体でもあるし、Natureへの干渉はHuman insideに影響する。左右の矢印は、さらに先へつながってるとみなすか...。

なんかややこしくなってしまったのと、元資料の意図から離れてしまった感あるな…。ううむ...。

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